ジ・アプレンティス 2

放送局: NBC

第2シーズン・プレミア放送日: 9/9/2004 (Thu) 20:30-22:00

製作: マーク・バーネット・プロダクションズ、トランプ・プロダクションズ

製作総指揮: マーク・バーネット、ドナルド・トランプ、ジェイ・ビーンストック

共同製作総指揮: コンラッド・リグス、ケヴィン・ハリス

出演: ドナルド・トランプ、ジョージ・ロス、キャロリン・ケプチャー


ザ・ベネファクター

放送局: ABC

プレミア放送日: 9/13/2004 (Thu) 20:00-21:00

製作: 12ヤード・プロダクションズ

製作総指揮: デイヴィッド・ヤング、クレイ・ニュービル、トッド・ワグナー

出演: マーク・キューバン


マイ・ビッグ・ファット・オブノクシャス・ボス

放送局: FOX

プレミア放送日: 11/7/2004 (Sun) 21:00-22:00

製作: ロケット・サイエンス・ラボラトリーズ

製作総指揮: ジャン-ミシェル・ミシュノー、クリス・コーワン

出演: ウィリアム・オーガスト (N. ポール・トッド)


ザ・レベル・ビリオネア: ブランソンズ・クエスト・フォー・ザ・ベスト

放送局: FOX

プレミア放送日: 11/9/2004 (Tue) 20:00-22:00

製作: ブニム-マーレイ・プロダクションズ

製作総指揮: ロリ・レヴィン-ハイアムズ、ローラ・フエスト、トッド・ダーキ

出演: サー・リチャード・ブランソン


内容: ボスが仕事を任せることのできる人材を発掘するという内容の勝ち抜きリアリティ・ショウ4種。


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NBCの「ジ・アプレンティス」は、昨シーズン、最も成功したリアリティ・ショウである。不動産王ドナルド・トランプを番組ホストとして据え、勝ち抜き形式で彼の元で働く人材を選ぶという「アプレンティス」は、トランプが、毎回追放される人間に向けて放つ「ユー・アー・ファイアード (You're fired: おまえはクビだ)」という決めゼリフと共に、瞬く間に視聴者に浸透した。


この番組がこれほど成功した理由というのはいくつか考えられる。まず、トランプというアメリカの立志伝中の人物の存在がある。ありとあらゆるところで、かつらか、そうでないかと噂され、見かけの上では嘲笑の対象でしかない人物ではあるが、アントレプレニュール、いわゆる起業家という存在を尊敬する土壌の強いアメリカにおいては、成功した企業人は、それだけで充分羨望と尊敬の対象となる。そういうアントレプレニュールの筆頭と目されるトランプの元で働いてみたいと考える者は、それこそ掃いて捨てるほどいる。


次がその舞台となるニューヨークである。番組の中心となるトランプ・タワーは、5番街の55丁目という、それこそ世界の中心地のような場所に建っている。トランプ・タワー上階のVIPルームからはセントラル・パークやニューヨークの街並みが一望でき、そこで働くことは、充分自分が大物になったと錯覚させ、酔わせてくれるだろう。視聴者は、自分が肩入れする番組参加者を選び、同化することで、自分もトランプと同列のビジネスマンになったような気分を味わうことができる。


そして番組参加者がいる。リアリティ・ショウ、特に勝ち抜き形式のリアリティ・ショウは、畢竟その最終的な面白さは参加者のキャラクター次第というのが私の意見だが、「アプレンティス」の場合、結構マジで自分のキャリアを考えている者ばかりが参加している。つまり、全員、かなり頭も切れれば見場もいい。全員スーツ姿が様になる、美男美女揃いの俳優と見間違いそうな参加者が、知恵を絞って様々な企業アイディアをひねり出し、その合間でライヴァルの出方を窺い、隙あらば蹴落とそうと虎視眈々とチャンスを窺い、お互いに欠点をあげつらい、罵りあい、それでもダメで、トランプからおまえは無能だと烙印を捺され、追放される運命にある。結局、そういう美男美女が虐げられるのを見る嗜虐的な快感こそが、この番組の最大の見所なのだ。


とはいえ、実は私は、最近、この種の勝ち抜きリアリティ・ショウも、もういい加減充分かなと思い始めている。「サバイバー」以降、勝ち抜きリアリティはいかにライヴァルの裏をかき、自分が生き残るかが最大の命題だった。そのためには多少の汚いことは皆平気でするし、視聴者もそれを擁護することでますますこの手の行為を増長させた。その結果、最近のこの種の番組では裏をかくどころか、平然と相手に面と向かって罵倒したり、欠点をあげつらったりするなど、品性の卑しい行為を目にする機会が増えた。


別にゲームとして相手の裏をかくくらいで済んでいるうちはよかったが、自分が生き残るために、本人を目の前にして短所や欠点をあげつらい、そいつよりは自分の方がどれだけ優れているかを口角泡を飛ばしながらアピールするのを見るのは、はっきり言って不愉快である。ジョークとしてではなく、本気でやるのだ。なぜそこまで自分のことを棚に上げて相手を悪し様に罵ることができる。そういう人間に限って大したことがないのは、既にそれまでの展開を見ている我々視聴者には一目瞭然なのに。こういう番組を毎回見ていたら、自分まで卑しい人間になってしまいそうだ。


そして、そういうシーンが最も頻繁に出てくるのが、何を隠そう「アプレンティス」なのだ。つまり参加者は、トランプ一人の考えを翻すことができるのなら、たとえ自分のミスで自チームが負けたとしてもまだ首の皮一枚残して生き長らえることのできる可能性があるため、口八丁手八丁でチームが負けたのは自分のせいじゃないんだと力説してトランプを説得しようとする。そこで上に述べたように、同列に座っている同じチーム内の追放者候補同士がお互いに揚げ足どりに走るという展開になるわけだ。


要するに、この番組が人気があるということは、ひとえに、窮地に陥ったり、周りの人間から否定されてぼろぼろになったりする参加者を見ることを快感と感じる視聴者がどれだけ多いかをつぶさに物語っている。一方で、最初からエンタテインメント、冗談として見ている視聴者もかなりいるようだから、そういうふうに余裕を持って見ればいいのかもしれないが、私は、見ていてあんまりいい気持ちはしない。というわけで、私は「アプレンティス」は毎回見ていたわけではなかった。


とはいえ、そういった気になる部分を除けば、番組がかなりよくできているのも確かだ。製作総指揮は誰あろう「サバイバー」のマーク・バーネットであり、こういう勝ち抜き形式のリアリティ・ショウを作らせると、さすがにツボを押さえてくる。「アプレンティス」では、参加者を「サバイバー」同様まず二組に分け、レモネード売りやアイス・クリーム販売等の、最も初歩的な街頭販売での売上げを競わせ、負けた組から一人ずつ追放者を決めていく。その決定は「サバイバー」での参加者の投票と異なり、「アプレンティス」ではホストのトランプの独断 (一応アシスタントの意見も聞くが) で決まるところが、両番組で最も異なっているポイントだ。両チームが競う内容ももちろん段々高度になっていき、最後の方は、参加者はほとんど本物のビジネスを胃が痛い思いをしながらやりくりさせられる。


番組は毎回、トランプが追放者を決め、「ユー・アー・ファイアード」と指を突きつけて宣言して終わる。因みに第1シーズンの最終回では、トランプが最後に二人残ったうちの一人に対して、これまでの「ユー・アー・ファイアード」ではなく、勝った方に向かって「ユー・アー・ハイヤード (You're hired: おまえを採用する)」と高らかに宣言する。すると、それまでは毎回トランプ・タワー上階のボード・ルームで行われていた最後のこの決定のシーンが、実はロックフェラー・センターのNBCのスタジオ内のセットになっていて、採用者が決まった途端、セットの壁が崩れ落ち、実はセットのそばで固唾を飲んで状況を見守っていた観客や参加者の身内が優勝者を祝福するという演出になっていた。私はてっきりいつも通りのボード・ルームだとばかり思っていたから、いきなり壁が取り払われて後ろで観客が拍手して優勝者を称えるこの演出にはうまく騙された。バーネットって、やっぱり見せ方を心得ている。


そして優勝したビルがそのままスタジオから外に出されると、そこには自家用車が彼を待っており、ビルはそれを運転して、そのまま次のトランプの本当の仕事場に直行させられるのであった。優勝者も楽じゃない。他にも第1シーズンの「アプレンティス」には、エイミィやカトリーナ、エリカ等のモデル級の顔とスタイルを持った女性参加者や、これまでのアメリカのリアリティ・ショウでも最大級の悪役のオマロサ等がおり (男は既に忘れた)、そういう面々を見るだけでも楽しませてくれた。因みに、性格の点では最もよさそうに見えたエリカは、今ではシンジケーションのトーク・ショウ、「トニー・ダンザ・ショウ」のアナウンサーとして職を得ている。


それらに較べて第2シーズンの「アプレンティス」は、メンツの見場という点では第1シーズンに一歩譲るかもしれない。私が男性だから、どちらかと言うと女性の方にばかり目が向いているということもあるが、しかしそれでも特に女性陣は、モデル級の参加者が揃った第1シーズンに較べ、第2シーズンは多少レヴェルが落ちたという印象は否めない。最初に粒揃いの参加者を揃えすぎたという気がどうしてもする。


その中ではアジア系のイヴァーナが、顔はともかく、最も番組を盛り上げてくれた功労者と言えるかもしれない。これまで、こういう勝ち抜き型リアリティ・ショウでアジア系が活躍する姿を見ることはほとんどなかったが、イヴァーナ (トランプの前妻と同じ名前であるというところもよかった) は、チョコレートを売るために街角でストリップまでしてみせたりして番組を盛り上げた。アジア系もこの手の番組で単なる刺身のツマではなくなってきたなとという感じがした。もうちょっと可愛ければ断然応援したんだが。いずれにしても番組第2シーズンの視聴率が第1シーズンほどではなかったのは、端的に視聴者が見たいと思う参加者があまりいなかったことが最大の要因だと思う。


一方、「アプレンティス」の第1シーズンの大成功は、当然のことだが、新たな同種の番組の出現を予感させた。それがABCの「ザ・ベネファクター」、およびFOXの「マイ・ビッグ・ファット・オブノクシャス・ボス」と、「ザ・レベル・ビリオネア: ブランソンズ・クエスト・フォー・ザ・ベスト」である。特にやっぱりこういうのって、すぐ真似するのってFOXなんだよねえ。


「ベネファクター」は、不動産王トランプに対し、こちらはIT系で一夜にして億万長者になったマーク・キューバンをホストに起用している。キューバンはビジネスマンとしてよりも、現在ではNBAのダラス・マヴェリックスのオーナーとして知っている者の方が多いだろう。番組の方は「アプレンティス」と異なり、キューバンの下で働く人間を決めるというのではなく、勝ち抜きで最後まで残った優勝者は100万ドルという「サバイバー」スタイルで、その勝ち残りを決めるのがビジネス的実践によるというところがミソだ。


とはいえ結局、番組進行自体はどうしても「アプレンティス」と似たようなものにならざるを得ず、ほとんどこれというような新機軸がない。参加者にやらせることが、例えば罰ゲームの積み木崩しで追放者を決めるというような、あまりに小賢しいものばかりだ (実はそれはそれで見ていて緊張しないわけでもなかったのだが。) プレミア・エピソードを見ただけで、こりゃこの番組に将来はないなと思っていたら、本当に数回放送しただけで視聴率低迷のため、未放送の何回分かを一つのエピソードに短縮して詰め込んでいきなり最終回になってしまった。まあ誰も見ていなかったようだからしょうがあるまい。


FOXの「オブノクシャス・ボス」は、昨シーズン放送してそれなりの成績を収めた「マイ・ビッグ・ファット・オブノクシャス・フィアンセ」に、「アプレンティス」的な味付けを施したものだ。「オブノクシャス・フィアンセ」は、最初からできレースの急遽捏造カップルが、女性側の親を騙して二人が結婚することを承諾させるという内容のリアリティ・ショウで、カップルの女性の方は一般参加者なのだが、男性の方は役者で、デブでだらしないだけでなく、人前で平気でげっぷやおならをしたりするなど、あの手この手を使って反感を買ってこの結婚を破綻させようとする。それにも負けずに女性の方が両親に二人の結婚を認めさせることができたら賞金を獲得するというものだった。その就職版とも言える「オブノクシャス・ボス」は、今度はそのボスを役者が演じ、「アプレンティス」同様のリアリティ・ショウに参加して就職先を争っていると考えている参加者を、あの手この手を使っていじめてやろうとする。


「フィアンセ」はかなりよい成績を上げたから、そのフォーマットに「アプレンティス」をプラスした「ボス」は、たぶんFOXからはかなり期待されていたと思われる。しかしこの番組は、ほとんど視聴者から無視された。なぜか。簡単だ。元々FOXが製作するこの手の視聴者/参加者引っかけ型のリアリティ・ショウは、一発勝負だから面白いのであって、視聴者は、最初楽しんだからといって、別に同じ番組のパート2なぞ求めていない。このことはFOXは「ネクスト・ジョー・ミリオネア」で痛いくらいわからされたはずだ。それなのに、また同じ轍を踏んで失敗してしまう。これじゃあ学習能力がないと言われてもしょうがない。


一方、ほぼ同時期に放送の始まった「レベル・ビリオネア」の方は、こちらは番組進行は「アプレンティス」とほぼ同じだが、異なるのは、参加者を出題された様々なビジネスの成否で足切りするのではなく、世界中を回りながら様々な冒険やスリル/アドヴェンチャー体験をさせ、その成績如何によって足切りをするという番組進行にある。ヴァージンの社長であり、若くして巨万の富を築き上げた、やはりこちらも立志伝中の人物、リチャード・ブランソンがホストであり、冒険家としても名高いブランソンらしい番組となっている。要するに、ビジネスは冒険であり、いざという時の判断力を見極めるにはこの種の実技が最も適しているというわけだ。


実際、世界中をヴァージンの小型ジェットで旅しながら様々な体力ゲームを競うのだが、中にはかなり面白いものもあったりする。谷の上に人を一人吊り下げ、彼/彼女に向かってジャンプ、うまくキャッチできたらOK、失敗したら谷底にバンジー・ジャンプよろしく落ちていくという荒業なんかは、結構見てて手に汗握った。いくら命綱付きだとはいえ、失敗すると、50mくらいありそうな高さを落ちていくのだ。本人がバンジー・ジャンプをする気なんかまるでないのに、結果としてバンジー・ジャンプになるのは怖いに違いない。しかも普通のバンジー・ジャンプなら、ただ真下に落ちていくだけだが、ここでは助走つきで横に飛んで、失敗したら落ちていくという具合になるので、放物線をかいて落ちていく。とても怖そうだ。


他にも、空に浮かんだ気球間を綱渡りで渡っていくとか、曲芸飛行をするプロペラ機の上に立ってバトン・タッチをするとか、カプセルに乗って滝下りをするなんてのもあった。実は滝下りでは、どう考えてもこいつはかなり危険で、安全策の施しようがない。その中に、罰ゲームでこの荒業に挑戦しないといけない参加者とブランソンが乗り込んで、いざカプセルが川に放たれようとする寸前に、ブランソンが、これはいくらなんでも危険すぎて、二人共まず生き残れる見込みはないと本音を漏らす。つまりこの挑戦は、危険度を見極め、それがどう見ても命にかかわるような危ないものであれば、そこで諦めて撤退する潔さや判断力を持っているかどうかを試すものだったのだ。とはいえ、参加者は一応、そういうセイフティについては番組製作者側が事前に吟味しているだろうと思い込んでいるから、これははっきり言って性質の悪い引っかけで、試された参加者の方が可哀想だ。


こういう面白い挑戦もあったりしたが、しかし、この番組も大していい成績を収めているわけではない。その最大の理由は、私は、結局、世界中を駆け回って体力勝負によって参加者を振り落としていくという番組の進行が、基本的にCBSの「ジ・アメイジング・レース」に酷似しているせいじゃないかと思っている。特に番組の回が進み、参加者が挑む体力勝負にオリジナリティが見えなくなってきつつあると、そう感じるようになった。でも、だったら、ペアで様々な難関に取り組む「アメイジング・レース」の方が、やっぱり面白い。


実は、「レベル・ビリオネア」で私が最も感心したのは、命がけの荒行に挑む参加者やブランソンよりも、その所業をカメラにとらえるカメラマンの方である。例えば気球間の綱渡りのエピソードでは、ビリになった参加者が罰ゲームとして、その気球の上にはしごで上っていかなければならない。高度何百mの空の上でそれをやるのだ。その上でアリスのお茶会という風流な趣向があるのだが、いくら命綱があっても、高所恐怖症には耐えられまい。実際参加者の血の気は引いている。という命がけのゲームで参加者が息も絶え絶えに気球の上まで這うように上っていく様をカメラはとらえるのだが、要するに、その参加者と同様のことを、カメラマンはカメラを担いだままやっているのだ。それだけじゃなく、常にカメラを持って参加者の先に行っていなければならない。罰ゲームをやっている参加者以上のことを率先してこなしておかないと仕事にならないわけで、それをやったからといって、参加者のように褒美がもらえたりするわけでもなく、裏方に徹しなければならない。この番組のカメラマンは偉い。


結局、「ベネファクター」は数回放送されただけで駆け足で番組は終了し、「オブノクシャス・ボス」も「レベル・ビリオネア」も、「アプレンティス」ほどの話題を提供することなく、番組は終わりそうな雲行きである。それもしょうがないというのが正直な感想だ。だって、どれも「アプレンティス」ほどの面白さに達していないのは自明だろう。その「アプレンティス」ですら、第2シーズンよりは第1シーズンの方が面白かった。「アプレンティス」は、それでもまだ人気があるから次のシーズンも製作されるだろうが、人気の減少傾向に歯止めをかけるのは無理だろう。息の長い勝ち抜き型のリアリティ・ショウを製作するのは、本当に難しい。というわけで、私の興味は年明けから放送開始の、FOXの「アメリカン・アイドル」の第4シーズンに向いているのであった。さて、今度はどんなドラマを提供してくれるかな。





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Unfabulous

アンファビュラス   ★★1/2

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The Benefactor  ザ・ベネファクター   ★★ 

My Big Fat Obnoxious Boss  マイ・ビッグ・ファット・オブノクシャス・ボス   ★★ 

The Rebel Billionaire: Branson's Quest for the Best  

ザ・レベル・ビリオネア: ブランソンズ・クエスト・フォー・ザ・ベスト   ★★1/2 

 
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