The Accountant


ザ・コンサルタント  (2016年10月)

原題「ジ・アカウンタント (The Accountant)」、邦題「ザ・コンサルタント」だ。実際、主人公のクリスの職業は、コンサル的な働きをする会計士だから邦題が間違っているとは言わないが、しかし「アカウンタント」だとそうでもないが、「コンサルタント」と聞くと、思わず連想するのは、リドリー・スコットの「悪の法則 (The Counselor)」の原題の「ザ・カウンセラー」の方だ。「アカウンタント」から「カウンセラー」は連想しないが、「コンサルタント」だとなんだか「カウンセラー」に近い印象を持ってしまう。


さて「コンサルタント」は、ベン・アフレックが生身のヒーローに扮するアクション・ドラマだ。現在バットマンとしてDCコミックスの映像化でスーパーヒーローに扮しているアフレックだが、生身の人間に戻ると、「ゴーン・ガール (Gone Girl)」みたいに、今度は結構意気地のない身体がでかいだけの男、みたいな役も結構はまる。


今回は生身で自閉症で人付き合いは苦手だが、数字に関しては天才的で、元軍人の父に幼い頃から武術を叩き込まれて育つという、やはり人としては弱い部分もあるが、スーパーヒーロー的な要素も持っている。考えたらバットマンってスーパーヒーローの中では最も負の要素が高い孤高のヒーローだし、アフレックがこれまで演じたことのあるデアデビルは目が見えないわけだし、なかなか真っ当なスーパーヒーローを演じる機会は少ない。「ハリウッドランド (Hollywoodland)」ではスーパーヒーローの中のスーパーヒーローであるスーパーマン、を演じたジョージ・リーヴスを演じているわけだが、あれはむしろ印象はアンチヒーローだった。


唯一、最もヒーローらしいヒーローといえば、ジャック・ライアンを演じた「トータル・フィアーズ (The Sum of All Fears)」という気がするが、あれだって世界が核で滅亡する、みたいな印象だった。同じ人物をハリソン・フォードが演じると最後は大団円で収まるのに、アフレックが演じると死屍累々だ。やっぱなんか、アフレックの演じるヒーローって、針が負の方に振れる。


そういう印象があるため、実は今回の自閉のアカウンタントというアンチヒーローというかヒーローらしくないヒーローは、わりとアフレックに合っているという印象を受ける。元々ガタイはいいからアクション・シーンは映えるし無理がない。実際に自閉症の知り合いがいるわけではないので断言はできないが、自閉症という感じもそこそこ出している気がする。


脇を固める面々も、皆でしゃばらず自分のパートをそつなくこなしている。個人的には、暗殺者を演じるジョン・バーンソルが特にいいと思った。さらに、キングがクリスを追うようになった経緯や忘れられて終わりかと思った兄のブラクストン、謎のまま終わるかに見えた指令してくるヴォイスの素性など、実はちゃんと伏線を出しており、最後にしっかり回収する。なんか、ポール・ハギスが書いた脚本みたいで、細部まで意匠を凝らし、本格ミステリみたいに謎解きをする。カンのいい者なら途中で気づくだろうくらいの謎ではあるが、しかしそのままほったらかしにしない。要するにこの映画、結構私好みなのだった。


演出は「プライド&グローリー (Pride & Glory)」のギャビン・オコーナー。この邦題を確かめようとしたら、「プライド&グローリー」は日本劇場未公開になっていた。これが日本未公開なわけ? 劇場で見られた私は非常にラッキーだったと、胸を撫でおろす。いずれにしても、アフレックが持つ弱そうな部分、負の印象の部分がなかなかよくマッチした「コンサルタント」、シリーズ化できる可能性は高いと思うが、どうだろうか。










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自閉症として生まれたクリスチャン・ウォルフは、一方で数字に関しては天才だった。軍人の父はそんなクリスと兄のブラクストンを施設に入れることなく、最終的には自分を守るのは自分だけだと、徹底的に武術を教え込む。長じたクリス (ベン・アフレック) は、世界中の後ろ暗い組織の帳簿を操作する会計士になっていた。脱税の疑いの濃い場所に高い頻度で顔を出すクリスに、税務局のレイモンド・キング (J. K. シモンズ) が気づき、メアリベス・メディナ (シンシア・アダイ-ロビンソン) をリクルートして追跡に当たらせる。一方クリスは、帳簿に不正の疑いがあるとして、ロボット工学の大手リヴィング・ロボティクスの社長ラマー・ブラックバーン (ジョン・リスゴー) に雇われる。ロボティクス社の経理を担当しているデイナ・カミングス (アナ・ケンドリクス) は、一晩で不正を喝破したクリスに驚嘆する。しかしその不正を操作した重役のエド・チルトンは、ギャングから脅迫されていた‥‥


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