Testees/テスティーズ

放送局: FX

プレミア放送日: 10/9/2008 (Thu) 22:30-23:00

製作: ブループリント・エンタテインメント、FXプロダクションズ

クリエイター・製作総指揮: ケニー・ホッツ

出演: ジェフ・カッセル (ロン)、スティーヴ・マークル (ピーター)、ジョー・ピング (ナゲット)、キム・シュラナー (ケイト)、ケニー・ホッツ (ラリー)


物語: ロンとピーターの2人はいい歳して定職にも就かず日々を暮らしている。そんな彼らの唯一の収入の道は、新薬研究の人体実験台になることだった。今日も研究所からは新しい薬の実験台のオファーが届き、そして2人はいそいそとまた出かけては思いもよらぬ副作用に苦しめられるのだった‥‥


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昨年、コメディ・セントラルが放送を始めたリアリティ・コメディ・ショウの「ケニー vsスペニー (Kenny vs Spenny)」は、その下品さ加減でかなり視聴者に印象を残した。元々は2003年からカナダで始まっている番組なのだが、あまりものくだらなさや下品さのためにカルト的人気となったようで、アメリカでも放送が始まったものだ。


私はカナダ産番組ということで特にチェックを入れていたわけではなく数回見ただけなのだが、確かに下らないっちゃあ下らないが、そのために逆に目を離せないという類いの番組だ。だいたい番組のフォーマットは、冒頭でケニーとスペニーが今回のお題を述べる。つまり、2人でどうでもいいことで勝負をつけるのだが、そのテーマを決める。通常はどちらかが何かをどれだけ長い間していられるかというので勝ち負けをつけるのが多いようだ。勝った方は負けた方に対して、なんらかのバツ・ゲームを強制させる。


なんちゅーか、チャレンジとバツ・ゲームという要素だけを見ると、今G4が放送している「スーパー・ビッグ・プロダクト・ファン・ショウ」の中の「よしもとサンサンTV」に近いかなと思わないこともないが、構造は似ていても受ける印象はだいぶ違う。個人主義の欧米産の「ケニー vsスペニー」では、だいたい登場人物はいつもケニーとスペニーだけで、2人で何かを争うが、「サンサンTV」では大挙して周りの人間が囃し立てるというのが大きく違う。


さらに、「サンサンTV」だとお題よりバツ・ゲームの方が面白いという印象があるが、「ケニー vsスペニー」は、その時のテーマの方が面白い。たとえば、でかくくさいおならをした方が勝ちという回では、必死になって色んなものを食って特大のおならをしようとする。それを温度センサーつきのカメラで撮って、おならがどのように拡散していくかを見てみようとする。やはり肉食民族的なこれでもか的なしつこいところがあるのだ。だからこそカルトになったのだろう。


「ケニー vsスペニー」はアメリカでもそれなりに評判になり、番組クリエイター兼出演者のケニー・ホッツはハリウッドで「サウス・パーク」製作の手伝いもするようになった。そのホッツが、今度はカナダだけでなくアメリカでも同時放送するコメディを作った。それが「テスティーズ」だ。


しかしこの「テスティーズ」、さすが「ケニー vsスペニー」を作った者が製作しているよなと思わせるほど際どい内容になっている。番組の舞台設定から揮っており、主人公の今時風の特に何かをやるでもなくその日暮らしをしている2人の若者ロンとピーターがいつもてっとり早く金を得るために専門にしている仕事 – それを仕事と呼べるならだが – は、よりにもよって新薬開発の人体実験台だ。もちろんどういう副作用が起こるかなんかまるでわからない。時によっては命にかかわることもあるだろう。だからこそ支払いもいい。そのためにロンとピーターは、こんな仕事、もう辞めてやると思いつつもまた、新しい薬の実験台になるために新薬研究所テスティコに舞い戻ってくるのだった。


この設定だけを聞くと、連想するのは、かつて弱小ネットワークのWBがフリークスの家族を主人公として作った「ジ・オブロングス (The Oblongs)」だ。そのため、なんか、「テスティーズ」もきっと、薬の副作用によって片眼がつぶれたり手足がもげたり髪が抜け落ちたりした人間を主人公とする、危ない系の番組に違いないと私は思い込んでいた。


この予想は、ある意味当たりであり、ある意味で外れでもある。当たりというのは、登場人物が実際に薬の副作用によって身体の一部に変化が起こって尋常ではなくなり、フリークスのようになる場合も往々にしてあるためだ。外れというのは、番組はそういうオフ・ビート・フリークス・ギャグを目指しているのではなくて、むしろどちらかというと番組のノリは、最近流行りの下ネタ下品系のギャグになっているという点にある。考えたら「ケニー vsスペニー」が既にそれであったからして、これは予想できることではあった。


番組第1回では、ケツから新薬を注入されたピーターのお腹が膨れてくる。ロンにコーヒー・カップを持ってこさせると、ピーターはカップを自分の乳首に当てる。そうするとなんとピーターの乳首から母乳が出て、それがコーヒーのミルク代わりになるのだった。しかし、思わず笑ってしまったが、結構気持ち悪い。バス・ルームで簡易妊娠判定剤でチェックすると、陽性。よりにもよって彼のお腹の中で赤ちゃんが育っているらしい。


ピーターの腹は日増しに膨れて、ついにすわ出産かというシーンを迎える。いったいどこから赤ん坊が出てくるんだという疑問に、ケツに薬を注入されたからケツから出てくるんじゃないかと適当に返すピーター。これで本当に赤ん坊が生まれてくるのか。陣痛が始まり、うめくピーター。と、股の間に顔を突っ込んで手助けをしようというロンの前に、ケツの穴から超特大暴風ガスが! 要するにガスが腹の中に溜まりまくっていただけなのであった。しかしそんなんで乳首からミルクが出るか! 妊娠判定で陽性と出るか! このおならギャグは上述した「ケニー vs スペニー」でも扱われていた。要するに、やはり下ネタ系ギャグが好きなのだ。


おまけにピーターの暴風おならは海を超え、遠く太平洋を隔てた日本の大阪まで届く。Osaka, Japan, 5,412 miles away と表示された画面では、遠く離れたところから届いたピーターのおならの風によって、たんぽぽの綿毛が飛ばされるのだった。なんか、TokyoじゃなくてOsakaというところに番組のオフ・ビート的というか、吉本的なものを感じる。実際、こいつら関西人と相性よさそうだ。


第1回にはサイド・ストーリーがあって、それはロンとピーター同様、人間実験台仲間のラリーが、こちらはペニス増大スプレーの実験台になる。自分のイチモツにやたらと自信が出たラリーは、テスティコの受付嬢を誘い、その大きさにくらっと来た彼女は、ラリーとベッドを共にする。と、興奮してそのでかいイチモツに血が集中したラリーは、ことに及ぶ寸前に頭から血が逆流して貧血を起こして気絶してしまう。その後、では輸血 (点滴か?) しながらだと平気に違いないというロンのアドヴァイスを受けたラリーは、それを実行に移す。今度は無事合体できたまではいいが、ラリーは6秒で果ててしまい、結局彼女はその効能をあまねく享受することはできなかったというオチになっていた。どうでもいいがやっぱり下ネタだ。ついでに言うと、このラリーを演じている役者こそが誰あろうケニー・ホッツである。


番組のその後のエピソードは、副作用でイチモツが消えて女性になるしかなくなるとか、ブレインウォッシュ – つまり洗脳されてみるとか、新型フェロモンによって女性に目がなくなるとかいう、やはり下ネタがかる話が多い。とはいえ番組は、毎回ロンとピーターが身体を張って何がしかの新薬実験台になる様を描くだけではない。例えば最新型掃除機の使用具合をテストしたり最新強力接着剤を試したり、はたまた貞操帯を着用してみたりという、そういう意味のテスターとなることもある。根本的に、てっとり早く金になることならなんでもいいという発想があるのだろう。番組が今後「ケニー vs スペニー」のようにカルト的人気を獲得して続いていけるかは現時点ではなんとも言えないが、こいつを好きなアメリカ人は結構多いだろうなと思う。







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テスティーズ   ★★1/2

 
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