Terminator Genisys


ターミネーター: 新起動/ジェニシス  (2015年7月)

手を替え品を替え新しい展開で我々を楽しませる、というか悩ませる「ターミネーター」シリーズの第5弾、ただでさえ消化不良になりやすいタイム・トラヴェルものの上、新作毎に観客をあっと言わせるような新機軸を盛り込もうと製作者も色々考えるため、実はもうストーリー展開がどうなっているのか、あまり理解が追いついてなかったりする。


観客の理解という上でもう一つネック、というか少なくとも理解を助ける役には立ってないのが、ほぼ毎回ころころと替わる主要キャラクターのキャスティングだ。特に今回は、これまでエドワード・ファーロン(「2」)、ニック・スタール (「3」)、クリスチャン・ベイル (「4」)、トマス・デッカー (FOXの「ザ・サラ・コナー・クロニクルズ (The Sarah Connor Chronicles)」) 等、どちらかというと線が細い印象のある役者が演じることの多かったコナーを、やや無骨な印象のあるジェイソン・クラークが演じている。そのため一瞬、彼がジョン・コナーと納得しかねる。


コナーだけでなく、これは特に前回、アントン・イェルチンが扮して細いだけでなく臆病という印象すらあったカイル・リースを、今回は「ダイ・ハード/ラスト・デイ (A Good Day to Die Hard)」の肉体派のジェイ・コートニーが演じているため、これまたほとんど180度印象が変わってしまった。これじゃ「ターミネーター・ダイ・ハード」だ。父がジョン・マクレーン、息子がジョン・コナーか。怖ろしい人生だな。それとも退屈しなくていいか。


さらにリンダ・ハミルトン、レナ・ヘディと、少なくとも体育会系の乗りを持っていたサラ・コナーを、今回エミリア・クラークが演じている。クラークはアメリカではもうともかくHBOの「ゲーム・オブ・スローンズ (Game of Thrones)」で知られており、内に秘めたものを持っていようともお姫様という印象は強く、最初はこれもやはりちと違和感あった。因みにヘディも、クラークとはほぼ敵対する役で「ゲーム・オブ・スローンズ」のレギュラーだ。


そういう微妙なキャスティングの中にいて、ただ一人シリーズの最初から最後まで登場する、しかも歳とるはずのないロボットなのに顔にしわが刻まれていくという、これまた人知を超越したタイトル・キャラクターのターミネーター、アーノルド・シュワルツェネッガーがいる。


そして、これだけ大山鳴動して、むやみにパラレル・ワールドが増えただけで、やはりたぶん、大勢では何も変わらないのだ。時が来ればスカイネットは人類に反逆し、ジョン・コナーに挽回され、劣勢を立て直すためにターミネーターを1984年のLAに送るという本筋は、結局今回もまた踏襲される。その途中で細かな出来事のリライトは行われるかもしれないが、結局、起こることは起こる。


ところで、近年のSF映画の舞台は、手垢のついたLAやNY、DCを避け、目新しくしようという理由からだろう、サンフランシスコになる場合が多い。こないだも「カリフォルニア・ダウン (San Andreas)」でゴールデン・ゲイト・ブリッジが出てきたと思ったら、さすがにこれでは出ないだろうと思った「ターミネーター」までサンフランシスコだ。どうやら私が思っていた以上のブームらしい。


さらに「猿の惑星: 新世紀 (ライジング) (Dawn of the Planet of the Apes)」では、ジェイソン・クラークがサンフランシスコで人類のために尽力していた。そのクラークが「ターミネーター」では、果たして人類を救おうとしているのかそうでないのか。いずれにしてもサンフランシスコを救えるかどうかは、かなりの確率で人類の将来も救えるかに関係している。


さて、今回のラストが新しい未来を示唆して終わったのか、実はよくわからない。人間はスカイネットに勝利したのか。あるいは連綿とエンドレスに続くループの戦いの中で、人間とスカイネット、人とモノの境界がどんどん曖昧になってきた気配がある。これ以上行くと過去と現在、未来という時間の概念まで融合していく可能性すらある。その時「ターミネーター」は、世界はどうなるのか。


既に「4」で「ターミネーター」こそ最もペシミスティックなSFという印象を受けたのだが、出口のないシリーズという印象が強まった今回は、さらにその印象が強まった。話としてはまだまだ人類が続いていけそうな可能性を残しながら、全体の印象としては逃れられないどツボにはまりまくってしまったような気がする。果たして「ターミネーター」にこの先はあるのか。









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2029年、ジョン・コナー (ジェイソン・クラーク) の抵抗に手を焼いたスカイネットは、1984年のLAにターミネーターを送り込んでコナーの母サラ (エミリア・クラーク) を抹殺し、コナーの存在そのものをなかったものにしようとする。かつてその場にいたコナーはカイル・リース (ジェイ・コートニー) を1984年に送り込み、なんとしても母を助ける算段を立てる。カイルはかつて命を助けられ、尊敬するジョンの父親が自分だということを知らないまま、過去に飛ばされる。しかし1984年に現れたカイルは、そこでサラが既に自分のことを知っており、しかも敵方兵器であるはずのターミネーター (アーノルド・シュワルツェネッガー) が、サラを助けているのを見て愕然とする。明らかにカイルが知っているのとは違う過去がそこでは展開していた。それでも型の違う新型のターミネーターがやはりサラを執拗に付け狙っており、危険であることには変わりなかった。果たして未来の人間が知らない何が過去に起こっていたというのか。未来は変わるのか、変わらないのか、結局ジェニシスはまた発動してしまうのか‥‥


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