基本的にアメリカのTVにおけるスーパーヒーローものは、DCコミックスの「ザ・フラッシュ (The Flash)」、「アロウ (Arrow)」を擁し、さらに「レジェンズ・オブ・トゥモロウ (Legends of Tomorrow)」放送が控えているCWがこれまで一手に引き受けていたという感があった。しかし近年、ABCがマーヴェル・コミックスの「アベンジャー (Avenger)」系列の「エージェンツ・オブ・シールド (Marvel's Agents of SHIELD)」および「エージェント・カーター (Agent Carter)」の放送を始め、近年めきめきと頭角を現してきたストリーミング・サーヴィスのネットフリックスが、これまたマーヴェル系の「デアデヴィル (Daredevil)」や「ジェシカ・ジョーンズ (Jessica Jones)」の提供を始めるなど、スーパーヒーローもCW寡占の状態から、俄かに戦国時代の様相を呈してきた。そして今、CBSが新たに放送を開始するのが、クラシックのスーパーヒーロー、スーパーマンの従姉の活躍を描く、「スーパーガール」だ。
しかし男が主人公になると「スーパーマン」なのに、女性が主人公だと「スーパーウーマン」ではなく「スーパーガール」になるのはなぜだ、しかも昔は実際の話「スーパーウーマン」ってのはあったのに、なぜわざわざウーマンからガールに低年齢化する。という疑問はともかく、「スーパーマン」の女性版「スーパーガール」の放送が始まった。
スーパーガールことカーラ・ゾー-エルは、スーパーマン同様地球に到達し、これまたスーパーマン同様人間の家庭で人間のように育てられ、自分の力は隠しておくよう教えられる。しかし、ある時一緒に育った人間の姉アレックスの乗る飛行機がエンジン・トラブルによって墜落の危機に陥る。それをニューズで見たカーラはなんとかしなくてはと、咄嗟にこれまで封印していた自分の力を解き放ち、空を飛んで飛行機を窮地から救う。もちろんその一部始終はTVカメラがとらえていた。このスーパーガールはいったい何者か。
カーラは実は人のために自分の力を使う、このことこそが本当に自分がしたかったことだと悟るのだが、それで翌日、職場に行くと同僚のウィンに自分はスーパーパワーを持っているのだと自ら告白し、協力を求める。それでウィンは衣装をデザインしたりするのだが、かなり安易というか、思慮に欠ける行為という気がしないでもない。
今回主人公のスーパーガールことカーラ・ダンヴァース=カーラ・ゾー-エルに扮するのは、メリッサ・ベノイスト。フランス系であり、名字のBenoistはフランス語読みだとメリッサ・ベノワになるが、アメリカではだいたいベノイストと紹介される。FOXの「グリー (Glee)」で注目され始めた時、どこかで自分自身をメリッサ・ベノイストですと自己紹介しているのを見たことがある。
最近CBSの「レイト・レイト・ショウ (The Late Late Show)」に、ちょうど公開が始まる「ブルックリン (Brooklyn)」に主演のシアーシャ・ローナンと一緒にゲストとしても出ていた。アイルランド系のローナンのファースト・ネイムのシアーシャのスペルはSaoirseであり、知らなければ到底シアーシャとは発音できない。同様にベノイストも本当はベノワなんだよね、その方がなんかアカデミー賞受賞女優みたいだ、とホストのジェイムズ・コーデンが言っていた。因みにコーデンは英国人なのだが、彼から見てもフランス語はおしゃれに聞こえるようだ。
ところで同様にフランス系で、CBSでコーデンの直前枠の「ザ・レイト・ショウ (The Late Show)」のホストを担当しているスティーヴン・コルベアは、Colbertという名字が、こちらは英語読みのコルバートではなく、フランス語読みのコルベアで定着している。最初、本人自身がコルベアでもコルバートでもどちらでもいい、みたいなことを言っていた。こういうのは、最初英語読みされ、それが定着する場合が多いが、特に意図的に「コルベア」を強調していたとも思えないコルベアがコルベアで定着したのは、一番最初に知られるようになった「ザ・デイリー・ショウ (The Daily Show)」で、ホストのジョン・スチュワートからコルベアと呼ばれていたことが大きいだろう。ベノイストの場合は、自分からベノワだと主張しない限り、このままベノイストで定着しそうだ。
他の出演者では、かつてFOXの「アリーmyラブ (Ally McBeal)」で人気を博したカリスタ・フロックハートが、カーラの鬼上司役で出ている。姉のアレックス役はABCの「グレイズ・アナトミー (Grey's Anatomy)」に出ていたカイラー・リーで、髪を短くしており、こちらの方が似合っていると思う。実はアレックスは、地球外生命体を監視する政府の秘密組織で働いていたのだった。
かつてABCは、1990年代に新「スーパーマン」こと「ロイス&クラーク (Lois & Clark)」を放送していたことがある。そこそこ人気があって4シーズンほど続いた。今回の「スーパーガール」もたぶんにコメディ・タッチのところがあり、同じ路線を目指している。実は番組の中でダンヴァース家の主を演じているのが、誰あろう「ロイス&クラーク」で主人公の片割れ、スーパーマンことクラーク・ケントに扮していたディーン・ケインだ。いつの間にやら歳とってお腹も出ちゃって、あれでは一瞬であろうとももうスーパーマン役は無理だな。しかし、だったらその妻役で是非ロイスを演じたテリ・ハッチャーも出してもらいたかった。ケインが出ている以上、ハッチャーにも話が行ってないわけがないと思うのだが、出てないところを見ると、断られたに違いない。
追記:
本筋には関係ないが、上で事実ではないことを述べているので訂正しておく。この項を書いた後にコルベアはれっきとしたアイルランド系で、まったくフランスとは関係なく、単にコルベアの父の趣味で、コルバートだったものをコルベアにしたと、本人が「レイト・ショウ」で言っていた。そのためコルベア家では血の繋がった家族内でコルベア姓もコルバート姓もいまだにまかり通っており、現実にコルベアの兄弟はいまだにコルバート姓で通しているそうだ。スティーヴンもそうだが父もひねった性格だったようだ。