サンデイ・ナイト・ウィズ・メギン・ケリー   Sunday Night With Megyn Kelly 

放送局: NBC 

プレミア放送日: 6/4/2017 (Sun) 19:00-20:00 

製作: NBC 

製作総指揮: メギン・ケリー、マリオ・ガルシア 

ホスト: メギン・ケリー 

コレスポンダント: シンシア・マクファデン、キース・モリソン、ハリー・スミス、ケイト・スノウ、ジェイコブ・ソボロフ 

 

内容: メギン・ケリーがメイン・ホストのニューズ・マガジン。


_______________________________________________________________

Sunday Night With Megyn Kelly


サンデイ・ナイト・ウィズ・メギン・ケリー  ★★1/2

ケーブルのFOXニューズ・チャンネル (FNC) は、アメリカでは徹底した保守系のニューズ・チャンネルとして知られている。ネットワークのFOXとはむろん姉妹関係にあるが、FOXネットワークではそれほどでもない政治色が、マイナーな一ケーブル・チャンネルのFNCになると、がちがちな右寄りになる。 

 

仮にもニューズ・チャンネルを標榜しているなら、せめて公明正大であるべきだと思うが、まったくそんなことはない堂々の右派だ。チャンネル・スローガンは「フェア・アンド・バランスド (Fair and Balanced)」というものだが、そもそも時にまったく事実ではないことを報道し、指摘されてもいる。さすがに自分たちでもこれはうまくないと思ったのか、このスローガンはいつの間にやら使われなくなった。 

 

チャンネルの最大人気番組は、もちろんがちがちの右寄りおっさんビル・オライリーがホストの「ジ・オライリー・ファクター (The O'Reilly Factor)」で、次いでメギン・ケリーが2013年からホストを担当している「ザ・ケリー・ファイル (The Kelly File)」も人気があった。 

 

私自身はFNCはまず見ないのでケリーのことはほとんど知らなかったのだが、今回の大統領選におけるディベイトでモデレイタを務め、ドナルド・トランプに結構辛辣なコメントをして、トランプから「目からもどこからも血を流している」とツイッターで逆襲されて一躍注目を浴びた。いずれにしても、トランプが何を言いたかったのかはよくわからなかった。整形しているとでも言いたかったのか? 

 

その後FNCは昨夏、セクシュアル・ハラスメント問題でCEOのロジャー・エイルズが、グレッチェン・カールソン、そしてケリーから続け様に弾劾されて辞任に追い込まれた。オライリーも同様にセクハラで訴えられて「オライリー・ファクター」はキャンセルされるなど、一時はFNCの屋台骨が揺らぐスキャンダルになった。そして今年1月、ケリーはFNCからネットワークのNBCへの移籍を発表した。ついでに言うとエイルズは今夏、自宅で転んで頭を打ち、この世を去っている。 

 

ケリーは今秋からNBCの朝の看板番組である「トゥデイ (Today)」登板が決まっているが、その前に夏の一定期間だけのニューズ・マガジン番組にホストとして登場したのが、この「サンデイ・ナイト・ウィズ・メギン・ケリー」だ。 

 

正直言ってプライムタイムのニューズ・マガジンは、既に飽和気味だ。ABCの「20/20」、NBCのデイトライン (Dateline)」等の番組が既にある上、「サンデイ・ナイト」が編成される日曜夜7時の裏番組には、この手の番組の最長寿ヴェテランであるCBSの「60ミニッツ (60 Minutes)」が控えている。ついでに言うとCBSはさらに今夏、新ニューズ・マガジンの「オン・アサインメント (On Assignment)」を投入するなど、飽和気味どころか、完全にこの種の番組は飽和状態だ。そこにわざわざ「60ミニッツ」の裏番組として「サンデイ・ナイト」を持ってくる。もちろんケリーは今秋から朝の「トゥデイ」に移動するわけだから、「サンデイ・ナイト」は夏だけのケリーの力試しみたいな位置付けではあるだろう。これでケリーが果たしてどれくらいやれるかを様子見する算段に違いない。 

 

その番組第1回の冒頭のセグメントは、ケリーがロシアのウラジーミル・プーチン大統領にインタヴュウするというもので、確かに目玉ではある。しかしほぼ同時期にショウタイムが、映画監督のオリヴァー・ストーンがプーチンに単独インタヴュウする「ザ・プーチン・インタヴュウズ (The Putin Interviews)」を4夜にわたって放送しており、どちらかというとそちらの方が訴求力は高かった。実際の話ケリーのインタヴュウでは、プーチンがたかだか10分強のインタヴュウでアメリカの大統領選に介入したか言質をとられるような発言をするわけがなく、正直言って肩透かしのインタヴュウだったという印象は拭い難い。 

 

2番目のセグメントはガンの痛み緩和薬サブシス (Subsys) を製造している製薬会社が、モルヒネの100倍という依存性の高いサブシスをそれと知りながら販売して、各地に中毒症状に陥った生活破綻者を大量に生み出している問題をシンシア・マクファデンがレポートする。3番目のセグメントは、ゾウが違法にゲームとしての狩猟や象牙のために殺されるのを阻止するためにケニアに渡ったアメリカ人女性一家をとらえる。 

 

正直言って番組第1回を見る限り、特に番組の特色を感じたり、ケリーしかできないことをやっているという感じはしなかった。一方最も番組色が出たのは、第2回でケリーが同業者のエリン・アンドリュウズにインタヴュウしたセグメントだ。 

 

アンドリュウズは元ESPN、現FOXのスポーツ・キャスターで、ESPN時代、ナッシュヴィルのマリオット・ホテルの部屋の中を裸で歩き回っていたところをストーカーにドアスコープから盗撮され、その姿がネットでヴァイラルになったという過去を持つ。精神的にかなりダメージを受けたと思うが、男とホテルを相手どって訴訟を起こし、多額の賠償金を勝ちとっていた。こういう経歴が同様にセクハラを受けて立ち向かったケリーの共感を得たのは間違いなく、ケリーがアンドリュウズにインタヴュウするのは腑に落ちる。インタヴュウの内容よりも、二人が一緒にいるというそのことにこそ意味があったと言える。 

 

さらにケリーは、ラジオDJのアレックス・ジョーンズにもインタヴュウして注目を集めた、というか批難を浴びた。ジョーンズは、極右、というか、国家による様々な陰謀説を主張する小太りの陰謀論者で、かすれ声でのべつ幕なしに、まるで怒っているようにあることないこと喋りまくる。私がジョーンズの名を聞いたのは、CBSの「ザ・レイト・ショウ・ウィズ・スティーヴン・コルベア (The Late Show with Stephen Colbert)」で、ホストのコルベアがジョーンズの真似をしていて、これ、いったいなんだと思ったのが最初だ。あとでジョーンズ本人の喋りを聞くと、いかにコルベアが特徴をうまくとらえていたかがよくわかった。ドナルド・トランプの言うフェイク・ニューズはまさしくこれで、真面目に聞くには値しないものだが、一部ではカルト的人気がある。しかしそれをネットワークのTV番組が取材したりインタヴュウするのはいかがなものかという意見が結構あった。 

 

結局「サンデイ・ナイト」は、NBCがケリーを「トゥデイ」以外にも、硬派のニューズや一人で看板掲げての番組にも起用できるか様子を見た、というのが妥当なところだろう。正直言って、本気で「60ミニッツ」の裏番組として正面切って勝負できると考えていたとは思い難い。 

 

ところで「トゥデイ」だが、5年前にごたごた解雇された元ホストのアン・カリーが、来年からPBSで新シリーズのホストを担当するという発表が先頃あった。あれからもう5年経っているのか。現在ではサヴァンナ・ガスリーとマット・ラウアーを中心につつがなく番組は続いているが、果たしてそこにケリーが加わることでまたどんな化学反応が起きるのか。あるいは、ケリーはさらに時間帯が伸びる番組の一部を担当するだけで、ガスリーやラウアー、芸能担当のホーダ・コッブやキャシー・リー・ギフォードとは交わらないという話もある。いずれにしても、今秋のNBCのお手並み拝見というところだ。 













< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system