Steven Seagal Lawman  スティーヴン・セガール・ロウマン

放送局: A&E

プレミア放送日: 12/2/2009 (Wed) 22:00-22:30-23:00

製作: スティームローラー・プロダクションズ、ITVステュディオス

製作総指揮: スティーヴン・セガール、フィリップ・ゴールドファイン、ジョン・キム

出演: スティーヴン・セガール


内容: アクション映画俳優として知られるスティーヴン・セガールが、ルイジアナ州ジェファーソン・パリッシュのカウンティ・シェリフの一員として、犯罪を取り締まる警察業務に携わる様に密着するリアリティ/ドキュメンタリー。


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実は特にハリウッドのアクション・スターとして知られるスティーヴン・セガールのファンというわけでもない。初期の「沈黙」シリーズならだいたい見ているし、実際結構面白かった。元々が武術家だから、アクション・シーンの切れだけを見ればハリウッドでも1、2を争うと言える。「エグゼクティブ・デシジョン (Executive Decision)」みたいなカメオ的出演も意外性あって悪くない。


とはいっても、だからファンかと言えば、別に彼が出ているから見に行くというほど入れ込んでいるわけじゃない。実際近年の主演作はほとんどパスしている。近年、出演作が劇場公開されずにDVDスルーか、TV放映権を売ってTV放送のみになることが多いのも、私と同じように思っている者が多いことの現れだろう。


だから、そのセガールが現実の警察業務に同行して町をパトロールしたり、犯罪者を取り締まったりする様を追うというリアリティ・ドキュメンタリー「ロウマン」の発表があった時も、特に興味を惹かれたわけではなかった。このジャンルだと、FOXのやや脱力系の長寿番組「コップス (Cops)」という大ヴェテラン番組が既にあるし、マイ・ネットワークTVの「ストリート・パトロール (Street Patrol)」、目をケーブルに移せば、スパイクTVの「DEA」、さらにディスカバリー系のチャンネルによる「ポリス・ウーメン・オブ・ブロワード・カウンティ (Police Women of Broward County)」(TLC)、「アニマル・コップス (Animal Cops)」(アニマル・プラネット)、「ザ・シフト (The Shift)」(ID) 等、この手の番組は探せば結構ある。


特にハリウッド・セレブリティがこういう仕事に挑戦するという趣向だけを見ても、CBSが既に一昨年、オズボーン家のジャック・オズボーンや、マイケル・ジャクソンの姉ラ・トーヤ・ジャクソンが警察のユニフォームに身を包んで町の治安活動に乗り出す「アームド&フェイマス (Armed & Famous)」を放送している。つまり、これだけの数の番組が既にあるのに、たとえセガールが出ていようとも、また新しくこの手の番組に手を染める理由にはあまりならない。視聴者も特には興味を惹かれないだろう。どうせならコメディ・セントラルの「レノ911 (Reno 911)」のように、まだパロディにしてくれた方が見ようという気にもなる。


だから、私が「ロウマン」を見たのは本当にたまたまだ。今年エミー賞をとった「インターヴェンション (Intervention)」や、「ホーダーズ (Hoarders)」等の注目されているリアリティ・ショウの新シーズンが始まって、番宣に力を入れているA&Eに、何気にチャンネルを合わせたらたまたまやっていたのが、この「ロウマン」だったというに過ぎない。


実際の話、番組の中味だけを見ると、「ロウマン」はその他のこの種のパトロール・カー同乗系リアリティ・ショウとほとんど変わるところはない。そのうちの一人がセガールであるだけだ。ではあるのだが、やはりそれだけで他の番組と一線を画しているところもあり、そういう部分だけを見ると、それなりに面白かったりするのだ。


まず番組第1回では、冒頭でなぜセガールがこういう副業に20年もの長きにわたって携わっているかがセガールの口から説明される。マーシャル・アーツの達人として、ジェファーソン・パリッシュのシェリフに護身術を教えた経験もあるセガールは、その腕を見込まれてシェリフの道に誘われる。以来、映画スター、セガールは町のシェリフ、セガールとしても二足のわらじを履くことになった。


セガールはちゃんと防弾ヴェストを着てパトロールに加わる。映画と違い、現実では撃たれたら見切ってよけるなんて技はいくらなんでも無理だし、弾が当たれば本物の血が出る。当然当たり所が悪ければ死ぬ。実際、番組中でカー・ジャックが発生したとしてカー・チェイスに加わったセガールたちが最終的にとらえた男が持っていたライフルは、こういうヴェストを貫通する力のあるライフルで、私は、考えれば当然のことだが、そうか、防弾ヴェストって万能じゃないんだと初めて気がついた。なんか、あれ着てたら少なくとも命は安全という気がしてたんだが、現実は甘くない。ハリウッド映画やTVだったら、あれ着てたら少なくとも全員命が助かってるぞ。


一方ではハリウッド・スターでもあるセガールは、時によっては姿を現した先で素性がばれ、サインや握手を求められたりもする。さすがに上司は仲間が握手攻めになるのをあんまり快く思ってはいないようで、そうなると、早く帰るぞ、なんて怒鳴っている。しかし一般市民に好感されるのは公僕の勤めの一つとは言えないか。


セガールは銃器の扱いにも秀でていて、近々実射試験のある同僚にアドヴァイスしたりもする。30フィートの位置から目標となる人の形の頭の部分にまず一発ぶち込むと、次の発砲は、その、開いた穴の部分にもう一度通せと、まるでマンガみたいなことを平気で言う。ほんとにできるのかよ、そんなことと思っていると、セガールは実際に撃って見せる。そうすると、完全に同じ穴というわけではないが、少なくともその穴に触るくらいの精度ではちゃんと撃てているのだ。思わず感心する。


さらに驚くことには、彼は遊びと称して今度は洗濯ピンにマッチ棒を挟んで立たせ、20フィートの位置から撃ってみせる。見事マッチ棒を吹き飛ばすのだが、セガールは、違う違う、オレは弾丸でマッチに火をつけたいんだと、これまた本気なのか冗談なのかよくわからないセリフを平気でのたまう。そばの同僚も本気で感心している。


セガールは日本で修行していたこともある合気道の達人で、何かしゃべらせると、よく禅とか合気道の例が出る。合気道とはPeaceとHarmonyのことだと説明していた。銃の撃ち方を同僚に教える時も、弓の達人が弓を放つ時のように、特にしゃちほこばるのではなく、身体に力を入れないで、流れに乗るように、一連の動きで、みたいなアドヴァイスをしていた。軍や警察のマニュアルに載っている射撃の仕方とはだいぶ違うような気がする。ふうん。ジェダイ・マスターだ。


同僚だけではなく、一般人相手にも護身術としての合気道を教えるのだが、さすがに本当に武術の達人だけあって、ハリウッド映画でアクション・スターが悪人相手にアクションしているのとは違う。ちょちょいと相手の腕をとってひねって身動きとれなくする動きなんて、さすが自家薬籠中のものという感じで、現在ではちょっと腹が出ているのに、それでもこいつは現実に取っ組み合いをさせてもかなり強いだろうなと感じさせる。


たぶん、セガールは本気で町の治安を憂え、平和の維持に微力ながらも尽力したいと考えているのだろう。あくまでもエンタテインメントで犯罪者相手に半分びびっていたセレブリティ警官をとらえた「アームド&フェイマス」や、カン違い犯罪者相手に苦笑失笑する「コップス」とは、やっていることは同じでもかなり毛色は違う。しかしこの番組、今にコメディ・セントラルの「サウス・パーク (South Park)」でパロディの対象にされそうだ。








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スティーヴン・セガール・ロウマン   ★★1/2

 
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