Stars in Danger: The High Dive   スターズ・イン・デンジャー: ザ・ハイ・ダイヴ 

放送局: FOX 

プレミア放送日: 1/9/2013 (Wed) 20:00-22:00 

製作総指揮: アル・バーマン 

ホスト: カイル・マルティノ、ベッキー・ベイリング 

コーチ: トロイ・デュメイ 

出演: トゥイッチ、デイヴィッド・チョーカチ、ジェニ・ファーリー (Jワウ)、べサニー・ハミルトン、テレル・オーウェンス、アレクサンドラ・ポール、キム・リチャーズ、カイル・リチャーズ、アントニオ・サバトJr. 

 

Splash   スプラッシュ 

放送局: ABC 

プレミア放送日: 3/19/2013 (Tue) 20:00-21:00 

製作: アイワークス 

製作総指揮: ジョシュ・グリーンバーグ、トッド・ネルソン 

ホスト: ジョーイ・ロウレンス、カリッサ・トンプソン 

ジャッジ: デイヴィッド・ボウディア、スティーヴ・フォーリー 

コーチ: グレッグ・ルガニス 

出演: カリーム・アブドゥル-ジャバー、ルイ・アンダーソン、ドレイク・ベル、チューイ・ブラヴォー、ロリ・ブッシュフィールド、ブランディ・チャステイン、ニコール・エガート、ケシャ・ナイト・プリアム、ダムコング・スー、キャサリン・ウェブ、ケンドラ・ウィルキンソン 

 

内容: 勝ち抜きのダイヴィング・コンペティション・リアリティ2種。


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たぶん昨年のロンドン五輪でアメリカのデイヴィッド・ボウディアが10mプラットフォームで優勝したことと関係あるか、あるいは既にドイツで人気番組になっていたというオリジナルのリアリティ・ショウがアメリカでの番組製作に強く乗り気だったからか、いずれにしても今年、アメリカのネットワークはほぼ同時期に二つの勝ち抜きダイヴィング・リアリティ・ショウを編成した。それがFOXの「スターズ・イン・デンジャー: ザ・ハイ・ダイヴ」と、ABCの「スプラッシュ」だ。「ハイ・ダイヴ」の方は2時間の特番であり、「スプラッシュ」は8週連続のシリーズだ。 

 

私が南の地方の高校生だった頃、学校の近くにわりと大きめのホテルがあり、屋外プールもあった。同級生がそのプールでライフガードのアルバイトをしていたこともあって、夏、たまにフリーで泳がせてもらった。田舎とはいえ高3ともなると、そこそこ受験に備え、学校の授業もそれぞれの事情に合わせて自習みたいな時間が多くなる。そういう時間に、授業を抜け出して泳いでいたわけだ。 今考えるとなんて不届きな生徒たちなんだと思う。やっぱ若いやつって、大人から見るとただうざいバカなやつらの集まりでしかないと、大人になった今では本当に思う。 


脱線したが、そこのプールにはスプリングボードがあった。むろんオリンピックにあるような3mではなく、せいぜい水面から1m位の遊びだ。それでも意地になって、2回くらいは回転を入れようとして失敗して、水面に顔面や腹をしたたか打ったりしていた。1mのスプリングボードでも、失敗するとかなり痛い。 

 

大学に入って東京に出てきて、代々木のオリンピック・プールで泳いだ時、試しに併設の10mプラットフォームに上ってみたことがある。これまた今考えると危険でもあり身の程知らずにもほどがあるのだが、初めて10mに上った私は、端から下を覗いてその高さに愕然とし、ダイヴしないで梯子から下に降りた。あんなの怖くて跳べるか。失敗したら本当に死ぬぞ。当時の代々木は、当人にその気があれば誰でもプラットフォーム上に上らせていた。一番上まで上ってみたけど、やはり私のように怖気づいて梯子を降りるやつも結構いた。今でもそうだろうか。あれは、素人には無理だと思う。 

 

近年は新しくエキストリーム系の、クリフ・ダイヴィングというスポーツも現れている。文字通りクリフ、崖の上からダイヴするもので、その高さは30m近くに達する。むろんどんな強靭な肉体を持つ者だろうとも、この高さで頭からダイヴしてちょっとでも角度がずれたら、あの世行きの可能性が高い。そのため着水は足からだ。それだって常に大怪我のリスクと紙一重だ。そういうスポーツのサーキットができている。私見ではモーター・スポーツよりも危険度は高い。ダイヴィングは進化している、と言えるのだろうか。 

 

スポーツとしてのダイヴィングは、美しさを競うことが重要なファクターということもあって、私が好きなフィギュア・スケート同様、ゲイ密度が高い。抜群に高い。ナルシシズムの極致のようなスポーツだから、それもわからんではない。フィギュアでゲイの割合が2割から3割程度だとしたら、印象ではダイヴィングのゲイ・パーセンテージは7割から8割くらいには達するのではないかと思う。50%を下回ることはないだろう。「スプラッシュ」に出ているアメリカ・ダイヴィング界の伝説グレッグ・ルガニスは、確か何年か前にカミング・アウト済みだ。 

 

他にも「ハイ・ダイヴ」にはトロイ・デュメイ、「スプラッシュ」にはデイヴィッド・ボウディアという昨年ロンドン五輪で活躍したダイヴァーが、ジャッジ、コーチとして参加している。いちいち追っているわけじゃないので彼らもカミング・アウトしているかどうかは知らないが、彼らも当然ゲイくさい。トロイ・デュメイなんて、もう、名前からしてゲイのツボ必中だ。「ハイ・ダイヴ」ではそのデュメイが弟 (兄?) のドワイトと一緒にシンクロでスプリングボード・ダイヴして見せる。完璧な3回転半。着水も同時でほとんど飛沫も上がらず、ゲイなら悶え死にしそうだ。 

 

さて、まず「ハイ・ダイヴ」は、8人の挑戦者がダイヴィングに挑む。NFLのテレル・オーウェンス、FOXの「アメリカン・ダンスアイドル (So You Think You Can Dance)」出身のトゥイッチが運動神経がいいのは間違いなかろう。俳優でも海を舞台としたドラマ「ベイウォッチ (Baywatch)」出身のデイヴィッド・チョーカチ辺りもわりと行けるかもしれない。意外性という点では、数年前にサメに片腕を食い千切られてもサーフボードに乗り続けて有名になった片腕のサーファー、ベタニー・ハミルトンがいる。 

 

一方、リアリティ・ショウ出身の参加者、MTVの「ジャージー・ショア (Jersey Shore)」のスヌーキの親友Jワウ、ブラヴォーの「ザ・リアル・ハウスワイヴズ (The Real Housewives)」出身のキムとカイルのリチャーズ母娘なんてのは、客寄せ以外の意味があるかどうか疑問だ。実際、Jワウは練習中に腰を痛めて一度もダイヴすることなく棄権、代わりにやはり「ベイウォッチ」出身のアレクサンドラ・ポールが出場することになった。 

 

リチャーズ母娘に至っては何をか言わんやで、スプリングボードからダイヴどころか、足から下に落ちるという、ただそれだけのことが怖くてできない。こういうスポーツ・リアリティは、素人が青タン作りながら上達していくのを見るのも面白さの一つだ。根性を見せたポールなんて、ふくらはぎや腿を含めた両足のほとんどが、内出血で青黒くなっていた。しかしリチャーズ母娘のようにここまでド素人だと、見てても何も面白くない。それにしてもただ足から落ちるというのにも、ちゃんと技の名前がついてんだな。 

 

コンペティションは2回ダイヴして平均得点の高い上位3人が決勝ダイヴを行う。その3人に残ったのは、アントニオ・サバトJr.、ポール、およびオーウェンス。それぞれが5mプラットフォームや3mスプリングボード等から、好き、もしくは得意なダイヴをする。技の難易度に応じてボーナス・ポイントがつくため、一見しての不公平さは均されている。それで優勝したのは、5mプラットフォームから前方一回転半パイクをダイヴし、僅差でポールに競り勝ったサバトJr.だった。因みに番組内ではシンクロでも勝負があり、それにはトゥイッチ/ハミルトン組が勝った。 

 

一方の「スプラッシュ」は8回シリーズの番組であり、10人いる参加者から毎週一人ずつ追放していき、最後に優勝者を決める。番組として「スプラッシュ」が「ハイ・ダイヴ」より優れている理由は、取りも直さずシリーズ番組であり、参加者が練習を積み重ねるため、技術が向上して技の難易度が上がっていくのが目に見えるからに他ならない。一回特番の「ハイ・ダイヴ」では結局参加者は最後までほとんど同じ練習してきたダイヴを繰り返すだけだが、「スプラッシュ」では後半になると、素人でも10mプラットフォームからダイヴするやつが出てくる。つい2か月間前はまったくの素人だったやつが、10mだ。失敗すれば大怪我で、その可能性は非常に高い。なかなか手に汗を握る。 

 

とはいえ「スプラッシュ」にも客寄せ人選はあり、その代表がケンドラ・ウィルキンソンだ。ウィルキンソンはいわゆるプレイボーイ・マンションに主のヒュー・ヘフナーと一緒に住んでいたプレイメイトの一人だ。そのウィルキンソン、「ハイ・ダイヴ」のリチャーズ母娘同様、怖くて水に飛び込めない。3mのスプリングボードの上からダイヴするのも時間をかけてそれこそ清水の舞台から飛び降りるみたいな悲愴な表情で、10mならまだしも、3mのスプリングボードでこんなに時間をかけるなと思ってしまう。一方、スノウボーダーのロリ・ブッシュフィールドみたいに、スリル好きで最初からフォームとかはともかくいきなり10mから跳んだやつもいる。 

 

ウィルキンソンはその後も跳ぶ気になれず、練習でも飛び込めないため、コーチしていたルガニスがさすがにしびれを切らしてウィルキンソンと言い争いになるシー ンもあった。結局ウィルキンソンは翌週の回で自分から棄権、最初からできそうもないものに金とマスコミの注目目当てで挑戦するな! 

  

一方その他の人選は、NBAのホール・オブ・フェイム・プレイヤーのカリーム・アブドゥル-ジャバー、NFLの ダムコング・スー、芸能界からはルイ・アンダーソン、ドレイク・ベル、チューイ・ブラヴォー、ニコール・エガート、ケシャ・ナイト・プリアム、元ミス・ア ラバマのキャサリン・ウェブらが参加する。芸能界組は多少客寄せ感なきにしもあらずで、コメディアンのブラヴォーは案の定というか練習中に怪我して棄権、 代わりに女子サッカーの、スポーツ・ブラを世界に広めた元祖と言えるブランディ・チャステインが参加する。 

 

アンダーソンなんかは体重120kgは下らないと思うが、その身を持てあまし、いったんプールに入ったが最後、出ることができない。自分の身体を持ち上げきれないからだ。周りから数人がかりでやっとのことでアンダーソンをプールの外に押し出す。既に本人も周りの者もへとへとだ。 

 

体重でアンダーソンが不利だとしたら、身長で不利なのがアブドゥル-ジャバーだ。なんせ2m近い。空中で身体を折り畳むのに苦労しているのがありありで、何度も腹や顔面を水に打ちつけている。ドレイクも失敗して目の周りにくまができている。ああいう風に内出血するものなのか。スーはとにかくガタイがいいために、水に飛び込む勢いがいい。勢いあり過ぎてプール下のコンクリートに頭を打ちつけて出血していた。これもかなりやばい。運が悪ければ本当に「海を飛ぶ夢 (The Sea Inside)」になってしまう。 

 

エガートの場合は本番直前の練習で、逆立ちからそのまま飛び込むはずが、腕が身体を支え切れず姿勢が崩れ、いったんプラットフォームの端に脇腹をこすりつけるように打ちつけた後、そのまま下に落ちていった。超危険。ブッシュフィールドは楽しくて仕方がないという感じで自分から率先して色々なポーズで飛び込み、そのうち顔横向きのまま飛び込んだ時に、耳の鼓膜を破ってしまった。とにかく常に危険と隣り合わせ、怪我する頻度はかなり高い。 

 

素人にはかなり難しいスポーツだと思うが、これは本当かと目を疑ったのが、ホストのジョーイ・ロウレンスとカリッサ・トンプソンで、では、我々もなんかやるかと、二人揃って服を着たまま10mからジャンプした。しかも実に見事なダイヴで本職並みだ。ジャンプの直前にカメラが切り換わったので、もしかしたらスタント・ダブルかもと思って検索もしてみたのだが、そういう意見もないこともなかったが、概ね皆彼らが実際にダイヴしたと納得しているようだ。しかし、いくら彼らがスポーツ万能でも、あれは一朝一夕にできるダイヴではなかった。経験者か? しかし服を着たままのダイヴも格好いい。 

 

上にも書いたが、「スプラッシュ」の面白いところは、残っている参加者がだんだん難しい技に挑戦していくことだ。この数か月で何百本、何千本とダイヴしているのだ。恐怖心を克服し、3mから5m、7m、10mとだんだん上の方からダイヴを試みるようになる。身体もシェイプアップされてきて、風船のようだったアームストロングが、自分でプールから上がれるようになり、ちょっと肉のついていたエガートが、だんだんウエストが絞られてスマートになっていくのがよくわかる。 

 

そして最終回まで残ったのが、ブッシュフィールド、ドレイク、エガートの3人。ブッシュフィールドは第1回から本命だし、ドレイクも線の綺麗さでポイント高い。穴はエガートで、努力によってここまで勝ち残ってきた。そしてスペシャル・ゲストがダイヴを披露します、といって顔を隠して登場してきた何者かの姿を見て、一緒に見ていたうちの女房は、トニー・ホウクじゃない? と、見当違いもはなはだしいコメントを飛ばす。 

 

あのなあ、ホウクはスケートボーダーで、ま、確かにブッシュフィールドはスノウボーダーだから近くないこともないが、ダイヴィングとはジャンル違いもはなは だしいぞ。スケボー界の伝説ホウクは、引退した時にパフォーマンス中にスケートボードもろとも水の中にジャンプしたという印象的な引退エ ピソードがあり、それを思い出したようだ。そして番組でそれまでは顔を隠していた謎のゲストがフードをとると‥‥なんと、本当にホウクだった。彼の引退パフォーマンスは伝説となっているので、番組プロデューサーがそれを思い出して出演をオファーしたのだろう。しかし、ほんとにホウクだったとは。ホウクはスケートボードもろともジャンプ、足から無事着水する。 

 

結局優勝したのは、予想通りというか、番組第1回から10mに挑戦していたブッシュフィールド。彼の最後のダイヴは後方抱え込み3回転で、ボウディアも感心していたが、あと半回転足せば、ボウディアがロンドン五輪の10mで勝利を決めた優勝ダイヴだ。ボウディアがそれまでの半生をかけて築き上げてきたものに、たった数か月で到達しようとしている。その身体運動能力の高さ恐るべし。 

 

一方エガートは、初めて7mに挑戦、さすがにこれは彼女の実力を超えていたために失敗、腰から落ちる形になり、一瞬息ができなくなったようで助けを求める一幕もあった。しかし彼女はよく頑張ったと思う。この番組、結構面白かったから、ぜひ第2シーズンも製作してもらいたい。 









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スターズ・イン・デンジャー: ザ・ハイ・ダイヴ   ★★

Splash

スプラッシュ   ★★★

 
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