放送局: MTV

プレミア放送日: 7/11/2003 (Fri) 22:00-22:30

製作: アデライデ・プロダクションズ、ソニー・ピクチュアズTV、マーヴェル・エンタテインメント

製作総指揮: ブライアン・ベンディス、リック・アンガー

共同製作総指揮: ブライアン・マイケル、オウデゥ・パデン

クリエイター: スタン・リー、スティーヴ・ディトコ

脚本: ブライアン・ベンディス

声: ニール・パトリック・ハリス (ピーター・パーカー/スパイダーマン)、リサ・ローブ (メアリ・ジェーン・ワトソン)、イアン・ジーリング (ハリー・オズボーン)


物語: ピーター、ハリー、メアリ・ジェーンは同じ大学に通っているが、夜な夜なスパイダーマンとして悪漢退治に余念のないピーターは、つきあいの悪い奴と思われていた。ある時ピーターは高校の旧友マックスに会うが、冴えないマックスは大学でももてず、誰からも相手にしてもらえなかった。校友会のパーティに誘われたマックスは、笑いものにされるのも知らずに有頂天になってパーティ会場に向かうが、そこでペイント弾を受け、ほうほうの体で逃げ出す。鬱屈した怒りはマックスをエレクトロに変身させ、エレクトロはところ構わず攻撃を始める‥‥


_______________________________________________________________


現在、アメリカのTV界におけるアニメーションの分野では、和製アニメの進出が著しい。基本的にはアメリカ産のアニメーションの間に和製アニメが点在しているわけだが、人気があったり注目されている番組のほとんどがアニメなので、編成されている全アニメーションの半分くらいはアニメなのではという印象を受けるくらい、アニメが頑張っている。


もちろん本当はそんなことはなく、今、アメリカで放送されているアニメーションでアニメが占めている割合は、実際には多分、1割にも満たないくらいしかないと思う。しかし、それでもアメリカ産のアニメーションより、日本製アニメの話題の方をよく聞くから、アニメが非常に人気があるような印象を受ける。私が日本人だからアニメの話題がよく耳に入るというのもあるかもしれないが、それを割り引いても、今、アニメが注目されているのは間違いないだろう。


実際、ネットワークで放送されているアニメーションでは、プライムタイムに放送されている唯一のアニメーションであるFOXの「シンプソンズ (The Simpsons)」を別格とすれば、今、最も人気がある番組は、WBが日中放送している「遊戯王デュエルモンスターズ (Yu-Gi-Oh!)」であったりする。ケーブルTVでは、子供向けアニメーションの多いニコロデオンに、「スポンジボブ・スクエアパンツ (SpongeBob SquarePants)」や「ラグラッツ (Rugrats)」なんていうアメリカ産の人気番組も多いが、しかし、大人もよく見ているカートゥーン・ネットワークで人気があるのは「ドラゴン・ボールZ (Dragon Ball Z)」や「カウボーイ・ビバップ (Cowboy Bebop)」であり、さらに最近、「サイボーグ009 (Cyborg 009)」が始まったなんて話を聞くと、和製アニメの浸透ぶりに感心してしまうというものだ。


さらにこの間、業界誌のハリウッド・レポーターをぱらぱらとめくっていたら、「アニメ」ではない、「マンガ」が、アメリカにも根づこうとしているという特集記事が載っていた。既に少年ジャンプはアメリカでも発売され、かなりの人気を得ているという。そういえば、こないだ「LXG」の原作を見に行った大型書店では、日本製コミックスがわりと広い棚を占領していた。昔と違い、印刷を逆にすることなく、右から左に、日本で売られている体裁のまま販売されている。読む方も慣れると全然平気なようだ。


このような状況で、アメリカ産のアニメーションやコミックスも、アニメやマンガの影響を受けてくるのは当然だろう。実際、今回MTVが製作した「スパイダーマン」は、堂々と、日本のアニメの影響を受けたと宣言している。それが宣伝になるということは、アニメは質が高い、あるいは面白いと視聴者が思っていることの証拠である。近年のミヤザキ・アニメのアメリカへの浸透もあずかって力になっているのは間違いあるまい。


しかし、今回、よりにもよって「スパイダーマン」が、アニメの影響を受けている、あるいはアニメの技術を模倣しているというところが面白い。コミックスにしろ、ハリウッド映画にしろ、「スパイダーマン」や「スーパーマン」等は、大袈裟に言えば、アメリカ文化を代表する作品と言えないこともない。それだけ消費者に浸透しているし、知名度が高い。そのアメリカ文化の代表のようなものが、よりにもよって外国の技術を模倣していると自ら認めているわけで、こうやって、文化というものは混じり合いながら変貌していくんだろう。


ところでこれまでアメコミをアニメ化した番組は、だいたいにおいて見るに耐えないという類いのものが多かった。少なくともオール・カラーのアメコミはそれなりの美的価値を見出せないでもないが、それをガキ向けのアニメーションにすると、本当にチープな番組になってしまい、いくらなんでもあれでは大人の観賞には耐えられない。今回「スパイダーマン」がアニメの手法を取り入れたというのは、アメリカでもそういうガキ向けのアニメーションに耐えられなくなってきている者が増えてきたことの現れだろう。そしてそういう番組を真っ先に製作したのが、若者文化に敏感なMTVであったというのも、さも当然だと思われる。しかしMTVって、あんたら、いつミュージック・ヴィデオを放送してんの。


その「スパイダーマン」、アニメの影響って要するに、これまでのデフォルメしすぎなキャラクターがもう少しマンガチックになったってことかなと思っていたら、一応、確かにそういう気配も見受けられたが、最も影響を受けていると思われるのは、カメラが自由自在に動く移動撮影の多さにあった。もちろんアニメーションだから実際にカメラが動いているわけではないが、対象を上下左右からばんばん動きながらとらえる。こうやってみると、確かにアメリカ産のアニメーションでは、こういうクレーンバリバリの移動撮影はあまり見たことがなかった。


しかし、元はと言えばアニメで移動シーンが多いのは、とにかくあまり背景をきっちりと描くことよりも、とにかく動かすことによってバックが手抜きなことをごまかすため、という意味合いが大きかったはずである。そこにキャラクターを合成でかぶせるわけだ。それが意外な効果となって、今では色んなところから真似されるようになっている。瓢箪から駒ってやつか。


キャラクターも、これまでのムキムキマン的、デフォルメ強化のキャラクターから、よりマンガティックになった。ピーターやハリーの男性キャラクターは、いまだに完全にはアメコミ的雰囲気からは抜けてはいないが、ヒロインのメアリ・ジェーンは、明らかにこれまでとは異なり、アニメに出てくる女の子に近い。とはいえ目ん玉が顔の半分もあるようなアニメ・キャラというわけではなく、その辺は分相応ではあるが、それでもこれまでのアメコミ・キャラクターに較べれば、アニメの方に近いと言える。少なくとも実写の「スパイダーマン」に出ていたカースティン・ダンストに較べれば、こちらの方が可愛い。


また、第2話には、シカダと呼ばれる、刀を持った侍もどきの女の刺客が登場する。刀で銃弾を打ち落としたりするところなんか、「ルパン3世」の見過ぎだと思われるが、しかし、そのシカダとスパイダーマンの一騎打ちは、なぜだか実写で流行りのワイヤー・アクションを、そんな必要なぞまるでないアニメーションでわざわざ再現したような印象を受ける。元はと言えばワイヤー・アクションは、マンガや小説で描かれたアクションを実写で再現したいがために生まれた技術のはずなのだが、それが回り回って、そのワイヤー・アクション的動きを、わざわざアニメーションで真似しているように見えるのだ。本末転倒という嫌いはなきにしもあらずだが、しかし、このアクション・シークエンスは、それはそれで面白かった。


主人公のピーターの声を担当しているのは、「天才少年ドギー・ハウザー (Doogie Houser, M.D.)」のニール・パトリック・ハリス。それはともかくとして、驚きなのはM.J.の声を担当しているリサ・ローブで、「ステイ (Saty)」一発で消えたなあと思っていたら、彼女、女優として頑張っているようだ。ハリーの声を担当しているのは、アニメーション版「ゴジラ」で主人公タトポラスの声を吹き替えていたイアン・ジーリング。 因みにシカダの声を担当しているのはジーナ・ガーションで、キャラクターの顔とはちと印象が違うが、性格的にはどんぴしゃりという感じ。







< previous                                    HOME

 

Spider-Man

スパイダー-マン   ★★1/2

 
inserted by FC2 system