内容よりも何よりも、まず「サン・オブ・ゾーン」は実写とアニメーションのハイブリッド合成番組ということで目を引いた。
なにも実写とアニメの合成はこれが初めてというわけではない。古くは「メリー・ポピンズ (Mary Poppins)」というクラシックがあるし、「ロジャー・ラビット (Who Framed Roger Rabbit)」なんてのもあった。最近ではCBSの「ザ・レイト・ショウ・ウィズ・スティーヴン・コルベア (The Late Show With Stephen Colbert)」で、ホストのコルベアがアニメーションのドナルド・トランプとヒラリー・クリントンにインタヴュウするという合成シーンを何度も撮っており、特に珍しいというものでもない。
とはいえ「サン・オブ・ゾーン」で描かれるアニメーションのゾーンは主人公であり、従って番組の8割から9割くらいの感じで画面に登場する。つまり番組のほとんどはアニメーション/実写合成で、さすがにこれだけの頻度で合成シーンが登場する番組は、これまでなかったと思う。
しかもなぜだかゾーンは南の島生まれの戦士で、普段は戦士らしく戦いに明け暮れ、相手を葬り去ることが職業という荒くれ男だ。それがなぜだか昔、島に来た実写の女性イディと一時の恋に落ちて息子を設けた。しかし所詮住む世界がまったく異なる二人の間がうまくいくわけもなく、今ではアニメーションの世界と実写の世界に別れて別々に暮らしていた。
しかし情に厚く息子思いのゾーンは、誕生日のお祝いにイディと息子アラン、イディの新しい恋人クレイグの住むカリフォルニアの高級住宅街、オレンジ・カウンティにやってくる。息子との絆を深めるのは今しかないと考えたゾーンは、アパートを借りて仕事を見つけ、O.C.にしばらく滞在しようとする‥‥という展開だ。
アニメーションと実写の登場人物が、当然のように画面を共有しているのが、なにやらおかしい。しかもアニメ・キャラであるゾーンは南の国の島の戦士であるからして、普段は上半身裸で、そのまま飛行機に乗ってカリフォルニアにやってくる。当然どこに行っても一悶着起こる。
既にティーンエイジャーになっている息子のアランは、そんなゾーンが実の父であることが恥ずかしい。イディも若気の至りでこんな男と過ち起こしたことを後悔しているようだが、起きてしまったことはしょうがない。一応ゾーンが父としてアランに接触しようとしているので、ここは一つ暖かく、あるいは半分は冷めた目で見守ってやるしかない。
常識のほとんど通用しないゾーンは、アランの誕生日のプレゼントとして、背に乗って空を飛ぶ大型の怪鳥を調達してくるが、しかしそんなもん、カリフォルニアに持ってこられても人々の邪魔になるだけだ。結局このプレゼントは受け取り拒否ということになり、処分に困ったゾーンは家先で怪鳥の喉先に剣を突き刺す。しかし図体のでかい怪鳥はゾーンといえども一撃で殺すことはできず、何度も何度も苦しむ怪鳥に刀を振り下ろし、殴り続けてやっと絶命させる。ガレージの前は血の海となり、クレイグはホースで水を流して血溜まりを清掃する。イディは傷心のアランにバスルームの外から大丈夫かと声をかけ、あんたはあんた、ゾーンとは違うんだからと慰めるが、しかしカメラが後ろに引いていくと、アランの足がアニメ化しつつあった‥‥
とまあ、ヘンにオフ・ビートで所々グロい。なにもこんなのをわざわざアニメーションでやらなくても、と思うが、だからこそアニメーションでやってみたいというのがポイントだろうから、そこを突っ込んでもしょうがない。ある意味、確かにキッチュな味が横溢していることは確かであり、ちょっと興味をそそられるのは事実だ。
ゾーンの声の担当しているのがジェイソン・サダイキス。主人公なのに彼だけは視聴者から顔を覚えてもらえない。実写で登場する人物はイディにシェリル・ハインズ、クレイグにティム・メドウズと、ヴェテラン揃い。気になるっちゃあ確かに気になる番組なのだった。