Sleepy Hollow

スリーピー・ホロウ  (1999年11月)

ティム・バートンが「シザーハンズ」、「エド・ウッド」に引き続きジョニー・デップを三度起用、ワシントン・アーヴィングの原作を映像化した新ファンタジー/ホラー。18世紀ニューヨーク郊外の集落、スリーピー・ホロウでは、夜な夜な馬に乗って現れ、住人の首を掻き切る「首なしホースマン (Headless Horseman)」が、人々を恐怖に陥れていた。ニューヨーク・シティで科学的犯罪捜査を常々主張してきた調査官アイカボッド・クレイン(デップ)は、ほとんど厄介者払いの体でスリーピー・ホロウに飛ばされる。それほど科学的捜査が役に立つのなら、人々を震え上がらせているこの事件を解決してみよというわけだ。しかし首のない人間など頭から信じていないアイカボッドは自分自身、刀剣を携えて馬に乗り、人間の首を掻き切る首なしホースマンを目撃してしまう。首なしホースマンとは一体何者なのか。人間か、幽霊か、化け物か、彼は何故現れ、何故人々の首を切り落とさなければならないのか‥‥


綺麗な映像で見せるファンタジー/ホラーである。小説だとこういうのを読もうという気にはさらさらならないが、映画だと見てしまう。デップはバートンの思わずにやりとしてしまうちょっとずれたユーモアと余程相性がよいようである。実際この作品を見てみると、シリアスでありながらどこかピントのずれている主人公の役柄(原作もこうなのかは知らないが)は、デップ以外には到底考えられない。デップも共演のクリスティーナ・リッチも、いわゆる美男美女の範疇に入るのだろうが、私には二人とも正統派の美形には見えない。こういうところもバートンの好みなのだろう。リッチは考えたらホラー・コミックの「アダムズ・ファミリー」が出世作だったし、最近現代物にも色々出ているとはいえ、古色蒼然たる、という形容詞がはまるような映画に合うようだ。


ミランダ・リチャードソンは少し老け役で、勿体ないと思うが、しかし熱演しており最後には見せ場もちゃんとある。それよりも私はこれにクリストファー・ウォーケンが出ているとは全然知らなかったので、彼が出てきた時にはびっくりした。しかも唸り声以外セリフがまったくないのにもかかわらず、あの怖美しい顔で充分びびらせてくれる。役者だなあ。以前ウォーケンが「サタデイ・ナイト・ライヴ」にゲスト出演していた時に、ウォーケンの母親が昔は彼は優しかったのに最近怖い役ばかりだねと言っていた、というのを聞いて笑った記憶があるが、あの顔だもの。しょうがないよな。「ディア・ハンター」みたいなセンシティヴな役をやる歳じゃなくなったし。それでもあなたならこれからも充分色んな役が回ってくるでしょう。頑張って下さい。それから、作品の冒頭で往年のヴァンパイア俳優、クリストファー・リーが特別出演しているという、過去のホラー映画への目配せも忘れていない。


一応この作品をジャンル分けするとファンタジー/ホラーということになるのだろうが、はっきり言ってまったく怖くない。これはガキじゃない限り誰が見ても同じ意見だろう。むしろ綺麗なファンタジー的な要素が強く、まるっきりのバートン・カラーで染まっている。おどろおどろしい舞台設定とは裏腹にまったく怖くないため、怖いもの見たさの観客からは一部不評を買ったようだが、私は多分そういう怖くないファンタジー/ホラーを狙い、まったくその通りに仕上げたバートンの演出力を高く買う。


それにしてもこの綺麗な映像を映し撮ったエマニュエル・ルベスキという撮影監督の名を私はまったく知らなかったのだが、調べてみたら「バードケイジ」、「大いなる遺産」、「ジョー・ブラックをよろしく」と、ちゃんとハリウッド作品を撮っているではないか。私の食指をそそらないところで活躍していたようだ。東欧系の名前のようだが、ハリウッドは伝統的に東欧出身の撮影監督が活躍するなあ。特撮はジョージ・ルーカスのインダストリアル・ライト&マジックが担当しており、首なしホースマンって、多分結構CGを多用していると思うのだが、ほとんど実写とCGの区別ができず、よく撮れているとしか言い様がない。映画撮影の技術進歩には驚くばかり。


一応この映画では首なしホースマンが現れる理由について、後半ちゃんと謎を解いて筋を通しているのだが、そこのシーンが何を言っているのかほとんどわからなかった。ただでさえこの頃(作品の山場)にはもう前半登場して死んだ人間の名前なんて忘れているのに、デップを筆頭に登場人物がわざわざ時代がかった言い回しをするのだから、あ、こいつはあそこで死んだ奴で、こいつは‥‥と考えているうちに置き去りを食ってしまった。はあ、まだまだ英語の勉強が足らんわ。


ところで、今回予告編で久し振りにトム・クルーズが出演する映画の予告編を2本見た。1本は「Boogie Nights」のポール・トマス・アンダーソン監督の「Magnolia」と、お待たせ、「ミッション・インポッシブル2」の予告編である。予告編で見る限り両方とも面白そうだったのだが、群像劇「Magnolia」が3時間を楽に超す長編であることを後で知って、一挙に見る気が失せた。それに引き換え、「ミッション・インポッシブル2」の方は、今回、御大ジョン・ウーが監督を務めるとあっていやが上にも期待は高まる。割りと短い予告編だったが、それでも充分に面白そうだと思わせてくれた。話の筋からしても、ブライアン・デ・パルマよりも思いっきりケレンで通すウーの方が合っていると思うし、クルーズもウー演出の方が見栄が決まるような気がする。来夏が楽しみである。 






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