Skyline


スカイライン  (2010年11月)

グラフィック・アーティストのジャロッド (エリック・バルフォー) はガール・フレンドのエレイン (スコッティ・トンプソン) と共にLAを訪れる。LAで成功している幼馴染みのテリー (ドナルド・フェイソン) から誘われたのだ。テリーと彼の恋人や友人たち夜を徹して痛飲した翌日、ジャロッドたちはテリーの高層マンションの外が何かものすごい光に包まれていることに気づく。それを見続けていると、最後には光に吸い込まれていってしまうのだ。彼らが、それが地球上に降り立ったエイリアンによるもので、既に地上ではほとんどの人間が殺されるか宇宙船に取り込まれてしまっていることに気づくのに時間はかからなかった。米軍が出動するが、ほとんど歯が立たない。ジャロッドたちはとにかくLAから脱出しようとするが‥‥


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近年のエイリアンと人類との接近遭遇ものは、エイリアンによる地球侵略ものであることが多い。人類とエイリアンがコミュニケイトしたりわかり合えたりする作品は、最近とんと見た記憶がない。


むろん昔だってエイリアンは基本的に敵として描かれていた場合が多かったという気がするが、それでもスティーヴン・スピルバーグの「E.T.」のように、エイリアンが必ずしも敵ではない場合もあった。そのスピルバーグですら、近年エイリアンを描かせると「宇宙戦争 (War of the Worlds)」のように、人類とエイリアンが戦う話になってしまう。


その他でも近年のエイリアンもので覚えている作品というと、最も人々の印象に残っているのは、たぶん「クローバーフィールド (Cloverfield)」だろう。ここまで人間がエイリアンに対して無力な作品というのは、これまでになかった。文明的に人類が圧倒的に劣っている「宇宙戦争」ですら、最終的に人類はエイリアンの侵略から免れ得るのだが、「クローバーフィールド」に至ってはそのように逃げ道はもはや用意されていない。


その他にも「インベージョン (The Invasion)」やTVシリーズの「V」等、人類に対して好戦的、というか、気がついたらのっとられている的な、陰湿な侵略ものが目につく。やろうと思えばそういう展開にできなくもなかったろう「地球が静止する日 (The Day the Earth Stood Still)」がそういう風にならなかったのは、ひとえに主演のキアヌ・リーヴスのおかげに他ならない。あれを他の役者が演じていたら、もっと陰惨な作品になったのは必須と思える。


少なくとも単純に敵ではない – 無力なエイリアンに対して人類が圧政を敷いているという「第9地区 (District 9)」という例外中の例外はあるが、彼らだって謀反を企んでおり、友好的な関係とは言えない。もはや人類とエイリアンは友好的な関係を築き得なくなったようだ。逆に言えば、人類こそが好戦的だからエイリアンに対してもそういう心証を照射した敵として造形してしまうとも言える。


もし、人類よりはるかに進んだ文明を持つエイリアンが存在するとして、まったく別の、しかも自分たちより劣っている生命体 – 人類 – に相対する場合、いきなり滅ぼすか支配しようとするか、あるいは友好的な関係を築こうとするかは、五分五分という気がする。本質的に好戦的な種であれば、文明を発展させるより先にまず自分たちが滅びると思うからだ。


実はこの映画を上映する前の予告編で、やはり人類とエイリアン対決型SFの「世界侵略:ロサンゼルス決戦 (Battle: Los Angeles)」が流れた。「スカイライン」もLAが舞台であり、ニューヨークが舞台だった「クローバーフィールド」に対する対抗心の現れみたいな気がする。


ところで「クローバーフィールド」に現れるエイリアンは、エイリアンというよりも実は怪獣にのりが近い。どちらかというと印象は「ゴジラ」だ。その「ゴジラ」も、暴れ回ったのはニューヨークだった。一方「スカイライン」も「世界侵略」も、LAに壊滅的打撃をもたらすのは空飛ぶ円盤、UFOだ。むろん先兵として「スカイライン」では、巨大怪獣ロボット的な物体が上陸したり空中を浮遊して人類を脅かす。


しかし大きな破壊力を持つのは円盤からの破壊砲、もしくは人類を掬い上げてしまう光の束であって、結局本体は自分たちは姿を見せず、高見の見物をしているという印象が強い。あのタコの怪物が本来の姿というわけはないだろう。あれはどう見ても単なる偵察ロボットだ。地に足をつけ、物理的に相手を殴ったり壊したりして叩きのめすNYと、直接手を下さずに距離を置いて科学力で圧倒するLA、エイリアンにも彼我の差はあるのだなと思ってしまう。


そういえば「宇宙戦争」でトム・クルーズはNYにいるくせに、円盤からの攻撃主体の「宇宙戦争」では舞台がすぐNYから外部に移動する。あるいは「地球が静止する日」では、巨大ロボットが降り立つのはNYのど真ん中のセントラル・パークだ。やはり遠くから攻撃するなら西海岸、降り立って破壊するならNYか。


「スカイライン」は「宇宙戦争」や「クローバーフィールド」同様、どうやら相手との力の差は歴然としていることがだんだんと知れる。ポイントはそこからどう落とすかで、「宇宙戦争」のように逆転サヨナラを持ってくるか、「クローバーフィールド」のように無情に終えるか。タネをばらすのもなんなので言及は控えるが、この種の作品はどんどん落とすのが難しくなってくる、というのが率直な感想だ。どっちに落としても観客からの文句が出そうだ。「スカイライン」もたぶん何通りもの終わり方を実際に撮って、最も試写で受けのよかった、あるいは文句の少なかった終わり方にした、みたいな印象を受ける。


出演は「24」に出ていたエリック・バルフォー、1シーズン限りで姿を消したNBCの「トラウマ (Trauma)」のスコッティ・トンプソン、「スクラブス (Scrubs)」のドナルド・フェイソン、「ロスト (Lost)」のニール・ホプキンス、「デクスター (Dexter)」のデイヴィッド・ザヤスら。アメリカのTVをよく見ていると馴染みのある顔が多い。演出は「AVP2 エイリアンズ vs. プレデター (Aliens vs. Predator: Requiem)」を撮った、グレッグとコリンのストラウス兄弟。








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