シング・ユア・フェイス・オフ   Sing Your Face Off

放送局: ABC

プレミア放送日: 5/31/2014 (Sat) 21:00-23:00

製作: エンデモルUSA

製作総指揮: ジョージー・ハットフォード-ジョーンズ

ホスト:ジョン・バロウマン

ジャッジ: デビー・ギブソン、ダレル・ハモンド、デイヴィッド・アラン・グリアー、ルポール、カーニー・ウィルソン、リチャード・シモンズ、トム・アーノルド、カーメン・エレクトラ

出演: ジョン・ロヴィッツ、セバスチャン・バック、チャイナ・アン・マクレーン、ランディ・フィールズ、リサ・リナ


内容: セレブリティによる物真似シンギング・リアリティ。


ライジング・スター   Rising Star

放送局: ABC

プレミア放送日: 6/22/2014 (Sun) 21:00-23:00

製作総指揮: ケン・ワーウィック、ニコール・ヤロン

製作: ケシェットDCP

ホスト: ジョシュ・グローバン

ジャッジ: ルダクリス、ケシャ、ブラッド・ペイズリー


内容: 視聴者投票による勝ち抜きシンギング・リアリティ。


_______________________________________________________________

一時無敵を誇ったFOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」人気も今では下火となり、かつてほどの勢いはない。しかしだからといって、勝ち抜き系の歌番組が編成されなくなったかというと、そういうわけでもない。NBCの「ザ・ヴォイス (The Voice)」は、今では「アイドル」を凌ぐ人気番組に成長しているし、グループ編成によるアカペラ勝負のNBCの「ザ・シング-オフ (The Sing-Off)」や、デュエットで歌うABCの「デュエッツ (Duets)」、出場者が一対一で勝負する「ザ・ウィナー・イズ‥‥ (The Winner Is…)」等、今でも新番組は、かつてほど頻繁というほどではないが、それでも大きく途切れることなく投入されている。


その最新例が、今回のABCによる2本の新番組、「シング・ユア・フェイス・オフ」と、「ライジング・スター」だ。「シング・ユア・フェイス・オフ」はセレブリティによる物真似歌合戦で、そこそこ知られたセレブリティが、有名シンガーの真似をしてどこまでうまく歌えるかを競う。


要は番組の印象で言うと、「アメリカン・アイドル」というよりも、ABCの勝ち抜きリアリティ、「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ (Dancing with the Stars)」に近い。歌のうまさそのものよりも、視聴者はセレブリティがどれだけ根性見せて本物に似せるよう努力したかの方を楽しむという印象の方が強い。出ているセレブリティも、セレブリティとは名ばかりの似非セレブリティばかりというのも、これまた「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」を彷彿とさせる。


「スターズ」と進行の点で大きく異なるのは、「シング‥‥」の場合、勝ち抜きで出場者を減らしていくというのではなく、毎回ジャッジの採点によって獲得したポイントを加算していって、最後の総得点によって優勝者を決める点にある。そのため、失敗することがあっても挽回のチャンスも残されている。出場者は、もちろん毎回異なるシンガーの真似をする。


因みにその参加者はジョン・ロヴィッツ、セバスチャン・バック、チャイナ・アン・マクレーン、ランディ・フィールズ、リサ・リナで、特に日本人で彼らが全員何者かを知っている者は皆無だろう。老婆心ながら注釈すると、ロヴィッツはかつてNBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturdau Night Live)」レギュラー、バックはロック・バンドのスキッド・ロウのシンガーで、マクレーンはディズニー・チャンネルの「天才学級アント・ファーム (A.N.T. Farm)」主演、フィールズはNBAのトロント・ラプターズのプレイヤー、リナはFOXの「メルローズ・プレイス (Melrose Place)」で知られている。


これらのメンツが毎回変装して別のシンガーになり切って咽喉を披露する。ここでのポイントは歌うことよりも変装という点にあり、いかにうまく歌うかではなく、いかに本物に似ているかという点にある。むろん本人のように上手に歌えればそれにこしたことはないが、如何せん視覚的インパクトの方が聴覚の印象より強い。こういう番組に出てくるくらいだから、皆そこそこ歌えるのだが、誰の真似をしたかを視覚的には覚えていても、歌自体はほとんど覚えていないのだった。


因みに第1回で出場者が扮したのは、ロヴィッツがエルトン・ジョン、バックがアダム・レヴィーン、マクレーンがリアーナ、フィールズがライオネル・リッチー、リナがドリー・パートン。ハリウッド技術の粋を施すわけだから、まったく似ているわけではないのがそこそこ雰囲気をうまくとらえて、それらしく見えるようになるところはさすがと言える。ただし、歌番組として見るとやはりそれ以上のものではない。それらしくなって会場に現れた時には観客を沸かすのは確かだが、歌い始めると退屈というのは如何ともし難い。それは歌うのが商売のバックにも言え、スキッド・ロウがマルーン5の歌を歌ってどうするという印象は拭い難い。


番組は既にシーズンを終えており、コンスタントに好成績を獲得したマクレーンが優勝している。やはり歌番組であるからには、見かけでなく歌で勝負してもらいたいと思うのだった。たぶん番組に第2シーズンはないだろう。


一方「ライジング・スター」は、イスラエル製番組のリメイクで、こちらはセレブではなく、一般人が出場する。ジャッジがいることはいるが、勝ち抜きは視聴者のライヴ投票で決まるというのが最大のギミック。第1ラウンドは足切りラインがあり、出場者が歌い終えるまでに70%以上の視聴者がYesと投票したら、次のラウンドに進める。第2ラウンドは今度は一対一のバトルになり、どちらか高い投票率を獲得した方が第3ラウンドに進む。第3ラウンドでは今度は残った出場者が全員歌い、Yes投票率が下の者から順次追放されていく。


出場者は周りをコンピュータ・スクリーンに囲まれた特設ステージで歌い、歌っている時にスクリーン上にYes投票をした者の画像がポップ・アップして現れる。歌い終わると巨大な壁状のスクリーンの一部が上がって外に出、そこでジャッジの批評を受ける。ジャッジはラッパーのルダクリス、ポップ・シンガーのケシャ、カントリー・シンガーのブラッド・ペイズリーだ。ケシャは思ったよりも出場者を思いやるコメントがやや意外。それよりも右上の糸切り歯が全面銀歯なのは、あれはオシャレのつもりなんだろうが、こちらとしては気になってしょうがない。また、ホストのクラシック-ポップ・シンガーのジョシュ・グローバンがこれだけ喋れるのも意外だった。歌を歌えなくてもこれで充分やっていける。


「ライジング・スター」出場者は、「アイドル」のように予選を通過してきたわけではなく、「ヴォイス」のようにセミ・プロをスカウトしてきたというわけでもないため、歌のレヴェルはこの3番組の中では最も劣るという印象を受ける。一方、最近家族に不幸があったり、本人がドラッグから立ち直ってきたり障害を持っていたり、大きな苦労をしていたりといった、尋常じゃないバック・グラウンドを持つ者ばかりで、よくこんなマンガや小説になりそうなキャラクターばかり揃えたなという感じだ。そういうドラマ性を重視したため、歌の実力の方は後ろに回したという印象は否めない。同様に素人のはずの「アイドル」の出場者の方が明らかにレヴェルが高い。第3ラウンドに入ってきても、素人の耳で聴いても、ちょっと音外してないかという場面が多々ある。


ここまで見てきた段階で優勝候補の筆頭は、ずばりジェシ・キンチだと思う。一見ソフトなタイプで、角度によっては長髪時代のスノウボーダーのショーン・ホワイトに似ている。歌うのは70-80年代ハード・ロックで、喋る声と歌う声の落差が印象的な上に声がいい。今年の「アイドル」で優勝したケイレブ・ジョンソンがこの時代のロックが得意で常に会場を沸かせたことを思い合わせると、ここでもキンチが勝つ可能性は非常に高いと思う。



追記: 2014年9月

「ライジング・スター」、優勝したのは私の予想通りキンチ。準優勝は健闘したオースティン・フレンチで、オースティンの場合はうまいはうまいが、人好きのするキャラクターも大きく物を言ったと思う。










< previous                                    HOME

 

Sing Your Face Off

シング・ユア・フェイス・オフ   ★★

Rising Star

ライジング・スター   ★★1/2

 
inserted by FC2 system