Silent Library サイレント・ライブラリ
放送局: MTV
プレミア放送日: 6/15/2009 (Mon) 18:00-18:30
製作: フラクチャード・ヒップ・プロダクションズ、MTV
製作総指揮: アダム・ドルギンス
製作: ステイシー・ハリック
ホスト: ゼロ・カザマ
内容: 日本テレビの「ガキの使いやあらへんで」内の人気コーナー「サイレント図書館」のリメイク。6人の参加者のそれぞれがカードを引き、ドクロ・カードを引いた者一人がバツ・ゲームに処される。騒音を出すことが禁じられている図書館の中で、うるさくすることなく様々なバツ・ゲームに耐えることで賞金を獲得する。
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今では若者向けヴァラエティ番組専門のMTVは、現在、以前よりさらに低年齢化、ヴァラエティ化しているように見える。むろん結構前からMTVは既に音楽チャンネルというよりは若者向けカルチャー・チャンネル化していたが、昨冬、プライムタイムに編成されていた最後の音楽番組「トータル・リクエスト・ライヴ (Total Request Live: TRL)」が最終回を迎えると、本当に深夜以外音楽番組がなくなった。
一方、最近のリアリティ・ショウ系番組は、他のチャンネルと較べて尋常じゃないくらい多い。特にケーブル・チャンネルは自分たちで勝手にある特定の時期に新番組をまとめて投入したりするが、MTVほど大量にリアリティ・ショウを一斉に編成するチャンネルも他にない。これが「ラグナ・ビーチ (Laguna Beach)」から「ザ・ヒルズ (The Hills)」、「シティ (City)」等に至る一連のリアリティ・ドラマ人気の影響であることは疑うまでもないが、おかげで、私のような中年男性はますますチャンネルと縁遠くなった。
因みにこのほどMTVが投入した新番組は、16歳で妊娠した女の子たちを特集する「シックスティーン・アンド・プレグナント (16 and Pregnant)」、英国のモデル上がりのアレクサ・チャンがホストのトーク/ヴァラエティ「イッツ・オン・ウィズ・アレクサ・チャン (It’s On with Alexa Chung)」、インターネットの面白ヴィデオ紹介アニメーション「DJ・アンド・ザ・フロー (DJ and the Flo)」、女性を食い物にする男 (ドゥーシュバッグ (Douchebag) と呼ばれる) とその男に貢ぐ女性のカップルをとらえる「イズ・シー・リアリー・ゴーイング・アウト・ウィズ・ヒム? (Is She Really Going Out with Him?)」、そして「サイレント・ライブラリ」で、特に後者4本は一斉に同じ日に放送が始まるなど、新番組ラッシュを印象付けた。
これらの番組の中で最も異質なのが、何あろう「サイレント・ライブラリ」だろう。なんせ最初業界誌の番組紹介を読んだ時には、いったいこれがどういう番組なのか、さっぱり見当もつかなかった。せいぜいが図書館の中で各種ゲーム/体力テストをする、みたいにしか書かれてなくて、たぶんこれを書いた人も、実際に番組を見たことがあるわけではないので、ほとんどMTVのプレス・リリースを鵜呑みにしたか半分は類推で書いたに違いない。流行りの勝ち抜きゲーム・リアリティかと予測するのが関の山だったろう。番組タイトルの静かな図書館というのは? 当たり前すぎて何が言いたいのかよくわからない。
それが日テレの「ガキの使いやあらへんで」内の人気コーナー、「サイレント図書館」のリメイクであることを知ったのは、かなり後になってからだった。昨年もこんな感じでSci-Fi (現在チャンネル名改めSyFy) の「チェイス (Chase)」を見て、日本向きのリアリティ・ショウだなと思っていたら、その日本の番組、フジの「Run for Money 逃走中」のリメイクだったことを後で知った。最近日本のリアリティ・ショウのリメイクが増えたので、こんなことも起こる。
ついでに言うと、前からやるやると言っていた日テレの「マネーの虎」も、このほど「シャーク・タンク (Shark Tank)」というタイトルでABCで放送されることがやっと本決まりになった。G4は、ついにアメリカ版「SASUKE」こと「ニンジャ・ウォリアー (Ninja Warrior)」製作に乗り出すなど、まだまだ日本製リアリティ・ショウのリメイクは続いている。日本製番組のリメイクでこそないが、絶対次はないと思っていたABCの「アイ・サヴァイヴド・ア・ジャパニーズ・ゲーム・ショウ (I Survived a Japanese Game Show)」の第2シーズンも今夏放送中だ。
さて「サイレント・ライブラリ」であるが、まず最初に、ほとんどオリジナルの内容を知らないままリメイクを先に見てみた。そしたら結構お下劣ではあるが笑える番組に仕上がっており、なかなか受けた。うちの女房も一緒に見たのだが彼女も結構げはげはと笑っていたところをみると、それなりに成功しているリメイクなのではないか。女房は私が前知識を仕込まずにこんな新番組があるといって見せ始めたので、何この番組、スパイク、それともG4? と言っていた。まさかMTVだとは考えもしなかったようだ。実際、スパイクの番組は体力系が多いし、G4には「ハール (Hurl)」という最近のお下劣系では断トツの番組もあるし、私も知ってなかったらこれがMTV番組だとはよもや思うまい。
そして今度はYouTubeで日テレのオリジナルを見てみた。そうすると、かなりオリジナルに忠実にリメイクを製作していることがわかる。バツ・ゲームの内容やそれに挑む人数、図書館の雰囲気などまずまずオリジナルにそっくりだ。
一方、オリジナル (以降「図書館」) に忠実なのはそこまでとも言える。なによりもオリジナルと本リメイク (以降「ライブラリ」) において最も異なっているのは、「ライブラリ」には「図書館」にはないホストが存在すること、そしてそのホストが、無事、チームとして参加している参加者 (毎回変わる) が音を立てずにバツ・ゲームを完遂できたかを判断して、それによって賞金を与える点だ。最初の数回のラウンドでは、図書館内の周囲の者に迷惑を与えずバツ・ゲームを完遂したと判断されたら300ドル、次は400ドル、最後は倍々ゲームで1,000ドルという風に、掛け金が上がっていく。
金がかかっているため、やる方もマジだ。でこピン、往復びんたをほんの1分間我慢すれば300ドルもらえるとならば、だいたいの者は喜んでやるだろう。「図書館」と「ライブラリ」が最も似て非なる点はそこだ。あるいはその点があるため、結局番組は別物になってしまったとさえ言える。つまり、「図書館」ではドクロを引いた者はほとんど戦々恐々という感じでバツ・ゲームに臨むのに対し、「ライブラリ」ではドクロを引いた者は率先してという感じでバツ・ゲームに挑戦する。この難題を無事成し遂げれば、賞金をもらえるチーム内のヒーローなのだ。
ある回では酢を飲ませるというバツ・ゲームがあって、それを実際にやった奴よりもそばで見てたやつの方がその匂いに弱かったらしく、一緒になって吐いていた。そういう時に限って、そういう臭いに敏感なやつに、ブルー・チーズで作ったチーズ・ケーキを平らげるというカードが当たる。そいつはもう、臭いしただけで涙目で吐きそうになっているのだが、それでも一口食っては吐き、また一口食っては吐いて食べていた。金がもらえるからだ。他の者も大同小異で、とにかく自分が頑張れば金がもらえるので、ババを引くとそりゃ一瞬ぎょっとするが、それでもすぐ気持ちを切り換えてバツ・ゲームに挑戦する。どのチームも番組の最後にはだいたい数千ドルを稼いで帰っていく。
一方「図書館」では、単純にバツ・ゲームとしてそういう難題を強制される。やり遂げたからといって金や褒美がもらえるわけでも誉められるわけでもない。だからできれば本当にやらないで済むならやらずに済ませたい。気持ちはほとんど逃げている。そこを周りの者が羽交い絞めにしたり押さえつけて、泣かんばかりの者を有無を言わせずバツ・ゲームを強制するのだ。時には本当に泣いたり怒ったりしている。そこが面白い。つまり、面白さのベクトルとしては「図書館」と「ライブラリ」はまったく逆だ。「図書館」が見る者の嗜虐的快感を喚起するとするならば、「ライブラリ」はむしろ逆境に挑戦するスポーツを見る感覚に近い。
あるいはそれこそ、かつてMTVが放送して人気を得たおちゃらけ挑戦番組「ジャックアス (Jackass)」と言えるか。MTVのこの路線は現在でも続いており、「ジャックアス」が進化 (退化?) した「ワイルドボーイズ (Wildboyz)」や、「ロブ・ドライデックス・ファンタジー・ファクトリー (Rob Dyrdek's Fantasy Factory)」、「ナイトロ・サーカス (Nitro Circus)」等は、明らかにこの路線の延長線上にある。特に「ジャックアス」と「ワイルドボーイズ」から「ライブラリ」までは、ほんの数歩しか変わらないという気がする。
また、一方で今回のリメイクを見て思い出したのが、かつてABCが製作した「未来日記」のリメイク、「ザ・デイティング・エクスペリメント (The Dating Experiment)」だ。「未来日記」はあらかじめ描かれたシチュエイションに沿って参加者が行動し、そこに本当の恋が芽生えるかどうかを確認する番組だった。自分の意思とは無関係に設定されたシチュエイションに対し、気持ちは抗いながらもその通りに行動することで揺れる感情の発露にこそ見所があった。それが「エクスペリメント」では、参加者が日記に書かれたことを喜んで遂行しようとするだけでなく、ショウを面白くしようとそれ以外のよけいなことまで率先してやろうとして、逆に番組の妙味をなくしていた。
さらに、一番最初に「料理の鉄人」を「アイアン・シェフUSA (Iron Chef USA)」としてリメイクした時も似たような感触を受けた。UPNが放送したこの番組は、あれはどう見てもスポーツ中継だった。つまりアメリカで日本製リアリティ・ショウをリメイクすると、どうもスポーツ化してしまうようなのだ。
他に微妙な差だが、「図書館」ではまず本日のお題、つまりバツ・ゲームの内容を先に発表して、それに対して各自これは絶対嫌だとか考えながらカードを引く。そうやって誰がドクロを引くかということがまた面白かったりする。一方「ライブラリ」では、まず最初に誰がドクロを引いたかを確認した後で、バツ・ゲームのお題発表になる。もうお前がやるんだよと決めて逃げられないように指名しておいて、さああんたがやることは? となる。これって、まるでスポーツのドラフトで注目プレイヤーに対し、さて、ではあんたを指名した球団やチームは? と発表する指名発表を見ているみたいではないか。
まったく関係ない話だが、私は近年はほとんど本はミステリ関係しか読まない。今たまたま読んでいるのが、創元社の森谷明子の、図書館を舞台とする「れんげ野原のまんなかで」だったりする。いわゆる日常の謎系のミステリなのだが、「図書館」や「ライブラリ」を見た後で「れんげ野原」を読むと、同じ舞台でありながらまるで違う世界に痛く興趣を刺激されるのだった。図書館は読書する場というだけではなかったのだ。
