Siberia  シベリア 

放送局: NBC 

プレミア放送日: 7/1/2013 (Mon) 22:00-23:00 

製作: インフィニティ・フィルムズ、ウェルダン・プロダクション 

製作総指揮: マイケル・オホヴェン 

クリエイター: マシュウ・アーノルド 

出演: ジョイス・ギロード、ジョニー・ワクター、エスター・アンダーソン、ミリアン・ミロセヴィッチ、ダニエル・サットン、ニーコ・スカーヴィン、アイリーン・イー、サム・ダビンズ、サブリナ・アクメドヴァ、ナタリー・シーツ、アン-マリー・ミュースケ、ヴィクトリア・ヒル、ジョージ・ディクソン、トミー・マウンテン、バーグリンド・アイシー、ハープリート・ターカ、ジョナサン・バックリー (ホスト) 

  

物語: シベリアの山奥に目隠しをされた16人の男女が到着する。これからTV局 が企画した勝ち抜きサヴァイヴァル・リアリティ・ショウを収録するためだ。そこはかつて入植者が全員一晩のうちに忽然と姿を消したという曰くつきの場所だった。その山小屋で、それぞれ一癖も二癖もある面々が共同生活しながらサヴァイヴァル・ゲームを始める。しかしすぐに事態は思わぬ方向に転じ始める‥‥


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Siberia


シベリア   ★★1/2

最初「シベリア」 -- アメリカ風に言うと「サイベリア」 -- は、番組がドラマかリアリティ・ショウかということを意図的にぼかしていた。番組の骨格はCBSの「サバイバー (Survivor)」に代表されるサヴァイヴァル系勝ち抜きリアリティで、それをシベリアの人里離れた山奥で行う。 

  

特に目新しくもなんともないお膳立てで、一見しての印象はまさしく「サバイバー」以外の何ものでもない。ところが番宣コマーシャルを見ると、そこに何か尋常じゃない事件が起こり、参加者が怖ろしい目に遭うという展開になるようだ。 

  

ただしそれが、筋書きに則ったドラマとして起こる事件なのか、それともリアリティ・ショウの中で本当に起こった事件なのか、その辺が判然としない。その辺り をわざと意図的にぼかして番宣コマーシャルを作っているからだ。これが知られている俳優とかを起用しているのならドラマだなとわかるんだが、作り物としても知らない者ばかりなので、どっちとも言えない。 

  

現実に番組が始まってからも、しばらくはやはりこれがリアリティ・ショウなのかドラマなのかよくわからない。シベリアの山奥に番組参加者および撮影クルーの一行がヘリコプタで到着する。しかし番組の進行自体が、番組ホストが登場し、参加者を紹介し、ルールを説明するという一般的な勝ち抜きリアリティ・ショウ の進行に則っているため、これがリアリティ・ショウかドラマなのか断定できる要素がない。 

  

優勝賞金がドルではなく50万ユーロだとか、参加者はアメリカだけではなく世界各地から集められ、いったんロンドンに集まってから連れて来られたとか、この場所は1908年に入植者が一夜にしていずこへともなく消えた曰くのある場所だとか、ヘンに細部に細かいため、なんとなく実際のリアリティ・ショウのような気もしないではない。果たしてこれはドラマかそれともリアリティか。 

  

一番最初にこれはドラマだなという方向に針が大きく振れるのは、プレミア・エピソードの終わりの方で撮影クルーの一人が何か明らかではない理由で大怪我を し、さらに参加者の一人であるトミーも死んでしまうというもので、そこでホストが登場し、死者が出た、番組を続けるか一時金をもらって辞めるかはあなたたちの自由と告げる。 

 

さすがにそれはないだろう。本当に死者が出たとしたら、これがリアリティ・ショウなら道義上の観点からも撮影はそこで終わるだろう。死者が出た、番組を続けるかはあんたの自由って、そりゃない。その直後のプレミアの幕切れは、トミーが事故だか襲われたかした時、一緒にいて怪我をしたカメラマンが落としたカメラがとらえた映像が、そのまま次回に続くとなる。やはりホラー・ドラマだったか。 

  

となると、リアリティ・ショウに出演中の参加者がのっぴきならぬ事態に巻き込まれるという点で、思い出すのは3年前のBBCアメリカの「デッド・セット (Dead Set)」だ。この手の番組に参加する徹底した自己中どもに制裁を加えるというシチュエイションの「デッド・セット」に喝采を送った者は私を含めかなりいたと思うが、結局番組は参加者を主人公にしてしまった。ま、それでも最後には全滅の様相を呈してはいたが。 

  

「シベリア」では、「デッド・セット」とは異なり、ゾンビは出てこない。少なくとも現在の段階では。しかし彼らが撮影を行っている山奥には、どうやら何者かが 存在し、彼らを快く思っていない節が見受けられる。それはいったい何者なのか。人狼かカルトの残党かそれともエイリアンか。 

  

という展開で今度は思い出すのは、ABCの「ロスト (Lost)」だ。どことも知れない未開の地で、得体の知れない何者かに始終見張られている。彼らは敵か見方か。もちろん「ザ・ハンガー・ゲーム (The Hunger Games)」だって忘れていない。時々ラッパみたいなサイレンが鳴って、様々な情報や道具を小出しに提供して参加者内の競争を煽る。そういう色々なTV、映画から集められた諸々の要素のごった煮が、「シベリア」だ。 

 

現在番組はどんどん事態が悪化しており、外部から隠れて参加者を監視しているはずの撮影隊のベイス・キャンプが荒れ放題となって無人化しており、参加者はもう途中リタイアする道も閉ざされてしまったという状況に追い込まれている。果たして番組は、どうやって話を収束させるつもりだろうか。 




追記 (2013年9月)


(注) 最終回の展開に触れています。


特に人気があったわけではないが、それでも細々とながらキャンセルもされずに一応所定のエピソード数の放送を終えた「シベリア」、実はその終わり方は決して納得できるものではなかった。


収録しているという設定のリアリティ・ショウの舞台がシベリアの山中であり、そこで数々の異常な出来事が起こる理由が、かつてロシア軍がそこで行っていた秘密実験と関係があったという設定は、「ロスト」ではないがむしろ常套で、そんなもんだろうとは思っていた。


しかし、無人化していた町にたどり着いた番組参加者の一行が、そこでどこぞへと姿をくらましたはずの番組ホストと遭遇し、そこで彼が参加者に向かってあんたたちはここにいるべきではないと告げて終わりというのは、いくらなんでもあんまりだ。結局これでは何も解決もしていない。要するに最初から番組がもしそこそこ人気を得て第2シーズン製作ということになる可能性を踏まえて、引っ張った終わり方をしている。


しかしこれでは、これまでつき合ってきた視聴者になんのカタルシスも与えず、ただただフラストレーションを与えるだけで終わっている。実は今夏こういう終わり方をしたのは、なにも「シベリア」だけではない。CBSの「アンダー・ザ・ドーム (Under the Dome)」も、やはり最終回になっても疑問や事件は解決されたとは言えず、なんともフラストレーションの溜まる終わり方になっていた。


こちらの方は思惑通りに成績もよく、第2シーズン製作が決定したため狙いが功を奏したが、もしそうじゃなかったらやはりこちらも尻切れトンボのまま終わった可能性があった。時間と労力と才能をつぎ込んだ番組が人気を得て製作が継続されるのは喜ばしいことだとは思うが、それを見込んでいたずらに思わせぶりな終わり方をするのは止めてもらえないだろうか。長い目で見て視聴者のためにも業界のためにもならないと思う。











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