シェイズ・オブ・ブルー   Shades of Blue

放送局: NBC

プレミア放送日: 1/7/2016 (Thu) 22:00-23:00

製作: ヌイオリカン・プロダクションズ、EGTVプロダクションズ

製作総指揮: ジェニファー・ロペス、ライアン・シークレスト、バリー・レヴィンソン

出演: ジェニファー・ロペス (ハーリー・サントス)、レイ・リオッタ (マット・オズニアク)、ドレア・デ・マテオ (テス・ナザリオ)、ウォレン・コール (ロバート・スタール)、ダヨ・オケニー (マイケル・ローマン)、サラ・ジェフリー (クリスティーナ・サントス)


物語: ニューヨーク、ブルックリン。シングル・マザーでコップのハーリーと新人コップのマイケルはペアで聞き込み調査中、先にアパートに入ったマイケルがヴィデオ・ゲームの音をカン違いして発砲、容疑者を射殺してしまう。ハーリーは咄嗟に容疑者の銃を発砲して先に撃たれたから撃ち返したという状況を捏造し、マットに相談する。マットは地元ギャングから上納金を受けとって仕切っているダーティ・コップだったが、彼の庇護のおかげでハーリーは一人娘のクリスティーナを金のかかる私立の学校に入れて音楽を習わせることができた。しかしFBIの内部調査機関による汚職調査の手が伸びてきており、ハーリーはまんまとロバートが仕掛けた罠にはまる。ロバートはハーリーに、マットを逮捕するために協力するよう迫る。一方マットもFBIの手がすぐそばまで伸びてきていることを悟り、最も信頼しているハーリーに、なんとしてもスパイを見つけ出して処分しなければいけないと考えていた‥‥


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Shades of Blue


ブルックリン警察 -内部告発- (シェイズ・オブ・ブルー)  ★★1/2

考えたら、ジェニファー・ロペスが役者としてTV番組に主演するのは、ポップ・スターとして名前が売れて以降は、これが初めてだ。元々は90年代にシットコムの「イン・リヴィング・カラー (In Living Color)」でジム・キャリーと共演していた時代もあったが、映画と音楽が活躍の中心となってからは、TVからは遠ざかっていた。


しかし、音楽はともかく映画スターとしては今一つぱっとせず、そういう時に、FOXの人気リアリティ「アメリカン・アイドル (American Idol)」のジャッジとして、またTVに復帰してきた。わりと参加者寄りのインティメイトなコメントを発するロペスは、こう言ってはなんだが意外によく、「アイドル」のジャッジとして定着した。


「アイドル」ではジャッジとしてだけでなく、その容姿でも視聴者を楽しませてくれた。ロペスは美形ということだけに留まらず、顔の輪郭も整っている上、髪質もいいのだろう、何を着てどんな髪型をしてもどんなメイキャップをしても様になる。髪をアップにするとゴージャスになり、降ろすと可愛い。オーディションで感嘆した参加者が自分はジャッジされる方だというのも忘れて、あんたはとても綺麗だと男性からだろうが女性からだろうがあれほど言われたジャッジは、後にも先にもロペスだけだ。NBCの「ザ・ヴォイス (The Voice)」ジャッジの一人シャキーラもこんな感じで、いや、美人って何しても似合って得だよなと思わせる。


そのロペスが、役者としてはドラマよりコメディの方に印象的なのが多いのは、たぶんあの声のせいではないかと思う。歌っている場合はともかく、多少キンキンしているロペスの地声は、シリアスなドラマには今一つ向かない。ターセムの「ザ・セル (The Cell)」がドラマでこれまで最も印象的だったのは、ほとんどセリフがなく視覚勝負に徹していたからだ。


そのロペスが今回、久し振りにTVの、それもドラマに帰ってきた。時をほぼ同じくして「アメリカン・アイドル」の最終シーズンも始まった。ついこないだは、CBSの深夜トークの「ザ・レイト・レイト・ショウ・ウィズ・ジェイムズ・コーデン (The Late Late Show with James Corden)」の人気コーナー、カー・プール・カラオケを集めたプライムタイムの特番で、ロペスが目玉として出てきていた。今、ロペスの露出度は非常に高い。


「シェイズ・オブ・ブルー」は、冒頭、新人コップのマイケルが、ヴィデオ・ゲームの拳銃の音に思わず反応して発砲して容疑者を殺してしまう。ロペス演じるヴェテランのハーリーはそれをカヴァーアップして、容疑者が撃ってきたから身を守るためにこちらも撃ち返したという状況を捏造する。少し状況は異なるが、ニューヨークでつい最近、ハウジング・プロジェクトにいたアジア系の警官が、暗い階段で物音がしたために思わず発砲し、たまたま居合わせた丸腰の黒人少年を射殺するという事件があった。


アメリカでは犯罪者は銃を持っている場合が多いから、警官も過剰反応になりがちで、番組のように、丸腰の相手を思わず撃ってしまったという事件が実際に起きる。つい2、3日前には、あるアパートを訪れた警官が、喜んでじゃれついてきたイヌに対して、襲ってきたものとカン違いして発砲して射殺したという事件もあった。可哀想に飼い主は泣き崩れていた。


番組のように相手がドラッグに関係していた場合、発砲してしまった警官が事態を捏造しようとするのがないこともないだろうという気は、確かにする。上述の黒人少年を撃ち殺した警官は、有罪判決が出たにもかかわらず、実質上の刑務所入りはないそうで、それがまた人種差別だのなんだのと問題になっていたが、それはまた別の話だ。


いずれにしてもここでのロペスはティーンエイジャーの娘がいる女性刑事ハーリーで、しかも悪事に手を染めている。シングル・マザーのコップが娘を金のかかる私立の学校に通わせようとするならば、綺麗事だけでは生きていけない。いい感じで疲れた感じが出ているが、まだもうちょっとやつれさせてもいいと思う。美形であればあるほど、懈怠感や疲弊感が出ると、逆に退廃的な色気が増す。そのハーリーが頼る悪事の親玉マットに扮しているのが、レイ・リオッタだ。「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ (The Place beyond the Pines)」みたいな悪徳警官で、こういう役をやらせるとはまる。


こないだ、USAの「コロニー (Colony)」で、今シーズンのアメリカのドラマは、組織に裏切り者がいて誰が味方で誰が敵かわからないような番組ばかりと書いたのだが、「シェイズ・オブ・ブルー」もその例に漏れない。なんてったって主人公からしてFBIと裏取り引きしているのだ。正と悪の概念、線引きは、ますます曖昧になりつつある。


ニューヨークを舞台にした刑事ものというと、現在ではCBSの「ブルー・ブラッズ (Blue Bloods)」、およびNBCの「ロウ・アンド・オーダー: 性犯罪特捜班 (Law & Order: Special Victim’s Unit)」が双璧という感じだが、実はここ数年、舞台がマンハッタンからブルックリンに移りつつある。コメディのFOXの「ブルックリン・ナイン-ナイン (Brooklyn Nine-Nine)」、キャンセルされてしまったがNBCの「タクシー・ブルックリン (Taxi Brooklyn)」、そして「シェイズ・オブ・ブルー」と、刑事ものもブルックリンが流行りのスポットになりつつある。現在、マンハッタンから川を挟んでブルックリンと正反対の側のニュージャージーに住んでいる私としては、なんとなく歯がゆい。


ところで、このサイトでは、既に日本で放送されているもの、放送予定があるものをわざわざ私が書くまでもあるまいと思っているので、そういうのは意図的にパスしているのだが、今回、書き終わってアップする前にロペスのフィルモグラフィをAllcinemaでチェックしていて、「シェイズ・オブ・ブルー」が「ブルックリン警察 -内部告発-」として挙がっているのを見つけて驚いた。断言するが、つい2、3日前に同じページをチェックした時には、「ブルックリン警察」の「ブ」の字もなかったのだ。しかも提供はHuluだという。日本で提供予定があるならあると最初から言ってくれれば、私もわざわざ書かなかったのに。骨折り損の気分。











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