ほぼ定期的に意表をつくスタントに挑戦して話題を提供するデイヴィッド・ブレイン、今夏NYはリンカーン・センターで息止め世界記録に挑戦したことも記憶に新しいが、今回はタイムズ・スクエアで3日間手足を拘束されたまま宙吊りになった後、縄抜けするという。なんでも大手小売りチェーンのターゲットと共同で、無事スタントを成功させた後はチャリティとして、選ばれた子供たちと共に一緒にターゲットで買い物をするという予定まで入っているそうだ。

いずれにしても今夏、リンカーン・センターをタイムズ・スクエアと間違えて生ブレインを見損ねていたので、今回、まあ息止めの時ほどでかいイヴェントではないが、まあ見に行ってみようかと思って、その時期を見てげんなりする。要するに、年間を通して最も人がショッピングに精を出すこの時期だからこそのこのスタントなんだろうが、よりにもよって感謝祭の直前だ。その上タイムズ・スクエア、地元ニューヨーカーのショッピング客ばかりでなく、全米からの買い物客、観光客が集まってくる。

私は何が嫌いかといって、自分のペースで歩けない混雑ほど嫌いなものはない。本当にイライラしてしょうがない。そのためいつでも人でごった返しているタイムズ・スクエアとチャイナ・タウンは、いつもなら足を向けない避けたい場所の筆頭だ。それなのに、たぶん年間で大晦日のカウント・ダウンの次に混雑するこの時期のタイムズ・スクエアなんて、なんの因果でわざわざあそこまで行かなきゃならないのかと思ってしまう。

それでどうしようかと迷っていたのだが、幸いなことにと言うかなんというか、女房がちょうどその時にタイムズ・スクエアの近くに用事があり、様子を見て来ようかと言う。それはもう、是非ともとお願いして一人だけ送り出したのだが、うちの女房にしたって私同様、かなり人混みは嫌いな方だ。それでタイムズ・スクエアでブレインはどこかと探しているうちに人混みに酔って気持ち悪くなってきたと言って、結局ブレインは見れずに帰ってきてしまった。

今回のブレインのスタントは、どう見てもいつもより小粒で、リンカーン・スクエアで一週間水中で暮らしたり、ロンドンで一と月以上飲まず食わず暮らしたり、タイムズ・スクエアで氷の中に3日間閉じ込められたりといった、ブレインがこれまでにやってきたスタントと較べると、話題性が小さい。だからこそタイムズ・スクエアといっても、本当にタイムズ・スクエアのど真ん中ではなく、45丁目かなんかの路地に入った人目につきにくいところでやっている。それなのに人出だけはやたらとあるから、正確に最初から場所を知っていないと、タイムズ・スクエアというだけでは探せない。

だからうちの女房も、行けば人がたかっているからわかるだろうと簡単に考えていたのに結局探しきれなかったわけだ。その辺を歩いている人に訊ねようにも、ほとんどはブレインのスタントなんか知らない買い物客か観光客ばかりだ。その上ブレインが吊り下げられた後からは雨模様となり、篠つく雨が降り止まない。それで私も、いつものブレインのスタントに較べると小粒な今回のスタントをわざわざ見に行く気をなくしてしまった。

もちろん小粒とはいっても、この冷え込んだ時期に丸一昼夜以上手足を動かすことができないまま拘束具で手足を縛られ、しかも雨が体温を奪う。本人の動きがないから見かけが地味なわりには、実は人体にかかるストレスや負担は、これまでにブレインが行ってきたスタント同様かなりのものになるはずだ。ブレインがやっているからこそ簡単そうに見えるが、普通の人間がやったら死にかねない。

そういうことをつらつらと考えながら、窓の外を止まずに降る雨を見て、今回も生ブレインを見に行くことは諦めたのだった。今回はネットワークのABCではなくターゲットが協賛のためTV特番がなく、ウェブとTVのニューズくらいでしか進行の状況を確認できなかったのだが、それでもブレインは無事、ちゃんと予定通りに2日目に拘束具から脱出して、子供たちを連れてショッピングへと趣いたそうだ。まあ、ブレインのことだ、拘束具からの脱出なんてのは朝飯前で、いつでもできたろう。次あたりは私の住むクイーンズで何かやってくれないかなあ。




 

David Blaine Shackled    デイヴィッド・ブレイン・シャックルド

2006年11月21日-11月23日

 
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