放送局: Sci-Fi

プレミア放送日: 4/4/2003 (Fri) 22:00-23:00

製作: ハロック・ヒーリー・エンタテインメント

製作総指揮: スコット・ハロック、ケヴィン・ヒーリー

共同製作総指揮: マイク・ハーニー

共同製作: リーフ・サンダース

ホスト: シャネン・ドハーティ


内容: 超常現象やホラー、オカルトの類いで相手を怖がらせる「ドッキリカメラ」。


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近年のアメリカTV界を覆うリアリティ・ショウ・ブームの波は、地上波のネットワークだけでなく、ケーブル・チャンネルにも及んでいる。そのケーブル・チャンネルでも、さらに、いわゆるマニアや特定の視聴者層を対象に展開するニッチ・チャンネルまでもが、リアリティ・ショウに食指を伸ばしている。


SF番組専門のSci-Fi (サイ-ファイ) チャンネルもその一つで、数年前から、死んだ人間の霊と交信するというトンデモ系リアリティ・ショウの代表である、「クロッシング・オーヴァー・ウィズ・ジョン・エドワード (Crossing Over With John Edward)」というトーク番組を放送している。私に言わせると、到底真面目に見る気になんかなれないキワモノ系の代表であるが、この番組、カルト的評判を呼んで、Sci-Fiどころかシンジケーションでも放送されるようになった。私ゃ毎週毎週死んだ人間の霊界からの声を聞こうとはまるで思いませんが。


今回Sci-Fiが放送する新リアリティ・ショウ「スケア・タクティクス」は、今度は超常現象系で人を驚かそうという、「ドッキリカメラ」的番組だ。「スケア・タクティクス (Scare Tactics)」とはれっきとした戦略用語で、文字通り「威嚇戦術」、つまり、はったりをかまして相手を脅えさせる戦術のことだ。番組ではただ驚かすというよりも、エイリアン襲来や殺人犯登場というありえなさそうな設定で、徹底的に引っかける相手を怖がらせようとする。


その栄えあるプレミア放送の最初のいたずらは、いかにもSci-Fiらしく、エイリアン・アブダクション - エイリアンによってさらわれそうになるというシチュエイションで目指す相手を怖がらせる。ブラインド・デイトのカップルとその友人の男の二人、計4人が夜中のパーティに車に赴く途中、いきなり人も車もない砂漠のど真ん中で、車がエンコしてしまう。どこからともなく頭上を光が覆い、そして巨漢のエイリアンが出現、ドライヴァー側のドアを引っぺがし、ドライヴァーを外に放り投げる。もちろんこのドライヴァーとナヴィの二人は共犯で、後ろに座っているカップルの二人が目指す怖がらせる相手なのだが、男の方は肝を潰した挙げ句、女の子を車の中に置き去りにして一人だけとっとと逃げ出してしまう。女の子の方も、カップに入ったソーダを飲んでいたのだが、それを中身共々振り回して絶叫する。いや、なかなか笑わせてくれます。


その他のいたずらは、山中の射撃場で、なんでもプラズマがなんたらかーたらというレーザー砲みたいな新種の武器の試験に誘われた男が、あまりにも威力が大きいので、間違って助手を殺してしまうというもので、そういう新種の武器の試射に素人が呼ばれるわけがないことにまったく気づかないこのバカな男は、騙されて当然。その次は霊園で働いている北欧からアメリカに来たばかりのあまり英語の達者でない男が、冗談で棺桶の中に入って出られなくなった女の子 (もちろん共犯) をどうにかするために助けを呼びにいったら、その間に棺桶は既に埋められていたというもの。


最後は定番のキャンプもので、「13日の金曜日」よろしく、若者だけがキャンプしている森の中のキャンプ小屋に、ジェイソンのような殺人者が現れるというシチュエイションを再現する。何人もの人間が共謀してたった一人を引っかけるもので、引っかけられる女の子だけが、一瞬、夜の窓の外を、マスクをして刃物を持った男が通り過ぎるのを目撃するという、凝ったシチュエイションが思わずにやりとさせてくれる。その後、どれどれと皆して大きな窓ガラスに近寄った時に、待ってましたとばかりにジェイソンの登場で、女の子が恐慌をきたして手を痙攣させたようにばたばた振るところなんか、これまた大いに笑わせてくれる。


番組の第2回もまずキャンプもので幕を開ける。今回の悪役はジェイソンではなく、雪男 (いわゆる欧米ではビッグ・フットと呼ばれているやつ) だ。最初、遠くの方でさり気なく姿を現すビッグ・フット。引っかかり役の女の子がよく見ようとトレイラーの窓に顔を近づけると、いきなり至近距離からガオーッと驚かすという寸法。ぎゃーぎゃー悲鳴を上げて脅える女の子を前に、内情を知っている友人は思わず顔を両手で覆って伏せってしまう。もちろん笑いを必死に押し隠そうとしているわけだが、大声で叫んでいると、笑っているのか脅えているのか泣いているのかわからない。確かそういうトリックが横溝正史の「獄門島」かなんかにあったなあ。


新種の心臓の検査試験を試すために、50ドルのバイト代で被験体になることを軽い気持ちで引き受けた男のやつもなかなか面白い。病院で身体中にチップをつけて心電図をとる準備をしている時に、先に同じ検査を受けていた女性が部屋に入ってくる。彼女は次の段階の試験として、心拍を抑えるための注射を打たれるのだが、やがてなんと心臓が停止してしまう。ストップ・ウォッチを片手に、何秒、何十秒、1分、とカウントを数える二人の医師。これ以上やるとやばい、よし、もう限界だということで今度は蘇生させようとするのだが、心臓が動かない!


心臓マッサージを施して、なんとか死んだはずの女性が奇跡的に復活するが、やがて同じ試験を受けるはずの男は、もう引き攣ってしまい、いきなり実は用事があるから帰るとか何とか言いだす。医者は、あんたは契約書に試験のことは口外しないということにサインしたよなと念を押し、男はうんうんうなずく。ちょっと医者が席を外した時に、男は女性と会話を交わす。あたし、どうしたのかしら、気分が悪い、あんた、心臓が止まっていたんだよ、なんてお喋りをしている最中、いきなり包帯を巻いた女性の頭から血が流れ出す。仰天する男。駆けつける医師。そして‥‥びっくりしたでしょう? なんてやるのだが、いや、最後の頭からの出血は駄目押しだったな。


最後の引っかけでは、ヒッチハイクの男を乗せたら、そいつがどうやら殺人鬼で、ドライヴァーと口論になった挙げ句、いきなりナイフで刺してしまう (もちろんトリックだ)。後ろに乗っている引っかかり役は、そこでひるまず狭い車の中で殺人鬼相手に殴りかかっていくのだが、逃げずに向かっていくなんて、ちょっと感心した。しかし殴られ損の殺人鬼役の役者は、ちと可哀想。


この種の番組では、当然、引っかけられる側が怖がれば怖がるほど見ているこちらは面白い。しかし、引っかかる側がこちらの思惑以上に怖がってしまうと、時にはまずいことも起こる。実は既にこの番組、プレミア放送の前から、引っかけた者から訴えられているのだ。本当にエイリアンにさらわれてしまうと信じ込んだその女性は、番組のおかげで激しく心の傷を負ったとして、番組を相手に訴訟を起こした。ま、そのくらいやるから面白いんであって、訴訟を怖れて手を抜いてしまうと、相手も怖がらなくなり、見ているこちらもつまらない。プロデューサーもその辺の線引きには頭を悩ますところだ。とはいえ訴訟の件では、いずれ和解するにせよ、プロデューサー側にほとんど勝ち目はないだろう。


番組ホストは、アメリカTV界ではどちらかというと問題児として通っているシャネン・ドハーティ。FOXの「90210」での悪女キャラは結構地のままに近かったらしく、あまりいい噂は入ってこない。「90210」の後に主演したWBの「チャームド」でも、結局ごねまくった挙げ句降板となった。自分から辞めたと言えばまだ聞こえはいいが、本当のところは、関係者のほとんどがドハーティよりも共演のアリッサ・ミラノの方をちやほやするので、激したドハーティが私をとるか彼女をとるかどちらかにしろとプロデューサーに詰め寄った挙げ句、プロデューサーはすんなりミラノを選んで、扱いにくいドハーティは体よく追い払われたというのが真相らしい。確かに彼女、鼻っ柱強そうな顔してるよなあ。それでも、そういう経験を積んだせいか、最近では相手を立てることも覚え、顔も少しは柔和になったような気もしないでもない。







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Scare Tactics

スケア・タクティクス   ★★1/2

 
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