隔年で開催されるアメリカ対ヨーロッパのゴルフ対抗戦、ライダー・カップ。アメリカ並びにヨーロッパではメイジャー制覇並みに重きが置かれる重要なゴルフ・イヴェントである。特に近年は接戦が多く、仕組まれたような展開、劇的な幕切れなど一層面白く、注目されるようになってきた。ただしその注目度に合わせるようにマスコミからゴルファーが叩かれる場合も多くなり、今回はタイガー・ウッズ、デイヴィッド・デュヴォールを含む出場ゴルファーの何人かが、プロだからたとえ名誉のためとはいえギャラをもらうのは当然のことと要求したため、マスコミから貪欲と叩かれる一幕もあった。


試合フォーマットはゴルフの華、マッチ・プレイ。初日と2日目が午前中フォーサム4試合、午後フォーボール4試合、最終日にシングルス12試合が行なわれる。1勝につき1ポイントが加され、引き分けの場合は両者にハーフ (0.5) ポイントが加算される。全28ポイントの半分強である14.5ポイントに早く到達したチームの勝ちとなる。全試合終わった時点でタイとなった場合は、前回優勝チームがカップをキープする -- つまり勝ちと見なされる。ボクシングでドローの場合、チャンピオンがベルトをキープするのと同じである。一人につき最大5試合出場するが、キャプテンの裁量によって最終日のシングルスにしか出ないゴルファーもいる。今回はヨーロッパのジャン・ヴァン・デ・ヴェルデなどがそうだった。


とにかくカップが始まる前までのマスコミの騒動はどこへやら、いざ試合が始まると、とにかく面白い。興奮する。初出場のヨーロッパのセルジオ・ガルシア(西) は大活躍、一方ウッズ、ミッケルソンのアメリカを代表する二人が初日2敗といいとこなし。初日が終わった時点で欧6-米2と大差。2日目が終わった時点でも欧10-米6と差は縮まらない。長いライダー・カップの歴史を見渡しても2日目が終わった時点で4ポイント差を最終日にひっくり返したという例はなく、前回に引き続き今回もヨーロッパがカップ獲得はほぼ確実と見られていた。


それが何と最終日、第1試合のトム・レーマンに始まって第8試合まですべてアメリカが欧州勢を下し、あれよあれよというまに逆転、さらには2日目まで絶不調だったジャスティン・レナードが17番ホールでカップの勝敗を決する45フィートの難しい登りのパットを沈めた時は私も思わずカウチから飛び上がって叫んでしまった。いやあ、まったく劇的、手に汗を握った。まだ相手のホゼ・マリア・オラハボルのパットも終わっていないのにアメリカ側はもう既に勝ったような大騒ぎ、まったく収拾がつかない。レナードは一時は3ダウンまで行っていただけに、一層劇的だった。


レナードは後で「入るべく運命づけられたパットなら入ると思った」と言っていたが、スポーツ選手って何故かこういう物言いをする人が多い。自分の肉体がすべてであるアスリートには、神様だとか運命だとかいう言葉は最も似つかわしくないと思うのだが、どうもそうではないようだ。鍛えに鍛え、練習に練習を重ね、やるべきことはすべてやった後には人はどうも運命論者になってしまうものらしい。そういえば「人事を尽くして天命を待つ」という言葉もあるし。努力次第で結構どうにでもなると思っている私はまだまだ修業が足らんらしい。


それにしても勝敗が決して、最初の2日間は絶好調だったのに最終日のシングルスでジム・フューリックに大敗したガルシアが泣き崩れるのを見て、デイヴィス・ラヴ3世が「2年前におれたちは泣かなかったぜ」と威張っているのを聞いた時は思わず笑ってしまった。ラヴってどうもがき大将みたいなイメージがあるなと前から思っていたが、やっぱりそういう性格のようである。







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33回ライダー・カップ

1999年9月   ★★★1/2

マサチューセッツ州ボストン、ザ・カントリー・クラブ

 
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