ロケットジャンプ: ザ・ショウ   RocketJump: The Show

提供: Hulu

プレミア提供日: 12/2/2015 (Wed)

製作: ロケットジャンプ

製作総指揮: フレディ・ウォン、ブランドン・ラーシュ

出演: フレディ・ウォン


内容: ユーチューブで人気の短編ヴィデオ・チャンネルをシリーズ化。


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RocketJump: The Show


ロケットジャンプ: ザ・ショウ  ★★1/2

前回の「ザ・マン・イン・ザ・ハイ・キャッスル (The Ma in the High Castle)」もストリーミング・サーヴィスのアマゾンによるコンテンツだったが、今回はそのライヴァル・サーヴィスの一つであるHuluのオリジナル・コンテンツだ。


HuluはアメリカのTVネットワークの共同出資サーヴィスであるということもあって、これまで特にオリジナル・コンテンツ製作に力を入れてきたわけではない。あまりオリジナル・コンテンツがよすぎると本家を食いかねず、それでは本末転倒になってしまうからそれも当然だ。勢いオリジナル・コンテンツ製作には慎重にならざるを得ない。


また、Huluはこれまで無料サーヴィスとコマーシャルの挟まらない有料サーヴィスの2路線で拡大を目指していたが、先頃から進路変更して完全有料化に踏み切った。無料サーヴィス時代はわりと利用価値があったが、これではわざわざライヴァル・サーヴィスのケーブルに利を与えているような気がする。


いずれにしても、そのHuluのオリジナル・コンテンツとして、昨年までFOXで放送されていた「ザ・ミンディ・プロジェクト (The Mindy Project)」が今季からHuluで提供されると聞くと、それはさもありなんと思う。本家のネットワーク放送の延長という感じがする。一方で完全オリジナルのコメディ「カジュアル (Casual)」の評価が高いと、他人事ながら痛し痒しだろうなと思う。


その点、「ロケットジャンプ」は、いかにもという出自を持つHuluオリジナルだ。「ロケットジャンプ」はそもそもYouTube発祥のコンテンツで、素人軍団がハリウッドもかくやという特撮映像を撮ることで人気を得た。いや、中心製作者のフレディ・ウォンは南カリフォルニア大の映画学科出身なので、素人というのは当たらない。一見して多くの者が、NBCの「ヒーローズ (Heroes)」のヒロを思い浮かべるに違いない容姿をしている。体型まで瓜二つだ。


そのウォンを中心とする製作のイロハを知っている者たちが、従来のハリウッド映画には飽き足らないというか、自分たちがやりたい特撮シーンだけを撮りたいがためにYouTubeでチャンネルを持ち、それが人気を得、今回Huluからシリーズとして作らないかとオファーを受けた。


つまり「ロケットジャンプ」は、元々は一本が数分から10分程度の特撮映像の寄せ集めだ。一応ストーリーもあることはあるが、撮りたい映像を撮るためにストーリーを捏造してみましたという感じで、やはり本分は特撮にある。その本編に撮影の舞台裏風景も含めて、毎回30分程度のシリーズにしたのが、今回の「ロケットジャンプ: ザ・ショウ」だ。


第1回の「ハイ・プレインズドリフター (High Plains Drifter)」は西部劇 + 「ワイルド・スピード (Fast and Furious)」をイメージしたもので、ウマにドリフトさせることができないかという発想が根本にある。なんでもメキシコのこの手のショウではウマがひずめを地面に突き刺すようにしてドリフト (というのか?) しながら止まる見世物があるらしい。


ということで、19世紀西部でウマをレースさせるというシチュエイションをこしらえて特撮する。GoProやスロウ・モーションを使い、なかなか頑張ってはいるが、一番期待したここぞという時の4足ドラフトが別に特にあったわけではないのはちょっと肩透かし。ウマがカーヴをドリフトしながら回るはずじゃなかったのか。


第2回はライトセイヴァーを用いるゲイのシャーロック・ホームズが登場する「ファン・フィクション (Fan Fiction」で、これも今一つかなというでき。うーん、もう少しなんかないかなと思っていたら、それは後の回の方にあった。


例えば第3回の「トラック・フリッパー・v・バス・パンチャー (Truck Flipper v Bus Puncher)」は、正義の味方が向かってくるトラックやバスにパンチを繰り出し一回転させる、というのが見せ所の映画を製作しているプロデューサー同士の話だ。お互いに相手の上を行こうと段々シチュエイションがスケール・アップしていき、最初は小型のヴァンだったものが、バスになりトラックになり大型客船になり、最後には何十両編成の貨物列車をワン・パンチで一回転させるという特撮を製作してみせる。結構すごい。こんな映像がハリウッド特撮並みの金をかけなくても撮れるのか。


また「キープ・オフ・ザ・グラス (Keep off the Grass)」では、手入れしたばかりで芝生に人を入れたくない男が芝に侵入する男と戦いを演じ、なぜだか段々空に浮かび上がっての空中戦になる。「マトリックス (Matrix)」みたいなバトルを延々と空高くで繰り広げるのだが、こいつも結構笑える。


等々、ツボにはまるとさすがに面白い。カルト化しているのも頷ける。一方でこれがYouTubeだけじゃなく、Huluでも提供されなければならない確たる理由があるようにもあまり思えない。製作の裏側を見せるだけで、ただで見れるYouTubeから人は有料のHuluに移行してくるだろうか。うーん、でも「ロケットジャンプ」だけではなく、「カジュアル」とか「ミンディ・プロジェクト」も一緒なら、そこそこ需要もあるかな。











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