ロボット・コンバット・リーグ   Robot Combat League 

放送局: SyFy 

プレミア放送日: 2/26/2013 (Tue) 22:00-23:00 

製作: スマート・ドッグ・メディア 

製作総指揮: クレイグ・プレスティス 

ホスト: クリス・ジェリコ 

 

内容: ロボット同士を戦わせる勝ち抜きリアリティ・ショウ。12チームがそれぞれ二人一組となってロボットを操縦して戦わせる。優勝賞金は10万ドル。


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Robot Combat League


ロボット・コンバット・リーグ   ★★1/2

「鉄腕アトム」の誕生以来、ロボット同士が戦う、あるいは戦わせるというのは、日本人にとっては馴染みのシチュエイションだ。ハリウッド映画にだってロボット ものは結構あるが、しかし、そのロボットを背後で人間が操る、もしくは大型ロボットに乗り込んで操縦するという形態は、日本のロボットものの十八番だろう。「鉄人28号」、「マジンガーZ」から「ガンダム」を経て「エヴァンゲリオン」に至るまで、その種の例には事欠かない。 

 

これがハリウッドものだと、ロボット自身が意思を持って戦ったり、あるいは「アイアンマン (Iron Man)」のように、人間が操縦するのではなく、人間自身がロボット化する。「ウエストワールド (Westworld)」、「ロボコップ (Robocop)」、「エイリアン (Alien)」、「A.I.」、「アイ、ロボット (I, Robot)」「サロゲート (Surrogates)」等、思いつく作品はほとんどそうだ。あるいはロボットというより、アンドロイド、もしくはクローンといった方が近い。 

 

そのためか、和製ロボットは巨大になるが、アメリカのロボットはだいたいにおいて等身大だ。日本にはやはり巨大な図体を持つ怪獣の伝統がある。それに対抗するためにロボットも巨大化する必要があったのかもしれない。 

 

そういう人間の外観に近づくことを是とするアメリカのロボットにおいて例外的な存在が、「エイリアン2 (Aliens)」 でシガーニー・ウィーヴァーが乗り込んで操縦したロボットだ。とはいえこのロボットは、単純作業用の力仕事ロボット以上のものではなく、ロボットというよ りは、単純に機械を連想させた。とはいえ、ロボットに人間が乗り込んで操縦するという形態が、アメリカにもなくはないことは示した。 

 

さらに、かつてコメディ・セントラルが編成した「バトルボッツ (Battlebots)」もある。ロボットと呼ぶにはかなり原始的な、どちらかっつうとむしろ掃除ロボットに近い物体が、肉弾戦という印象でぶつかり合って、どちらかが壊れるまで戦う。初源的なロボットとはいえ、ものが壊れる哀れをそこはかとなく感じさせた。 

 

そして一昨年、「リアル・スティール (Real Steel)」が登場する。人が操縦してロボットを戦わせるという日本ロボット作品の基本が、ヴィデオ・ゲームを経由してついにアメリカでも定着する気配を見せ始めた。そして今回Syfyが編成する「ロボット・コンバット・リーグ (RCL)」は、「リアル・スティール」を限りなく現実に近づけたものになっている。 

 

RCLにおけるロボットはだいたい背丈が2mから2.5m程度で、二人一組となって操縦する。ロボット自体は番組が用意するため、外観こそ異なるが、それぞれのスペックや機能には特に大きな差はない。それよりも操縦する者の技術の方が大きくものを言うと言える。 

 

実際には身長2mの二本足の自立歩行型のロボットの製作は、現在の技術ではまだ無理な相談だ。それでロボットは、倒れないように後ろから大きなつっかえ棒のようなもので支えられている。ロボ・テクと呼ばれる操縦者の一人がロボットの前後左右の動きをコントロールし、もう一人のロボ・ジョッキーは、パンチを繰り出す両腕の動きをコントロールする。 

 

ロ ボ・テクのコントローラは単にジョイスティックのようなものだが、ロボ・ジョッキーは上半身に星飛雄馬がしていた大リーグ・ボール養成ギプスを大型化したようなモーション・コントローラを装着し、両手の動きがそのままロボットの動きに直結する。かなり「リアル・スティール」の世界に近い。 

 

そのため、どのティームもガタイのいい方がロボ・ジョッキーを、知識のあるオタク・タイプがロボ・テクを受け持っている。実際にかなりフィジカルな操縦となるロボ・ジョッキーには、元オリンピアンや軍人、格闘家等、肉体派が揃っており、そのうちの女性の一人アマンダ・ルーカスは、あのジョージ・ルーカスの実の娘だ。ルーカスの娘がプロの格闘家だったとは知らなんだ。 

 

勝負は12ティームによるトーナメント形式だ。まずシードを決めるために、各ティームがそれぞれ練習ロボット相手に、胸に置かれたマークをどれだけ早くパンチで叩き落とせるかを競う。1位になったティームはシードされ、最下位のティームと1回戦で戦う。それで1位となったスティール・サイクロンを操縦するのは、ロボ・テクがロボット工学の専門家ジョージ・カークマン、ロボ・ジョッキーが2004年と2008年の夏季オリンピックにパナマ代表として出場している陸上のアスリート、バヤノ・カマニだ。 

 

他方、最下位となったのが、デイヴ・シンセル、アンバー・シンセルの父娘ティームが操るクラッシュ。父娘揃ってインテルのエンジニアだ。他のティームと較べ て特に体力的に勝るわけではないアンバーがロボ・ジョッキーを務めるクラッシュは、ロボット自体の性能はともかく、最初から上位進出は難しそうな印象があった。 

 

勝負は1ラウンド2分の3ラウンド制で、栄えある第1試合のスティール・サイクロン vs クラッシュ戦は、圧倒的にスティール・サイクロンが有利に勝負を運ぶ。パンチがクラッシュのボディを覆うケージに当たる度に火花が飛び、これはクラッシュ撃沈も間近と思われた。 

 

実際、第1ラウンドの終了間近にはクラッシュの左腕の油圧ポンプが千切れ、そこらじゅうにオイルを撒き散らす。20分の補修タイムで修理を終えるのはかなり難しそうだ。これは既に勝負あったか。 

 

しかしなんとか突貫の応急修理を終え、リングに戻ってきたクラッシュは、自分のリズムを取り戻す。第1ラウンドでは大振りで空振りばかりしていたパンチが相手をとらえるようになり、怒涛の巻き返しを図る。パンチというよりはジョッキーに力がないため、ほとんどが闇雲に大振りのアッパー・カットもどきばかりなのだが、ロボ・テクとリズムが噛み合うと、とにかく全力で振り回しているため、ヒットした場合、相手に与えるダメージはでかい。スティール・サイクロンはにわかに劣勢に立たされる。 

 

そしてスティール・サイクロンの右フックに被せるようにしてクラッシュが放った左が、明らかに偶然とはいえ、「あしたのジョー」並みの絶妙のクロス・カウンターとなる。スティール・サイクロンの右腕が折れ、オイルが噴き出す。左腕一本になったスティール・サイクロンをクラッシュは容赦なく攻め続け、そしてクライマックスは止めのボディへの抉るような渾身の左アッパー、自分の左腕も折れたが、これがもろにスティール・サイクロンの急所に突き刺さり、パワー系統に異常をきたしたスティール・サイクロンは動かなくなった。クラッシュの激的な逆転TKO劇の瞬間だ。 

 

などなど、ロボットなのだが、見ているとつい感情移入してロボットに肩入れしてしまう。油圧系統がいかれてポンプが切れ、オイルが噴き出すと、まるで人間が血を流しているかのような錯覚を起こしてしまう。そしてパワーまでいかれて動かなくなってしまうと、本当に死んでしまったかのようだ。単にロボットとは思えない。これがもしもっと人間に近くなってさらに高度な動きができるようになると、もっと感情に訴えてきそうだ。 

 

さて、番組はこのほど第1シーズンを無事終えており、優勝したのは予想を覆してあれよあれよという間に頂上に昇りつめたクラッシュ。なんかできレースっぽい感じもなくはなく、至るところに演出が入っているという感触はかなりあるが、しかし、よく頑張った。 










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