マンガは昔よく読んだが、アメコミは特に得意な分野ではない。ロウ・ティーン時代にピーナッツを少し読んだことがあるくらいだ。マーヴェルやDCコミックスのような有名どころのスーパーヒーローものですら、ほとんど読んだことがない。ましてや今回CWが編成した「リヴァーデイル」原作であるアーチー・コミックスなんて、あー、そういえばあの図柄、見たことがあるというくらいで、コミックスを手にしたことすらない。むろん内容なんてまったく知らなかった。
しかしそれでも、リーゼントのような頭にニキビ面、いつもTシャツかスタジアム・ジャンパーの主人公と、彼といつも一緒にいるポニー・テイルの女の子の絵は、記憶に残る。要するに「グリース (Grease)」みたいなアメリカ青春ものなんだろうと想像していた。
CWが今回、そのアーチー・コミックスをTVシリーズ化した。CWといえば、何はともあれ反射的に連想するのはDCコミックスのシリーズ化だ。しばらく続いたスーパーマン・シリーズの「スモールヴィル (Smallville)」を筆頭に、「アロー (Arrow)」、「フラッシュ (The Flash)」、「アイゾンビー (iZombie)」、「レジェンズ・オブ・トゥモロー (Legends of Tomorrow)」と続き、今シーズンからは昨シーズンCBSで始まった「スーパーガール (Supergirl)」もCWに移籍して放送が始まっている。バットマン外伝である「ゴッサム (Gotham)」がFOXでなくCWだったら完璧だったのに。
そのCWでいかにもアメリカ60年代風の青春マンガと思われるアーチー・コミックスが放送されるというのは、ちょっと合わないような気がした。しかし「リヴァーデイル」は、アーチー・コミックスの映像化ではあるが、たぶん原作とは趣きが異なる。アメリカのどこにでもあるような郊外の町を舞台とする青春ストーリーではない。番組の冒頭では町の実力者の子供であるジェイソンとシェリルの双子の兄妹が連れ立って川にボートを漕ぎ出し、ジェイソンが川に落ちて行方不明になったことが知れる。果たしてそれは事故だったのか。
主人公アーチーはコミックスのようなどこにでもいるようなニキビ面の平均的アメリカ人青年ではなく、イケ面スポーツマンで、音楽の才能もあるようだ。当然モテるしそれは同級生だけに限らない。実はアーチーはこの夏、女性音楽教師と関係ができていた。
アーチーの家の隣りに住むベティは、一見綺麗で素直なブロンド・ガールに見えるが、母は躾けが厳しく、どうやらそのせいで姉に問題があったことが知れる。ベティ自身も母に鬱屈を抱えている。ニューヨークからリヴァーデイルに戻ってきたヴェロニカは、かつて大金持ちだったが、父が横領で有罪となったために母親と一緒に町に戻って来ざるを得なかった。むろん周囲はそういう目で彼女らを見る。
とまあ、なんか泥くさい、ヤバそうな人間関係てんこ盛りなのだ。健全な青春ドラマなどではまったくなく、どちらかというと、プライムタイム・ソープという感じに近い。あるいは、こういう乗りでヒットした旧ABCファミリー現フリーフォームの「プリティ・リトル・ライアーズ (Pretty Little Liars)」を意識しているという感じがする。
番組ではベティはアーチーに恋心を抱いているのだが、アーチーはベティにそんな感情はないとはっきり断言しており、年上の女性音楽教師ミス・グランディと既に関係している。原作ではアーチーはベティに惚れているのだが、ベティの方にその気がなく、ヴェロニカを絡めた軽めの三角関係という設定だそうだ。要するに番組では、アーチーが年上の女性に惑わされることでわざわざ関係を複雑にしている。ティーンエイジャーというのに、既に色々ある。その後ミス・グランディは元夫の暴力に耐えかねて逃げてきたことがわかるなど、どうやらほとんどの者は隠していることがあるらしい。
出演者の中で一人だけおおっと思ったのが、ジャグヘッドに扮しているコール・スプラウスだ。出演者を調べるまで、これがあの「スイート・ライフ (The Suite Life of Zack And Cody)」のコーディだったとは気づきもしなかった。「スイート・ライフ」は、一時ディズニー・チャンネルでロウ・ティーン、というかそれよりもさらに下のトゥイーン層に圧倒的人気を博していたが、その後主演のスプラウス・ブラザースがどうなったかはまったく知らなかった。それが「リヴァーデイル」では、主人公の友人で、事件を一歩離れたところから見る狂言回し的立場からナレーションしている。あんたも色々あったんだろうな。