Ringer   リンガー

放送局: CW

プレミア放送日: 9/13/2011 (Tue) 21:00-22:00

製作: CBS TV、ワーナー・ブラザースTV、ABC TV
製作総指揮: ジョアン・コロンナ、ジョン・リーブマン、リチャード・シェパード、パム・ヴァッシー

クリエイター: エリック・チャメーロ、ニコール・スナイダー

出演: サラ・ミシェル・ゲラー (ブリジット・ケリー/ショバーン・マーティン)、クリストファー・ポラハ (ヘンリー・バトラー)、ヨアン・グリフィズ (アンドリュウ・マーティン)、ネスター・カーボネル (ヴィクター・マッカード)、マイク・コールター (マルコム・ウォード)


物語: 元ストリッパーでドラッグ・アディクトのブリジット (サラ・ミシェル・ゲラー) はギャングの殺人現場を目撃し、FBIの目撃者保護プログラム下で保護されながら裁判を待っていた。しかし殺されるかもしれないという恐怖からブリジットは居場所をくらまし、双子の妹ショバーンのいるニューヨークを訪れる。ショバーンは財界の実力者と結婚して豪邸に住んでいたが、ブリジットとはほとんど行き来はなく、二人が会うのは数年ぶりだった。しかし二人で沖合いに出たヨットでうたた寝をして目覚めたブリジットは、ショバーンの姿が見えないことに気づく。悩んでいるようだったショバーンは、発作的に海に身を投げたのだ。一時的にショックを受けたブリジットだが、一方でこれが千載一遇のチャンスであることに気づく。瓜二つのショバーンになりすますことができれば、ギャングの追っ手から身を隠すことができるだけでなく、金の心配をすることもなく将来が約束されている。ショバーンの夫との夫婦仲は冷え切っており、娘とも相性が悪かった。ブリジットはショバーンとして生きることを決意する‥‥


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Ringer


リンガー   ★★★

サラ・ミシェル・ゲラーと言えば、「バッフィ: ザ・ヴァンパイア・スレイヤー (Buffy: The Vampire Slayer)」で、一時かなり人気があった。現在、CWの「ザ・ヴァンパイア・ダイアリーズ (The Vampire Diaries)」、HBOの「トゥルー・ブラッド (True Blood)」(さらにMTVの「デス・ヴァリー (Death Valley)」を含めてもいいか?) 等、ティーンエイジャーに人気のあるTVを舞台とする現代ヴァンパイアものの、ほとんど生みの親的な存在が、バッフィ、つまりは彼女を演じるゲラーと言える。


「バッフィ」は放送していたWBから放送局を変えてUPNに移っても、しばらく主軸番組として留まった。その後「バッフィ」が最終回を迎え、WBとUPNが合弁して新ネットワークのCWになった現在、最も人気のある番組は、やはりヴァンパイア・ドラマの「ヴァンパイア・ダイアリーズ」だ。この傾向を決定づけたのは、やはりゲラー/バッフィの功績と言える。


ゲラーは「バッフィ」終了後、しばらくは休んだり、映画に出たりしていた。「The Juon/呪怨 (The Grudge)」にも出ていた。そのゲラーが久しぶりにネットワークに帰ってきて主演するミステリ・ドラマが、「リンガー」だ。


「リンガー」とは瓜二つのもう一人の人間のことを意味する。アルフレッド・ヒッチコックの「めまい (Vertigo)」やデイヴィッド・クローネンバーグの「戦慄の絆 (Dead Ringers)」を例に引くまでもなく、双子やドッペルゲンガーは、ミステリ・サスペンスには欠かせない小道具・お膳立てだ。


今回ゲラーが扮するのは、元ストリッパーで現在は犯罪の目撃者としてFBI保護下にいるブリジットと、NYの豪邸に住む、実業家の妻ショバーンの2役。ギャングによる口封じを怖れてNYに来たブリジットは、そこでショバーンの自殺あるいは失踪という事態に遭遇する。頼る者のないブリジットは、そこで金持ちのショバーンとして生きる決心をする。


ギャングの追っ手から逃げるためにショバーンになりすますブリジットだったが、しかし実はショバーンにも姿をくらまさなければならない理由があったことが直にわかる。ブリジットでいてもショバーンでいても、周りには常に危険が待ち構えていた‥‥


実はゲラーの久しぶりの主演ということ以外にも、今シーズンの新番組の中で「リンガー」が印象に残ったことの理由に、一人二役ということがある。単に一人二役というわけではなく、話の上で回想シーンに自分自身が自分自身のそばに現れるというものもあるが、いずれにしても、同一キャラクター (あるいはリンガー) が同じ画面の中に収まるという構図をよく目にする。それがどれもよくできており、印象に残るのだ。


TVに限らなければ、こういう一人二役の最近の最も印象的な例は、デイヴィッド・フィンチャーの「ソーシャル・ネットワーク (The Social Network)」におけるアーミー・ハマーの一人二役だろう。TVだと昨シーズン来のFOXの「フリンジ (Fringe)」で、アナ・トーヴ扮する女性主人公のオリヴィアが、現実世界とパラレル・ワールドの二つの世界でオリヴィアを演じている。パラレル・ワールドではオリヴィアはどちらかというと悪役で、そのためこちらの世界にグッド・オリヴィア、あちらの世界にはバッド・オリヴィアがいる。


「ロスト (Lost)」のJ. J. エイブラムス製作の番組でもあり、当然話はどんどんこんぐらがってきて、私は既に筋を追えてないが、そういう点とは無関係に、このグッド・オリヴィアとバッド・オリヴィアを同一画面に据えて撮るというシーンが非常によくできているのだ。


昔なら一人二役というと、画面を半分半分に分割して多重露出、あるいは髪型を似せた替え玉を後ろ向きで据えるというのが最も一般的な一人二役だろう。もちろんCGを使った多重露出という点では現代も同じだが、しかし昔と今ではその技術のレヴェルが違う。画面の右側と左側で一人二役するのではなく、彼・彼女らが動き回って交差する。昔なら絶対撮れない。さらに「フリンジ」の場合、トーヴが演技として意地の悪いオリヴィアとそうでないオリヴィアを演じて見せるので、なおさら印象に残る。


そしたら「リンガー」で今度はゲラーが一人二役だ。こちらも片方は落ちぶれたドラッグ・アディクトのストリッパー、片方は上流階級夫人と、全然別のキャラクターを演じ分けなければならない。こういうのは見る方も楽しいが、実は演じている者が一番楽しいんではないかという気がする。


そしてこの一人二役、あるいは一人多重出演はこれだけに留まらない。しばらくして始まったCBSの「アンフォーゲッタブル (Unforgettable)」では、ポピ・モンゴメリが、一度見たものは絶対に忘れない尋常じゃない記憶力を持つ刑事という役どころで主演しているのだが、過去の回想シーンで、自分自身が過去の自分のいた現場を検証するというシーンが何度もある。静止している記憶の中の自分の周りを自分自身が歩き回ってチェックする。印象としては幽体分離だが、これまたよくできている。


ケーブルではFXの「アメリカン・ホラー・ストーリー (American Horror Story)」で、一人二役ではなく、本当の双子の男の子が出てくる。これがまた一目でぶん殴りたくなるような子で、よくこういう役にぴったりな子、しかも双子を見つけてきたなと思う。


また、同じ画面内で一人二役をするわけではないが、ABCのファンタジー「ワンス・アポン・ア・タイム (Once Upon a Time)」もパラレル・ワールド・ファンタジーであり、主要登場人物は皆一人二役だ。この傾向はコマーシャルにまで及んでいて、キャピタル・ワン・バンクのCMで、アレック・ボールドウィンが一人二役を演じている。映画でも近々に公開予定の「ジャック・アンド・ジル (Jack and Jill)」では、主演のアダム・サンドラーが性別を変えての一人二役を演じている。どうやら「一人二役」は今シーズンのキー・ワードのようだ。


「リンガー」に戻ると、ゲラー以外の脇もなかなかのメンツが固めている。ショバーンの夫アンドリュウを演じているのは「ファンタスティック・フォー (Fantastic Four)」のヨアン・グリフィズで、FBIエージェントのマッカードはABCの「ロスト」のネスター・カーボネルだ。ショバーンが浮気していたヘンリーに扮しているクリストファー・ポラハは、昨シーズン、批評家が誉めていたCWの「ライフ・アンエクスペクティド (Life Unexpected)」に主演していたが、残念ながら1シーズン限りで終わっている。









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