Revolution   レヴォリューション 

放送局: NBC 

プレミア放送日: 9/17/2012 (Mon) 22:00-23:00 

製作: ボナンザ・プロダクションズ、バッド・ロボット・プロダクションズ、ワーナー・ブラザースTV 

製作総指揮: J. J. エイブラムスエリック・クリプキ 

監督: ジョン・ファヴロー 

出演: ビリー・バーク (マイルズ・マティスン)、トレイシー・スピリダコス (チャーリー・マティスン)、ダニエラ・アランゾ (ノラ・クレイトン)、ジャンカルロ・エスポジト (トム・ネヴィル)、ティム・ガイニー (ベン・マティスン)、マリア・ハウエル (グレイス・ボーモン)、デイヴィッド・ライオンズ (モンロー将軍)、エリザベス・ミッチェル (レイチェル・マティスン)、ザック・オース (アーロン・ピットマン)、JD・パード (ジェイソン・ネヴィル)、グレアム・ロジャース (ダニー・マティスン) 

 

物語: 2012年シカゴ。ベンとレイチェル、そして娘のチャーリー、息子のダニーはシカゴで暮らすごく普通の一家だった。ある時、世界中のすべての電源=パワーが機能しなくなる。その時以来人類は原始時代に逆戻りする生活を強いられることになった。 

15年後ニューヨーク近郊。人々は少人数のコロニーを作り、農作業を中心に自給自足の生活を送っていた。そこにネヴィルが現れ、将軍がベンを召喚しているという。父が連れて行かれることを怖れたダニーは抵抗し、発砲沙汰となる。ベンは撃たれ、チャーリーに、シカゴにいるベンの弟のマイルズに会えと言って命を落とす。チャーリー、アーロン、マギーの3人は、一路シカゴに向かって徒歩で出発する‥‥


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Revolution


レヴォリューション   ★★1/2

「レヴォリューション」とは、もちろん今春ABCが編成したセルフ・ヘルプ系トーク・ショウの「ザ・レヴォリューション (The Revolution)」とはまったく別ものだ。結局ABCの「レヴォリューション」は視聴者を獲得することができず、キャンセルされた。その後、今秋、NBCが編成したJ. J. エイブラムス製作の近未来SFドラマが、今回の「レヴォリューション」だ。 

 

近年、近未来を描くSF番組や映画は、ほとんどにおいて文明が一様に発達した、明るい未来社会を描くということはなくなった。もちろん文明自体は進化するが、一方で多くとり残された者たちがおり、必ず社会の下側で蠢くスラムを形作る。あるいは、文明が崩壊する場合もある。「クラウド・アトラス (Cloud Atlas)」「ルーパー (Looper)」「トータル・リコール (Total Recall)」「ハンガー・ゲーム (The Hunger Games)」、みんなそうだ。J. J. エイブラムスがFOXで製作している「フリンジ (Fringe)」でも、パラレル・ワールドはそういう世界になっている。 

 

どうやら文明が進むと、人類全体がその恩恵を被るわけではなく、貧富の格差が増すだけというのは、ほとんど決定事項であるように思われる。誰もがそうなることを信じて疑わないようだ。別にペシミスティックというわけではなく、単に避けようのない事実を事実として受け入れているだけという感触すらする。進歩には搾取が必須であるというのは、どうやら全人類の了承済み事項のようだ。 

 

それが「レヴォリューション」の場合、ある時を境に一瞬にして世界からパワーがなくなってしまうので、どうしても技術的に進化した世界にはなり得ず、人々は前近代的生活を強いられている。要するに文明滅亡後の世界を描くアルマゲドンSFの変奏だ。エイブラムスはABCの「ロスト (Lost)」でも、文明のない世界で人々にコロニーを作らせ、パワー・ゲームを描いていたが、よくよくこういう設定が好きらしい。 

 

一方、「ロスト」ではパワーの源みたいな場所を巡って話が展開するが、今回はそのパワーがまったくない。登場人物のマイルズらは、そのパワーが世界から消えた謎の理由の一部を知っており、話は徐々にパワーを発生させるジェネレイタをめぐって展開していく。なぜこの世からパワーがなくなってしまったのか。その理由は何か。もう一度パワーを発生させることは可能なのか。 

 

いずれにしても「ロスト」でも「レヴォリューション」でも、結局パワーのありかを巡って争いが起きる。「ロスト」では生命の源であるパワー源が最初からあったが、「レヴォリューション」ではそれがなんらかの理由で消滅したか、隠されている。果たしてそれを今回は人為的に発生させることができるかというのがテーマのように見え、たぶんそのアイディアは「ロスト」を製作している時に生まれたのではないかという気がする。 

 

番組主人公のマイルズを演じるビリー・バークは、今夏、TNTの「ザ・クローザー (The Closer)」で、変態犯罪者を演じておきながら、今回は人類の未来をほとんど一身に背負っているようなシニカルなキャラクターだ。すげえ変わり身の速さで、最初彼が出てきた時は、悪役と信じて疑ってなかった。その姪っ子のチャーリーを演じるトレイシー・スピリダコスは、これまでにCWの学園ドラマの何度もゲスト出演している。 

 

ネヴィル役のジャンカルロ・エスポジトは、昨シーズンのAMCの「ブレイキング・バッド (Breaking Bad)」のガス役で強烈な印象を残した。あの死に方は当分忘れられない。ネヴィルが仕えるモンロー将軍を演じるデイヴィッド・ライオンズは昨シーズン、短命に終わったNBCのスーパーヒーロー・ドラマ「ザ・ケープ (The Cape)」で主人公を演じていた。 

 

しかしストーリー展開上最も気になるのは、やはりチャーリーを捨てた母であり、この世界からパワーがなくなった事情の何割かに関係している、少なくとも知っているはずのレイチェルに扮するエリザベス・ミッチェルだ。「ロスト」でも彼女の変節が世界を滅ぼしも救いもするという役どころだったし、ABCの「V」でもエイリアン相手に、地球の将来の安全は彼女の双肩にかかっていた。今回も今後の彼女の言動が人類の将来を大きく左右するのは間違いあるまい。 

 

J. J. エイブラムスは多作で、現在、「フリンジ」と「レヴォリューション」以外にも、CBSで「パーソン・オブ・インテレスト (Person of Interest)」を製作中だし、キャンセルはされたがFOXで「アルカトラズ (Alcatraz)」も製作していた。「パワー」と「タイム・トラヴェル」は、エイブラムス作品を読み解く時のキー・ワードだと思うが、TV番組の場合、もう一つエイブラムス番組で見落としてはならない特色として、一話完結型になるか、それとも一つの大きな謎を追って展開するかの差がある。 

 

「ロスト」、「アルカトラズ」、「レヴォリューション」は一つの謎を核として話が展開するが、「フリンジ」、「パーソン・オブ・インテレスト」は一話完結型だ。むろん完全に二極化しているわけではなく、一つの謎型でも小さな謎が一話毎に解かれたり結末を迎えたりするし、一話完結型の番組でも話の後ろに主人公たちのバックグラウンドの謎が連綿と繋がっていたりする。「アルカトラズ」は大きな謎の中に毎回完結する異なるエピソードがあって単純にどっちと言い難いところがある。 

 

一方「フリンジ」の場合、最初の数シーズンは一話完結型だったが、最終シーズンを迎えた現在では、「オブザーヴァー」たちと戦いを繰り広げる「ロスト」の最終シーズンのようなシリーズ・ドラマになっており、最初の数シーズンと現行シーズンでは明らかに番組の感触が異なる。番組の最終回の日程が決まってから、それに合わせてストーリーを収斂しているからだろう。 

 

一つの謎型の「レヴォリューション」は今後、今シーズンで一応謎の解決を見るのだろうか。もし解決したら、その後をどうするかという、この種のTV番組が必然的に抱えるジレンマに陥ることになる。番組継続が決まると、「ロスト」のように焦点がぼやけて中だるみする可能性がつきまとうし、せっかく製作にこぎつけ、番組がドライヴし始めたのにすぐ結末をつけて終わらせるのは、製作に関係する全員が避けたいところだろう。 

 

私はこういう一つの謎を追う番組は、最初から22話なりあるいはミニシリーズとして製作する方がメリハリもつけやすく、最も適していると思うが、アメリカでは1シーズンもつような人気番組として確立する番組は、誰もそこで終わりたがらない。しかし、それ以上やってもだれる可能性のリスクは常につきまとう。そういうかなり難しい「一つの謎」製作を作り続けるエイブラムスって、本当にこのジャンルが好きなんだろうなと思う。 











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