放送局: WB

プレミア放送日: 10/5/2005 (WED) 21:00-22:00

製作: クラスIVプロダクションズ、WB TV

製作総指揮: マータ・カウフマン、スティーヴ・パールマン、アンドリュウ・プロトキン、ミミ・レダー

共同製作総指揮: ビル・プレイディ

製作: ロバート・ロイド・ルイス、ティモシー・マークス

クリエイター/ライター: リズ・タチロ

出演: ジェニファー・エスポジト (ジニー・ソレリ)、キーレ・サンチェス (アン・ソレリ)、リジー・キャプラン (マージー・ソレリ)、ローラ・ブレッキンリッジ (ローズ・ソレリ)、カラム・ブルー (ボブ)、ダン・フッターマン (デニー)


物語: ニューヨークに住むソレリ家の4姉妹の周りは、最近何かと問題が多い。キャリア・ウーマンの長女のジニーは恋人のボブとの間に妊娠が発覚し、次女アンは6年越しの恋人との間に破局を迎え、3女マージーは住んでいたアパートから立ち退きをくらい、まだ学生の4女ローズは親に内緒で学部を変わった挙げ句、髪を染め、舌にピアスをして演劇に打ち込むと爆弾発言をする。ちょうど父が再婚をするためにサプライズ・パーティを企画する姉妹たちだったが、実はその再婚相手とはそりが合わず、その上これらの問題ばかりを父の耳に入れるわけにはいかないと頭を悩ますのだった‥‥


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近年、私の嗜好として、こういう若者向けの番組、しかも主人公4人が全員女性で、基本的に彼女たちの恋模様が主体とわかりきっているこういうコメディ・ドラマを見ようという気になぞ、普通は到底ならない。しかもそれが若者向け番組ばかりが並ぶWBで放送される番組となればなおさらだ。たぶん私が好むテイストとはまるっきり方向性が違うだろうということは想像に難くない。


考えたらここ数年、6大ネットワークの中で最も若く、ライヴァル・チャンネル同士と目されているWBとUPNとでは、「ヴェロニカ・マーズ」「アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル」があるUPNを見ることの方が断然多い。特に「トップ・モデル」の方は新シーズンが始まるとほぼ全エピソード見ており、今現在、ABCの「ロスト」に次いではまっている番組だ。


WBだって「ヤング・スーパーマン (Smallville)」(邦題はオリジナルのカタカナ表記の「スモールヴィル」で行った方が断然よかった) なんて人気のある番組があることはあるのだが、ついにこれまでWBの屋台骨を支えていた「セヴンス・ヘヴン (7th Heaven)」も今シーズン限りで終了が発表されるなど、全体的に見て旗色はよくないという印象の方が強い。


そのWBの今シーズンの新番組では、またまた若者、それも特に女の子向けに、ハンサムな二人の兄弟が異形の化け物を退治して回るという「スーパーナチュラル」がまずポイント高い。実際に視聴率の上でも健闘している。しかし、私にとっては同じ若者向けでも、「リレイテッド」の方がアピールした。もちろん私が男性で、ハンサムな男が主人公の番組よりは可愛い女性が主人公の番組の方に惹かれるということも当然ある。しかし、それでもただ可愛い女優が出ているというだけなら、他にもそれこそ一線級のモデルのような綺麗どころが大挙して出ているような番組は腐るほどある。それが特に「リレイテッド」が気になったわけは、主演の4姉妹のうちの一人に、ジェニファー・エスポジトの名前を見つけたからだ。


エスポジトが最もよく知られているのは、マイケル・J・フォックスが主演した「スピン・シティ」でのステイシー役によってだろう。それも悪くはなかったが、私が本気で彼女、悪くないなと思ったのは、マイケル・ダグラス主演の「サウンド・オブ・サイレンス (Don't Say a Word)」でのちょっとくずれた女刑事役だった。この映画ではダグラスを食ったブリタニー・マーフィの印象が強烈過ぎたのでエスポジトはわりを食ってしまったが、エスポジトだって悪くなかった。さらに今年のポール・ハギスの「クラッシュ」を見て、やはりエスポジトは悪くないという思いを新たにした。あとは一発、当たり役が必要なだけだ。


実は私はつい最近まで、エスポジトを最近台頭してきつつあるスパニッシュ系の女優だとばかりカン違いしていた。実際、彼女はラテン系も多く住むニューヨークのブルックリンの出身だし、顔立ちといい、それらしき名字といい、ジェニファー・ロペスの後に続くスパニッシュ系女優がやっと現れるようになったかと思っていた。彼女がスペイン語ぺらぺらでも私はまったく驚かない。


そしたら今回初めてまともに調べてみたら、実は彼女はイタリア系アメリカ人で、別にスパニッシュ系でもなんでもなかった。あの、ちょっと地黒そうな肌の色といい、顔つきといい、カリブあたりの血が入ってるもんだとばかり思っていた。でも、そう言われてみると、確かにロペスよりイーディ・ファルコあたりの方と共通点が多いかもしれない。エスポジト、それに「ブラインド・ジャスティス」のマリソル・ニコルズと、スパニッシュ女優は着実に地盤を築いているとばかり思っていたのに (因みにニコルズの方は実際にラテン系だった。) いずれにしても、そのような理由で私はエスポジトに注目していたので、また「スピン・シティ」のようなコメディ系に戻るよりは、シリアス系のエスポジトの方が見たいとは思っていたが、それでも彼女が主演の新番組を見ることに対しては吝かではなかった。


その新番組「リレイテッド」でエスポジトが演じるのは、ニューヨークに住むキャリアばりばりのビジネス・ウーマン、ジニーで、女ばかり4人姉妹の長女というしっかり者だ。実はジニーだって仕事以外にもボーイ・フレンドとの間にたぶん予定外の妊娠をしてしまい、自分自身結構忙しいのだが、その下の3人の妹は何かがあると最終的には必ずジニーを頼ってくるという役どころだ。実際エスポジトは、頼れるお姉さん、みたいな印象がある。


下の3人の妹たちを演じるのが、次女アンにキーレ・サンチェス、3女マージーにリジー・キャプラン、末っ子のローズにローラ・ブレッキンリッジという面々で、この3人は私はまるで聞いたことがなかった。4姉妹の中で最も可愛くて印象的なのはローズを演じるブレッキンリッジだろうが、これは最初からそういう甘えっ子という設定なので、当然そういう子を選んでいるのだろう。可愛い顔して意外にハスキーな声なところも印象に残りやすい。10年前くらいの時のアリッサ・ミラノを思い出す。


ジニーの恋人ボブを演じているのが英国人俳優のカラム・ブルーで、最近、アメリカでは英国出身の俳優がもてる。女優は特にそうでもないのだが、男優が英国訛りの英語をしゃべるのはセクシー、知的だと思われている節があり、オーランド・ブルームだとかコリン・ファースだとか、正統派の英国俳優が引く手数多だ。今年始まった深夜トークの「レイト・レイト・ショウ」の新ホスト、クレイグ・ファーガソンはスコットランド出身で、ふだんはやはりスコットランド訛りでしゃべるのだが、その本人が番組内で、アメリカ人は英国訛りをセクシーだと思っており、自分がこの職を得ることができたのもこのアクセントが貢献している、みたいなことを言っていた。


もちろん度が過ぎると逆効果で、今FOXで放送中の医療ドラマ「ハウス (House)」で主演しているヒュー・ローリーの場合だと、今度はあまりにも正統的に度の強過ぎるオックスフォード訛りになってしまい、同国人が聞くとたぶんにそれが高度の教育を受けた証明のように聞こえるのだろうが、アメリカ人を含め外国人の耳から聞くと、ただただ聞きとりにくいヘンな抑揚のある英語に聞こえてしまう。そのためローリーの場合、「ハウス」ではわざわざ意識して米語をしゃべっているのだが、こないだプレゼンターとして出てきたエミー賞授賞式でお国言葉丸出しでしゃべったところ、一緒に出てきた「スクラブス」のザック・ブラフが、その違いの大きさに目を丸くしていた。こうなると外国人の耳には、知識人の英語も下町のコックニー訛りも、何言ってるかさっぱりわかんない、みたいな点で同じになってしまう。


話を元に戻して「リレイテッド」のボブだが、どうも番組第一回を見る限り、ジニーと同居しているボブが働いている様子はなく、どうやら彼女の稼ぎでボブを食わしてやっているらしい。それなのにボブがうちでしていることは、新型の音響システムをどう設置するか頭を悩ますことくらいだ。つまりボブはほとんどヒモなのだが、近年、男でも女でも稼げるものが稼いでパートナーを養うという状況は、ごく自然に人々に受け入れられている。もちろん陰で穀つぶしなんて言われたりもするが、そういうカップルのあり方自体は現在では都会ではかなり自然な形として受け止められている。


考えたら、カップルでどちらか一人の稼ぎがあれば充分食っていけて、一方は別に働かなくてもいいなら、その役割分担を、稼ぐ方が男、うちにいるほうが女なんて決めつける必要はない。そのカップルのお互いが了解してさえいれば、どっちがどっちでもまったくかまわないわけだ。うちで好きなことをして暮らしていけるこういう状況は、実は男の方にとってこそ歓迎すべき事態なんじゃなかろうか。カップルが妊娠を避けたり後回しにしたりすることの多い現在では、特にそうだと思う。ああ、私も働かないで好きなことだけして暮らしていたい。結構炊事洗濯は得意です。


「リレイテッド」の製作総指揮は「フレンズ」のマータ・カウフマンで、彼女は実際の番組クリエイターではないが、たぶんその経験を買われて番組をデヴェロップすることの方で貢献したのではないかと思われる。実際、できあがった番組は「フレンズ」との共通点が多々ある。その筆頭が、「フレンズ」はニューヨークを舞台にしていながら実際にはLAで撮られているが、「リレイテッド」も同じくNYを舞台にしていながらLAで撮影されているという事実だろう。


もちろん基本的にスタジオ撮影のシットコムである「フレンズ」と、屋外撮影も多いドラマの「リレイテッド」では撮影手法は異なる。NYのアッパー・ウエストとはまるで嘘っぱちで、登場人物はLAから一歩も外に出ていない「フレンズ」と、どうしてもたまにはNYに足を運んで街頭撮影をする必要がある「リレイテッド」を単純に比較するわけにはいかない。とはいえ、そういう根っこのところが同じという事実から来る似たような感触というものは確かにある。


それに「リレイテッド」では、NYでも撮影しているのだが、それがどうしてもNYである必要がある時以外は、やはりセットやLAの街頭の撮影でごまかしており、その頻度はかなり高い。その辺が「フレンズ」っぽいという点がまずある。そのセットも、たとえばプレミア・エピソードの冒頭では4姉妹が並んで座るビルの前の石段なんてのがあるが、あれはNYのビルにしてはゆとりがあり過ぎる。4人を並んで座らせたかったのだろうが、マンハッタンであれくらい幅をたっぷりととった石段がある住居ビルなんてのはまずお目にかかれない。LAだと場所があるからそういうビルもあるんだろうが、あのシーンで既にNYらしさを失っており、結果として、オーセンティックなNYドラマというより、「フレンズ」的擬似NYドラマという印象を強く受ける。


このことはジニーが住んでいる部屋の間取りとかを見ていても感じるのだが、これでは「フレンズ」のまったく架空のアパートと一緒で、いくら高給とりのエグゼクティヴという設定でも、恋人を食わしてあれだけスペースのあるマンハッタンの高級アパートに住むには、こいつ、いったいいくら稼いでいるんだと思ってしまう。もちろん、そういう憧れのNY生活 (もちろん番組の中では彼女らは苦労しているのだが) を描く想像の中のNYドラマを作ろうとしているのはわからないではないが、かなり現実の人々の生活とは違うという印象を受ける。「フレンズ」のようなシットコムではそれはほとんど気にならないが、リアリティという要素が入り込んでくるドラマでは、そのことに多少の違和感を感じてしまう。


一方、「フレンズ」的軽いコメディ・タッチのリレイションシップ・ドラマとして受けとるならば、こういう方向性は逆にかなり有効だろう。こういう番組では恋人とのブレイクアップや様々な障害が、むしろ人生のスパイスやギャグとして利用される。例えば、番組第1回で6年間付き合ってきた恋人と別れる別れないの瀬戸際に追い込まれた次女アンはジニーに相談するが、それがどれくらいシリアスな状況であるかを確認するために、ジニーはその時のシチュエイションを再現して演じてみたりする。こういった厳しい状況での面白哀しい呼吸は確かに「フレンズ」のもので、思わずにやりとしてしまう。


「リレイテッド」が同じくWBで放送されている姉妹ドラマ (こちらは3人姉妹だが) の「チャームド (Charmed)」に匹敵する人気を得るかどうかは微妙だと思うが、「リレイテッド」も登場人物はそこそこ魅力的であるとは言える。むしろ番組の今後の成否は、これから間違いなく登場してくるはずの、姉妹に絡む男どもの役作りにこそかかっているんじゃないだろうか。こういう白人姉妹が主人公の番組で、彼女らにアジア系男優が絡むことになれば、こちらとしてもかなり興味が持てるんだがなと思うのであった。






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