リフレイムド: クラシック・フィルムス・イン・ザ・リアヴュウ・ミラー (Reframed: Classic Films in the Rearview Mirror) 

放送局: TCM 

放送日: March/2021 


内容: 人種差別描写等で問題が指摘されているクラシック洋画について紹介・議論する。 


_______________________________________________________________

Reframed: Classic Films in the Rearview Mirror


リフレイムド: クラシック・フィルムス・イン・ザ・リアヴュウ・ミラー 

近年、人種問題や差別に対する運動の勃興によって、様々な過去の事案や負の遺産が見直されるようになった。特に、かつての南北戦争時代の南軍の英雄の銅像が、至るところで撤去されている。やがて黒人の女性奴隷を孕ませたトマス・ジェファーソン大統領の顔の彫像も、ラシュモア山から削り取られる運命にあるのかもしれない。 

 

という想像があながちあり得なくもなさそうに思えるのも、先頃クラシック映画を放送するTCM (Turner Classic Movies) が、時代に相応しくないとして、これまで人々に愛されてきたクラシック映画を自ら見直し、問題点を指摘しているからだ。TCMは放送に先立ち映画批評家たちに議論・コメントさせた上で、下記の18本のクラシック作品を放送した。 

 

「ジャズ・シンガー (The Jazz Singer)」 (1927)  

「有頂天時代 (Swing Time)」 (1936) 

「四枚の羽根 (The Four Feathers)」 (1939)  

「風と共に去りぬ (Gone With the Wind)」 (1939)  

「ガンガ・ディン (Gunga Din)」 (1939)  

「駅馬車 (Stagecoach)」 (1939)  

「女性No.1 (Woman of the Year)」 (1942)  

「ドラゴン・シード (Dragon Seed)」 (1944)  

「船乗りシンバッドの冒険 (Sinbad, the Sailor)」 (1947)  

「ロープ (Rope)」 (1948)  

「掠奪された七人の花嫁 (Seven Brides for Seven Brothers)」 (1954) 

「捜索者 (The Searchers)」 (1956) 

「類猿人ターザン (Tarzan, the Ape Man)」 (1959)  

「サイコ (Psycho)」 (1960)  

「ティファニーで朝食を (Breakfast at Tiffany's)」 (1961)  

「噂の二人 (The Children's Hour)」 (1961)  

「マイ・フェア・レディ  (My Fair Lady)」 (1964)  

「招かれざる客 (Guess Who's Coming to Dinner)」 (1967) 

 

最初、リストを見て「ジャズ・シンガー」 や「有頂天時代」と続いているのを見た時は、白人俳優が顔を黒塗りして出ているこれらの作品は、確かにまずいかもと思わずにやりとしたが、「風と共に去りぬ」もそうかと思った。要するに暗に奴隷制を容認している描き方が問題視されている。 

 

「駅馬車」や「捜索者」というジョン・フォードのクラシック西部劇もそうだ。確かにネイティヴ・アメリカンの描き方が画一的差別的という指摘は、頷かざるを得ない。「掠奪された七人の花嫁」は楽しんで見たのだが、女性人権無視と言われれば返す言葉もない。 

 

最も意外、というか驚かされるのが、下の方に固まっている「ティファニーで朝食を」、「噂の二人」、「マイ・フェア・レディ」と続くオードリー・ヘップバーン主演の3作品だ。晩年はユニセフ親善大使として世界中で慈善活動に尽力した女優の主演作品が、人種差別を助長すると見られて注意を喚起されている。まさか本人もこういうことになろうとは夢にも思ってなかったに違いない。 

 

一方「ティファニーで朝食を」は、内容そのものよりも、確かにミッキー・ルーニー演じる鉢巻きをした日本人は、昔見た時は国辱ものと思ったのは事実だ。今ではそういうガイジンの思い込みやカン違いから見た日本の描き方を楽しんで見ているが、まあ差別ととられてもしょうがあるまい。 

 

もちろんこういう時代による意識の変化は、なにもクラシック映画だけに限らない。小説やその他の、世に発表された作品には多かれ少なかれこの問題は今後共つきまとう。 

 

私は最近、ちょっと鈍ってきた頭を活性化させないとと思って、苦手だった数学を勉強し直すかとその手の本をチェックしていて、元々は少年少女向けの数学の入門書としてロングセラーの矢野健太郎の「数学物語」をhontoで試し読みしてみた。そしたら、いきなり「土人」とか「未開人」という用語が出てきたのには引いてしまった。初版は1930年代のようだから、その時は何でもなかったのかもしれないが、今ではさすがにそれじゃまずいだろうという思いを禁じ得ない。要するに、今回のクラシック映画の見直しも同じことだ。 

 

手塚治虫のマンガでも、そういう言葉は結構出てきていたような気がする。だいたいそういう時、出版社は、現在ではそぐわない言葉使いがあるが、発表当時の時代を考慮してそのままにしてあります、みたいな逃げを打つのが相場だ。今後もこの手が通用するのか、それとも大きな改訂を必要とするほど人々の意識は変わっていくのだろうか。 


 


 









< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system