Rectify   レクティファイ 

放送局: サンダンス 

プレミア放送日: 4/22/2013 (Mon) 22:00-23:00 

製作: グラン・ヴィア・プロダクションズ、ジップ・ワークス 

製作総指揮: レイ・マキノン、マーク・ジョンソン、メリッサ・バーンスタイン 

出演: エイデン・ヤング (ダニエル・ホールデン)、アビゲイル・スペンサー (アマンサ・ホールデン)、アデライデ・クレメンス (トーニー・タルボット)、クレイン・クロウフォード (テッド・タルボット・Jr.)、ブルース・マキノン (テッド・タルボット Sr.)、J. スミス・キャメロン (ジャネット・タルボット)、ジェイク・オースティン・ウォーカー (ジャレッド・タルボット)、ルーク・カービー (ジョン・スターン)

  

物語: ティーンエイジャーの時にガールフレンドをレイプして殺した罪によって死刑を宣告されていたダニエルが、DNA鑑定によって無実が証明され、19年後に釈放される。母ジャネットは再婚して、ダニエルには義兄弟ができていた。妹のアマンサも兄の釈放を喜ぶが、しかし19年の空白は容易には埋まらない。一方、当時彼を逮捕した警官や関係者は面白くない。そしてダニエルの無実が証明されたことは、他に真犯人がいることを意味しており、その者 (たち) がダニエルの釈放を快く思っていないこともまた明らかだった‥‥


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Rectify


レクティファイ   ★★★

また地味なドラマなのだ。設定が面白みがないとか、エキサイトメントに欠けるとかいうわけではない。死刑執行囚が、冤罪が認められて釈放される。本人にとっても、周りの者にとっても大きな事件だ。決してドラマティックでないわけではない。 

  

とはいえ、だからといって本人の周りで何か突拍子もないことがすぐに続け様に起こるわけでもない。20年間社会から隔離されてきた男は、まず社会に適応することから始めなければならない。それはゆっくりとした、しかし休む暇のないプロセスだ。 

  

あれだけ渇望した自由が、いざ実現してしまうと、それをどう扱っていいかわからない。仕事があるわけでも恋人がいるわけでもなく、特にやりたいことがあるわけでもない。ただただ有り余った時間を持て余す。家族は彼を腫れ物に触れるように扱う。これでは独房の中にいた時とほとんど変わらない。  

 

冤罪は、アメリカにおいては日常茶飯事、とまでは言わないが、わりと頻繁に起こることは事実だ。近年のDNA鑑定により、犯罪が起きた当時では不可能だった科学的鑑定が現在可能になっており、再鑑定によって無実が証明されるという例が後を絶たない。 

 

つい先日も、確か殺人で死刑宣告されていた男が、DNA鑑定によって無罪になって釈放されたという話がニューズになっていた。そしたらこの男、釈放された翌日だかに心臓発作を起こして病院送りになった。あまりもの環境の激変に、身体も精神も耐えきれなかったのだろうという医者の談話があったが、これはもう、素直に納得できる。 

 

それまでは、いつ死刑執行台送りになるかとびくびくしながら毎日を送っていたものが、いきなり娑婆に出てもいいと言われ、そして外に出た途端、自分が何をしていいのか、何をすべきなのかわからず戸惑う。この環境の変化に人は耐えられない。 

 

一般論では、少なくともあらゆることを規制され、監視される刑務所よりも、娑婆の方が楽なはずだ。しかし実際はそうではない。閉じられた社会からいきなり開かれた社会に追い出されてのインフォメーション・オーヴァーロードは、刑務所の中にいた時とほとんど変わらないか、むしろそれ以上のストレスを身体にかける。身体は既に長年の刑務所暮らしの方に慣れている。 

 

さらに周囲の目はもっと疑い深く、誰もがダニエルの釈放を心から喜んでいるわけではない。実際にそのダニエルの家族経営のオート・パーツ・ショップは、ダニエルが釈放されることによって売り上げが激減してしまう。家族間ですらダニエルの釈放は必ずしも歓迎されない。 

 

私が「レクティファイ」を見て思い出したドラマが三つある。一つは、同様に無実の罪で長年服役した後に、やはり冤罪が認められて釈放された元刑事を描いたNBCの「ライフ (Life)」と、ゆっくりと、悠揚迫らぬペースで1シーズンをかけて一つの事件を追った、AMCの「ザ・キリング (The Killing)」、そしてやはり刑務所から出所したばかりという主人公を描いた、シネマックスの「バンシー (Banshee)」だ。 

  

「ライフ」の場合は単純に設定が近い。長い間無実の罪で刑務所に入れられていた男が、裁判の誤審が証明されて釈放される。男が考えているのは復讐か魂の平安 か。「キリング」の場合は、設定ではなく、話が進んで行くペース配分、ゆっくりと前進するそのリズムが、番組を思い出させる。「バンシー」はヴァイオレントなアクションで、実は話の進行自体に似ている点はこれっぽっちもないのだが、とにかく主人公が刑務所から出てくるのが「レクティファイ」同様シリーズの冒頭のシーンになるということで、思い出した。 

 

こういう似ている何かをやたらと連想させるというのも、物語の進行がゆったりとしているからで、面白くないわけじゃないが、テンポがスロウ過ぎるかも、「キリング」はまだ殺人事件を追っていたが、「レクティファイ」はドラマ重視だから、ずっとこれだと見続けるのはちょっときついかも、と思っていた。 

 

そしたら第1話の最後では、20年前に事件に関わったと思われる男が、ダニエルが出所した事実を受けて、拳銃で自殺する。どうやら事件は奥が深く、ダニエルを嵌めようとした男 (たち) が、事件を掘り返されることを怖れて行動を起こそうとしているらしい。南部の小さな町で、少しずつ何かが動き出す。 

 

主人公ダニエルを演じるエイデン・ヤングは、デブラ・メッシングが主演したライフタイムのミニシリーズ「スターター・ワイフ (Starter Wife)」で絶対目にしているはずだが、記憶には残っていない。一方、妹のアマンサを演じるアビゲイル・スペンサーは、こないだE!の「バーニング・ラヴ (Burning Love)」に出ているのを見たばかり。ちょっと若い頃のコートニー・コックスを思い出させる。製作はAMCの「ブレイキング・バッド (Breaking Bad)」のマーク・ジョンソンとメリッサ・バーンスタインで、「ブレイキング・バッド」とはまた異なるテイストの気になるドラマを作った。 










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