放送局: CW

プレミア放送日: 3/6/2007 (Tue) 21:00-22:00

製作: ワーナー・ホライズンTV、10x10エンタテインメント、プッシーキャット・ドールズLLC、インタースコープA&Mレコーズ、ワンダーランド・サウンド・アンド・ヴィジョン

製作総指揮: ロビン・アンティン、ロン・フェア、マックG、ケン・モック

ジャッジ: ロビン・アンティン、ロン・フェア、リル・キム

ホスト: マーク・マグラス


内容: プッシーキャット・ドールズの新メンバーを決める勝ち抜きリアリティ・ショウ。


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私は車に乗っている時はだいたいFMを聴いているし、深夜垂れ流しになるMTV2やMTVヒッツ (Hits)、VH1のミュージック・ヴィデオも結構チェックしているので、流行りの曲ならまず耳にしている。著名どころの音楽アウォーズ中継はまず逃さないし、FOXの「アメリカン・アイドル」だって毎回見ている。しかし、だからといって特にポップスが得意かというとそういうわけでもなく、ごくごく一般的な音楽ファンというくらいに留まるだろう。


つまり私にとって、どんなに人気があろうとプッシーキャット・ドールズは、そのヒット曲を知ってはいても、ドールズが何人で構成されているか知っていて、彼女らの顔と名前を一致させることができるかというと、そこまではできないしわからない。だいたい、私くらいの年齢のポップス・ファンというと、そんなもんだと思う。


だから今回、CWがプッシーキャット・ドールズの新メンバーを探す勝ち抜きのリアリティ・ショウを編成すると聞いても、特に何の感懐も抱かなかった。一昨年に、事故死したTLCのレフト・アイの代わりの新メンバーをやはり勝ち抜きで探した番組「アー・ユー・ザ・ガール・ウィズ・T-ボズ・アンド・チリ (R U The Girl with T-Boz & Chilli)」を編成したのも、他ならぬCWの前身ネットワークのUPNであったからして、こういう番組がたまさか現れてくることに関しては、まあそういうもんだろうなと思っただけだ。


プッシーキャット・ドールズは、元々コレオグラファーのロビン・アンティンが90年代に企画したユニットで、それがハリウッドのセレブリティや音楽レーベルのエグゼクティヴの目に留まったことでとんとん拍子に名が売れた。要するにそもそもの発祥がそういう寄せ集め的なものだったため、メンバーの組み合わせの自由度が高い。ドールズの中の誰か個人としてではなく、ドールズというユニットとして売っており、一人二人くらいメンツが入れ替わってもほとんど誰も気にしないため、これまで頻繁にメンツを入れ換えながら現在まで続いている。いわばメンバーを入れ換えながら延々と続いていく、アメリカ版のモーニング娘のような企画ユニットなのだ。


なるほどと思って調べてみたところ、現在のメンバーは6人。最も目にする頻度の高いリード・シンガーはニコール・シャージンジャーで、実はなんと彼女、これまたCWの一方の前身であるWBが2001年に、かの「アメリカン・アイドル」より先に放送していた同種の勝ち抜きアイドル発掘番組「ポップスターズ (Popstars)」で選ばれて構成された女の子5人組のユニット、エデンズ・クラッシュ (Eden's Crush) の元リード・シンガーだった。エデンズ・クラッシュは一時それなりにヒット曲を歌って人気があったが、いつの間にやら聞かなくなった。私もすっかり忘れていたが、シャージンジャーはその一人だったか。まったく顔を失念していた。しかし、結局エデンズ・クラッシュも長続きしなかったのだな。


因みに「ポップスターズ」はWBで第2シーズンまで放送された後、キャンセルされた。番組は「アイドル」より先んじていながら「アイドル」のように人気番組として確立できなかったわけだが、その理由は、「アイドル」のスピンオフ番組で、同様にアイドル・ジュニアたちをグループで選ぶという「アメリカン・ジュニアス」がやはり失敗した理由とかなり重なると思う。


つまり、自然発生的でないグループをデビューさせようという発想に、そもそもの無理があるのだ。どんなにお互いの仲がいいグループでも、続いていくことがかなり難しいのは明らかであり、そんなの、TLCやデスティニーズ・チャイルドやスパイス・ガールズの例を持ち出すまでもない。それなのに、そこに視聴者の希望や予想というさらに外部の要素を組み入れた場合、そのユニットが継続していく可能性はかなり低くなるだろうというのは誰だって簡単に予想できる。モーニング娘、およびドールズが息が長く続いているのは、その点を最初から見越して、ダメだったらすぐ次のメンバーを補充し、新しいメンツでやっていくというシステムを構築できているからなのだ。


因みにドールズの場合、シャージンジャーの加入は2003年で、キンバリー、メロディと共に、最も新しいメンツの一人。それなのにいきなりその最新参の彼女がリード・ヴォーカルに収まってしまい、それがすぐに定着するところがドールズのドールズたる所以だ。要するに、ドールズはビジネスなのだ。最も見場のいい者をフロント・パーソンとして前面に推し出すのは当然だろう。因みに最も古いカーミットは95年からのメンバーだ由。その他はアシュリーが2001年、ジェシカが2002年からのメンバーだ。


そういう成り立ちを持ち、常に新しい才能と血を欲しているドールズが、新メンバーを募集し、それを篩いにかける模様をリアリティ・ショウとしてTVシリーズ化するという発想は、関係者からごく自然に生まれてきたに違いない。遅かれ早かれきっと誰かが思いついたろう。TLCのように欠けたメンバーを補充するというのではなく、いつでもその時に最も光っている子をメンバーとして取り込んで売っていけ、常に新風をグループに吹き込み続けることができるドールズだからこそ、この企画は生きると思われる。毎年は無理としても、そこそこの視聴率がとれるなら、隔年くらいの頻度でメンバー・チェンジをしながらずっと番組を続けることも可能だ。


番組ホストを務めているのはシュガー・レイのマーク・マグラスで、この男、明らかにシンガーとして以外のキャリアの道を模索している。今回以外にも、「ヴィクトリアズ・シークレット・ファッション・ショウ」やその他の音楽アウォーズ中継等でホストをしているのを何度も見たことがある。それにしてもシュガー・レイはいったいどうなったんだ。最近活動しているようには見えないが。


ジャッジはそもそものドールズ発案者であり中心メンバーであったアンティンと、ゲフィン・レコードのロン・フェア、そして女性ラッパーとして人気のあるリル・キムの3人が務めている。製作総指揮に「チャーリーズ・エンジェルス」のマックGの名があったので驚いたが、実は彼はアンティンのボーイ・フレンドなのだそうだ。さらに製作総指揮には、「アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル」のケン・モックの名もある。それにしてもアンティンの顔ってかなり人工くさいが、多少手を入れているのは間違いないと思われる。


番組はまず、8,000人という応募者の中から選ばれた18人を、その半分の9人に絞るところから始まる。これが人気番組として定着している「アメリカン・アイドル」だと、それ以前の全米各地のオーディションに応募してくるカン違いにーちゃんねーちゃんたちの紹介もかなり面白いのだが、「ザ・サーチ・フォー・ザ・ネクスト・ドール」の場合はそういうわき道には寄らずいきなり本題に入る。まだ今後どうなるかよくわからない新番組だからそれも仕方がない。もし番組がヒットして第2シーズンも製作されるようなら、今度は各オーディションの奇人変人特集も一回くらいは付け加えられるに違いない。


プレミア・エピソードでは、まず残った18人が実際にドールズのコンサートに招待されるのだが、興奮も束の間、その前後に食べたものが悪かったのか、何人かが急に体調の不調を訴え、屋外やトイレなどその辺に盛大に吐きまくる。よくカメラも追ってって撮っているもんだ。あの子らも既にTV番組に出ているので今さら撮るなと言えなかったのか、それともそんなことに気を回している余裕もなかったのか。しかも翌日は最後の9人に入るための自分たちの最後の予選オーディションが控えているというのに。


実際、最終オーディションの日にちは動かせず、何人かは会場の舞台袖に簡易ベッドを作り、救護班が待機している中を点滴を受けながらのオーディションとなった。ほとんど他人の肩を借りないと自分で立って歩くこともできなさそうなのに、いったん舞台に上がるとそれでも歌って踊るところが既に芸人としての根性を見せていると言えるか。あるいはもしかしたら本当は、まったく別の日に行ったものを編集でいかにもそのように見せているかもしれないという可能性も残る。畢竟これはエンタテインメント番組なのだ。番組を面白くするためならプロデューサーはなんだってやるだろう。少なくとも「あるある」のような嘘をついているわけではない。


番組は2回目以降、3人ずつのグループ、二人ずつのグループに分けられ、グループ・パフォーマンスを行った後、最もできの悪かったグループから一人ずつ落としていくという勝ち抜きの消耗戦に入る。見ていると、歌はうまくても踊れない子、躍らせると抜群だが歌唱力が伴わない子、歌って踊れるのに顔やスタイルがイマイチな子など、たった9人でも色々なタイプがいる。おかげで、別にさほど期待もせずに見始めたのだが、それなりに面白い。少なくとも、歌って踊れて見場もいいミュージカル・パフォーマーを探すと大々的にうたった挙げ句、番組自体が尻すぼみに終わったNBCの「グリース」よりも、こちらの方がまだ面白い。


さて、ここまでの段階で私の優勝者の予想は、見場重視でメリッサ・S、芸能界という場所で根性を見せて生き残っていけるという観点からならチェルシーといったところか。メリッサ・Sは、少なくとも顔だけを見るといかにもドールズという感じがするくらいはまっているのだが、実はそれほど身長がなく、全体としてのプロポーションとしては、他のドールズと並んだ場合を考えると少し難がなくもないという気はする。実際、前回シシリーが落ちたのは、顔とプロポーションに癖がありすぎたという点が大きかったように思う。一方、今回落ちたマリエラは、一緒にパフォーマンスしたチェルシーに気迫負けしたという感じが強かった。かなり飲まれていたように思う。


それにしても、かのブリトニー・スピアーズがこの番組に出たとしても、どんなに可愛くて歌もダンスもうまかろうと、踊りながらでは歌えないスピアーズはまず勝ち残ってはいけないだろうと思わざるを得ない。時には天は、四物を持っていなくても三物くらい持っているなら成功するチャンスを与えるのだな、それでも二物くらい持っている人間ならどこにでもごろごろいるのだと思わせられるのだった。



追記 (2007年4月)

番組は後半、私が予想したメリッサSが最後の4人になった段階で落とされ、残るはチェルシー、メリッサR、エイジアの3人となった。チェルシーとメリッサSはかなりライヴァル意識が強く、チェルシーは歌はうまいのだがダンスが弱かった。見かねてエイジアがチェルシーにダンスを教えていたりしたのだが、ダンスの方が得意なメリッサSは、これは競争なんだから私はチェルシーにダンスなんか教えないもんねと堂々と口にしていた。実はそのことがジャッジから嫌われたという感触が濃厚だ。


そして最終回では、今度はメリッサRとエイジアが対立してしまい、明け方まで寝ないで罵り合い、チェルシーは横目で様子をうかがうという展開になってしまった。どうなることかと思ったが、この3人では最初に落とされたのはチェルシー。やはりダンス・ユニットという特色の強いドールズにおいて、踊れないというのは致命的だった。結局勝ったのはブロンクス出身のシングル・マザーのエイジア。


彼女は歌も踊りも見かけも悪くなかったのは確かだが、最後の段階で、ライヴァルであるはずのチェルシーにダンスを教えていたという点が実はポイント高かったと思う。ドールズは寄せ集めのユニット企画なのであって、ユニット内ではライヴァル意識よりもお互いに助け合うということの方が重要になるはずだ。そこでメリッサSのように誰それをライヴァル視なぞしていたら、ユニットが機能しなくなってしまう。そういう視点から、ユニット内でもちゃんとやっていけそうなエイジアの株が俄然上昇したのだと思う。さらに黒人のエイジアは、ユニットのバランスや、黒人ファン層を取り込むというビジネスの観点からもポイント高かったに違いない。


番組はある程度の成功を収めたため、既に第2シーズン製作が発表になっている。私はだいたい隔年くらいでメンバーを入れ換えながら製作できると思っていたんだが、どうやら毎年やる気でいるようだ。まあ、その気になれば別にメンバーを入れ換えるのではなく、単純にメンバーを足しながらやってってもいい。10人くらいになったらきっとなんかの理由で誰かは辞めていくだろうし、別に誰かをクビにしなくとも自然淘汰的にメンツは入れ代わっていくものと思われる。本当にドールズはビジネスなのだ。



追記 (2008年2月)

たぶん毎年新シーズンが製作されると思われた「プッシーキャット・ドールズ・プレゼント」、1年後に新シーズンが当初の発表通りに編成されたが、私が考えたようにまたドールズの新しいメンツを補充するための番組ではなく、今度はドールズがプロデュースする新しいガールズ・バンドを作るための番組だった。新シーズンの番組は「ガーリシャス (Girlicious)」という副タイトルがつき、ガーリシャスというのがそのままバンド名となる。やはり毎年新メンバーを補充するというアイディアはさすがに無理だったか。それよりもエイジアが新メンバーになっているはずのドールズそのものをまだ見たことがないのだが、本当にエイジアはドールズの一員としてデビューしているのか。ちとiTunesでもチェックしてみるかな。







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プッシーキャット・ドールズ・プレゼント: ザ・サーチ・フォー・ザ・ネクスト・ドール   ★★1/2

 
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