一人で勝手にノミネートして授賞して盛り上がる個人的アカデミー賞の第6回。



作品賞 (Picture)

「アバター (Avatar)」

「ザ・ハート・ロッカー (The Hurt Locker)」

「インフォーマント! (The Informant!)」

「イングロリアス・バスターズ (nglourious Basterds)」

「ア・シリアス・マン (A Serious Man)」

「マイレージ、マイライフ (Up in the Air)」


ここんとこ恒例の私的アカデミー賞を選ぼうとして、昨シーズンはわりと小粒の作品ばかりだったんだなと感じた。もちろん「アバター」という例外があり、「ハート・ロッカー」や「イングロリアス・バスターズ」等の戦争ドンパチものもあることはあるが、全体的に見て小粒の作品が占めているという気がする。だからといって特に質も低いとは思わないが、しかしどんなにさすがと思っても、やはり例年なら「ア・シリアス・マン」は作品賞候補には入れないと思う。


その中で、この一本を選ぶとなるとこのどちらかというので最後まで迷ったのが、「アバター」と、「マイレージ、マイライフ」だ。方やハリウッド大作の代表、方やインディ映画の代表と言える、完全に両極のこの2本をなぜ選んだかというと、時々、ひょっとした拍子にこの2作品の中のイメージが今でも頭の中で甦るのだ。今回はそのイメージが甦る頻度の高さで決めた。


「アバター」の浮遊する3D映像は、今冬、例年になく雪の多いニューヨークで、雪が降る度に思い出す。しかし「マイレージ、マイライフ」の、都市が変わる毎に上空からの視点で各都市の摩天楼に近づいていく映像も、同様にあのリズムで頭の中によく甦る。私の通勤路からはニューヨークの摩天楼が見えるのだが、朝、雪が降っていたりすると、エンパイア・ステイト・ビルを背景に、「アバター」と「マイレージ、マイライフ」の映像が目の前に交互に明滅する。要するに今回私が「マイレージ、マイライフ」を選ぶのは、ほぼ毎朝記憶に甦る都市の遠景の頻度が、特に雪が降る時に記憶が強く甦る「アバター」よりも高いからだ。



監督賞 (Director)

ジェイムズ・キャメロン「アバター」

キャスリン・ビグロー「ハート・ロッカー」

ニール・ブロムカンプ「第9地区 (District 9)」

コーエン兄弟「ア・シリアス・マン」

マイケル・マン「パブリック・エネミーズ (Public Enemies)」

スティーヴン・ソダーバーグ「インフォーマント」

クエンティン・タランティーノ「イングロリアス・バスターズ」


キャメロンはすごいとは思うしビグローにも感心するが、やはり職人芸を示してくれる演出家の方に惹かれる私の性向としては、コーエン兄弟、マン、ソダーバーグを評価したい。この演出家でなければこんな作品はできなかったろうという意味で、今回はソダーバーグ。



主演男優賞 (Actor)

ジョージ・クルーニー「マイレージ、マイライフ」

ブラッドリー・クーパー「ザ・ハングオーヴァー (The Hangover)」

マット・デイモン「インフォーマント」

コリン・ファース「ア・シングル・マン (A Single Man)」

マックス・レコーズ「かいじゅうたちのいるところ (Where the Wild Things Are)」

クリストフ・ヴァルツ「イングロリアス・バスターズ」


アカデミー賞では助演にノミネートされているヴァルツ、私の意見では彼こそが主演。そして彼より相応しい者もいない。



主演女優賞 (Actress)

アビー・コーニッシュ「ブライト・スター (Bright Star)」

メラニー・ロラン「イングロリアス・バスターズ」


実際のアカデミー賞にノミネートされている作品をほとんど見ていないこの部門、やっぱり私は女性映画というよりもアクションが好きなんだなと自分自身で納得。その限られた作品の中から私が選ぶのはロラン。



助演男優賞 (Supporting Actor)

スコット・バクラ「インフォーマント!」

ザック・ガリフィアナキス「ザ・ハングオーヴァー」

トム・ホランダー「イン・ザ・ループ (In the Loop)」

スティーヴン・ラング「アバター」、「パブリック・エネミーズ」

ブライアン・オバーン「ザ・バンク (The International)」


「アバター」が視覚的技術的な点以外に話として印象に残るのは、主演のサム・ワーシントンとゾーイ・サルダナのおかげではなく、ひとえにラングがいたからだ。寡黙なエージェント、有言実行の肉体派、どちらも見事。



助演女優賞 (Supporting Actress)

ヴェラ・ファーミガ「マイレージ、マイライフ」

アナ・ケンドリック「マイレージ、マイライフ」

レイチェル・マクアダムズ「消されたヘッドライン (State of Play)」「シャーロック・ホームズ (Sherlock Holmes)」

ローナ・レイヴァー「スペル (Drag Me to Hell)」

イメルダ・スタウントン「テイキング・ウッドストック (Taking Woodstock)」


「消されたヘッドライン」でも「シャーロック・ホームズ」でもマクアダムズはわりとおきゃんな性格づけなのだが、私としては「消されたヘッドライン」の方が好きだな。



脚本賞 (Original Screenplay)

コーエン兄弟「ア・シリアス・マン」

クエンティン・タランティーノ「イングロリアス・バスターズ」


両方ともストーリーとはまったく無関係な挿入部が気にかかるという、正直言って正当な評価の対象から逸脱するような作品なのだが、しかし、それが魅力というのが困る。その魅力の部分の大きさで「イングロリアス・バスターズ」。



脚色賞 (Adapted Screenplay)

ジェイソン・ライトマン、シェルドン・ターナー「マイレージ、マイライフ」

ニール・ブロムカンプ、ニール・タッチェル「第9地区」

スコット・バーンズ「インフォーマント!」


より難しいことを成し遂げているような気がする「インフォーマント」のバーンズに。



外国語映画賞 (Foreign Language Film)

このジャンルはミハエル・ハネケの「白いリボン (The White Ribbon)」、「アジャミ (Ajami)」、「ア・プロフェット (A Prophet)」等の、オスカーにノミネートされている作品の公開がちょうど始まったこともあり、それらを見る可能性も高いので、現段階での判断はパス。








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ごくごく個人的なアカデミー賞    (2010年3月)

 
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