一人で勝手にノミネートして授賞して盛り上がる個人的アカデミー賞の第4回。



作品賞 (Picture)

「3:10 トゥ・ユマ (3:10 to Yuma)」

「ラスト、コーション (Lust, Caution)」

「フィクサー (Michael Clayton)」

「ノー・カントリー (No Country for Old Men)」

「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド (There Will Be Blood)」


ノミネート作品を決めようとして「イースタン・プロミスィズ (Eastern Promises)」「ビフォア・ザ・デヴィル・ノウズ・ユアー・デッド (Before the Devil Knows You’re Dead)」「カサンドラズ・ドリーム (Cassandra’s Dream)」も外さなければいけないことに気づいて、改めて昨年は豊作だったのだなと思った。「告発のとき (In the Valley of Elah)」「ゴーン・ベイビー・ゴーン (Gone Baby Gone)」だって、例年なら候補に入れてもまったく差し支えない。


この中からまず熟考して「3:10 トゥ・ユマ」と「ラスト、コーション」を落とし、泣く泣く「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」も外す。「フィクサー」と「ノー・カントリー」でどちらにするかでまた煩悶した挙げ句、今回私が選ぶのは「ノー・カントリー」。



監督賞 (Director)

ウッディ・アレン「カサンドラズ・ドリーム」

ポール・トーマス・アンダーソン「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

コーエン兄弟「ノー・カントリー」

デイヴィッド・クローネンバーグ「イースタン・プロミスィズ」

デイヴィッド・フィンチャー「ゾディアック (Zodiac)」

トニー・ギルロイ「フィクサー」

ポール・ハギス「告発のとき」

アン・リー「ラスト・コーション」

シドニー・ルメット「ビフォア・ザ・デヴィル・ノウズ・ユアー・デッド」


印象的なシーンの演出がある作品をピックアップするとこのカテゴリーはすぐ満杯になってしまうが、それは昨年に続いて今回も変わらない。これでもぎりぎり絞っているつもりなんだが。本当ならここもコーエン兄弟と言いたいところだが、今回は初演出作でまったくヴェテランみたいな手慣れた演出を見せたギルロイに。



主演男優賞 (Actor)

クリスチャン・ベイル「レスキュー・ドーン (Rescue Dawn)」、「3:10 トゥ・ユマ」

ドン・チードル「トーク・トゥ・ミー (Talk to Me)」「再会の街で (Reign over Me)」

ラッセル・クロウ「3:10 トゥ・ユマ」、「アメリカン・ギャングスター (American Gangster)」

ダニエル・デイ-ルイス「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

トミー・リー・ジョーンズ「告発のとき」、「ノー・カントリー」


クロウもチードルもベイルもジョーンズも2作以上出演しているわけだが、ここは出演作が一作しかなくてもデイ-ルイス以外考えられない。



主演女優賞 (Actress)

マリオン・コティヤール「エディット・ピアフ 愛の讃歌 (La Vie en Rose)」

カリス・ファン・ハウテン「ブラックブック (Black Book)」

アシュリー・ジャッド「バグ (Bug)」

ニコール・キッドマン「インベージョン (The Invasion)」「マーゴ・アット・ザ・ウェディング (Margot at the Wedding)」

タン・ウェイ「ラスト、コーション」


例年男優賞に較べて女優賞選出でこれというのがなくて苦労するのは当然私が恋愛ものやファンタジー、コメディをほとんど見ていないためで、女優の層が薄いというわけではまったくない。昨シーズンは例年にも増してよくできた男映画が多かったけれども、それでも今回は主演女優もそれなりに見映えがする。これはアメリカ映画以外で印象に残る女優が多かったためだ。


その中で今回私が選ぶのはやはりコティヤール。本当ならねえ、やはり実際にアカデミー賞でも受賞確実と見なされている「アウェイ・フロム・ハー」のジュリー・クリスティを見ていなくちゃならないところなんだけど、近くに本当に歳をとって似たような問題を抱えている人間を知っていて、そうするとちょっときつくて、 どうしても見る気にならなかったのだ。



助演男優賞 (Supporting Actor)

ハビエル・バルデム「ノー・カントリー」

ポール・ダノ「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

キウェテル・イジョフォー「トーク・トゥ・ミー」、「アメリカン・ギャングスター」

アルバート・フィニー「ビフォア・ザ・デヴィル・ノウズ・ユアー・デッド」

ベン・フォスター「3:10 トゥ・ユマ」

トム・ウィルキンソン「フィクサー」、「カサンドラズ・ドリーム」


昨年あれほど誰にするか悩んだこのカテゴリー、今年はまったく悩まず3秒でバルデムに決まり。



助演女優賞 (Supporting Actress)

ケリー・マクドナルド「ノー・カントリー」

エイミー・ライアン「ゴーン・ベイビー・ゴーン」、「ビフォア・ザ・デヴィル・ノウズ・ユアー・デッド」

スーザン・サランドン「告発のとき」

ティルダ・スウィントン「フィクサー」

シャーリーズ・セロン「告発のとき」

メリッサ・トーメイ「ビフォア・ザ・デヴィル・ノウズ・ユアー・デッド」


だいたい主演女優に較べて助演女優賞を決める時の方が毎回苦労するのだが、ここも今回は本命スウィントン対抗サランドンですんなり決まった。ただこの二人でどっちにするかは悩んだ。息子を失った母として、おざなりの慰めの言葉をかけてくる相手に対して見せたサランドンの表情は簡単には脳裏から消えそうもないが、それでも彼女がいなければこの作品は成り立たなかったスウィントンは、作品そのものの成功の鍵だった。やはりここはスウィントンに敬意を表するべきだろう。



脚本賞 (Original Screenplay)

トニー・ギルロイ「フィクサー」

ケリー・マスターソン「ビフォア・ザ・デヴィル・ノウズ・ユアー・デッド」

スティーヴ・ナイト「イースタン・プロミスィズ」


ここは難しいなあ‥‥ オリジナリティではナイトという気がするんだが、完成度の高さではやはりギルロイか。マスターソンも捨て難いし‥‥うーん、というわけでここは初めての脚本でこれだけのものを書いたマスターソンに。



脚色賞 (Adapted Screenplay)

ポール・トーマス・アンダーソン「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」

コーエン兄弟「ノー・カントリー」


思うに「ブラッド」は脚色というよりもアンダーソンのオリジナル脚本に限りなく近いものになっているような気がする。原作を拡大敷衍して新しい神話世界を構築したアンダーソンか、原作の核を削りとって触れれば切れる抜き身の世界を提出したコーエン兄弟か。私の選ぶのはコーエン兄弟。



初監督賞

ベン・アフレック「ゴーン・ベイビー・ゴーン」


勝手に賞を作ってみた。



カムバック監督賞

シドニー・ルメット「ビフォア・ザ・デヴィル・ノウズ・ユアー・デッド」


ついでだからこれも。



撮影賞

ミルトン・カム「ヴァナジャ (Vanaja)」


実はこれ、私の地元では公開されてなくて作品自体を見ているわけじゃないのだが、私の知人が撮影監督なのだ。インディ映画だが全編インド・ロケで、本人からトレイラーの一部とかは見せられてよく撮れているに違いないのは知っているし、実際にインディ映画のアカデミー賞である今年のスピリット・アウォーズで、「潜水服は蝶の夢を見る」のヤヌス・カミンスキー、「ラスト、コーション」のロドリゴ・プリエトと同列で撮影賞にノミネートされている。ついでに言うと、私の学生時代の卒業製作の16mmの白黒短編映画の撮影を担当してくれたのも彼なのであった。本人は受賞はまず無理だろうと謙遜していたが、当然ここは私が推す。



外国語映画賞 (Foreign Language Film)

「ラスト、コーション」アン・リー


なんでもアカデミー賞では資本や主要関係者の国籍等のせいで、この作品は外国語映画賞にノミネートされる基準を満たしてないのだそうだ。むろんそういうことには頓着しないこのサイトでは、「エディット・ピアフ」でも「潜水服は蝶の夢を見る」でも「4ヶ月、3週と2日」でもなく、「ラスト、コーション」を讃えるものである。







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ごくごく個人的なアカデミー賞    (2008年2月)

 
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