放送局: FOX

プレミア放送日: 8/29/2005 (Mon) 20:00-21:00-22:00

製作: アデルスタイン-パロウズ・プロダクションズ、20世紀FOXTV

製作総指揮: ポール・スキューリング、マーティ・アデルスタイン、ドーン・パロウズ、マット・オルムステッド、ブレット・ラトナー

共同製作総指揮: マイケル・ワトキンス

製作: ギャリー・ブラウン、ニック・サントラ

共同製作: カリン・アッシャー

監督: ブレット・ラトナー (プレミア・エピソード)

脚本/クリエイター: ポール・スキューリング

撮影: ダンテ・スピノッティ

編集: エティエンヌ・デスロウリアズ

音楽: ラミン・ジャワディ

出演: ドミニク・パーセル (リンカーン・バロウズ)、ウェントワース・ミラー (マイケル・スコフィールド)、ロビン・タニー (ヴェロニカ・ドノヴァン)、サラ・ウェイン・キャリーズ (サラ・タンクレディ)、ピーター・ストーマー (アブラジ)、ステイシー・キーチ (看守ポープ)


物語: マイケルの兄リンカーンは、政府高官を殺した罪で刑務所におり、死刑執行をあと3か月後に控えていた。なにかの陰謀だとして無実を訴えるリンカーンだが、誰も聞く耳を持たない。業を煮やしたマイケルは、自分も刑務所入りし、兄と一緒に脱獄するしかないと決心をする。銀行に押し入り、わざと捕まって無事同じ刑務所に収監されることになったマイケルだったが‥‥


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「プリズン・ブレイク」は、2005年秋の新シーズンの先頭を切って編成されたFOXの新番組だ。FOXは10月にMLBのプレイオフやリーグ・チャンピオンシップ、ワールド・シリーズを中継するため、慣例となっている9月下旬に他のネットワークと足並みを揃えることをせず、それ以前に、気持ちフライング気味に新番組を投入するのがここ数年の習いとなっている。そのため、8月開始のシーズン新番組が多々ある。「プリズン・ブレイク」もその一つだ。


最も早く編成される新シーズンの新番組が人目を惹くことは当然であるが、「プリズン・ブレイク」は、その上、さらに番組内容の斬新さでも目を惹いた。なんせ番組タイトルからして「プリズン・ブレイク」、つまり、ずばり「脱獄」だ。なんでも1シーズンを使って刑務所から脱獄するドラマを作ってしまうらしい。うーむ、FOXは「24」の放送を開始した時もその斬新なアイディアで注目されたが、さすがに古株のネットワークとは編成の考え方が違うという感じだ。


しかし、そのアイディアはいいんだが、もし数字がとれなかったらどうするんだろうと、他人事ながら思ってしまう。生き馬の目を射抜くアメリカTV界のこととて、どんな番組だろうと視聴率が稼げなかった場合、早ければ数回放送されただけで番組はキャンセルされてしまう。もし「プリズン・ブレイク」がそうなった場合、主人公は刑務所に入れられて、脱獄なんてできないままそこでいきなり番組は終わってしまうことだってあり得るのだ。


また、それとは逆に、これがヒット番組として定着してしまった場合はどうなるのか。たぶん、番組本来のアイディアは、1シーズンを通して主人公が脱獄するまでを描くというものだろう。つまり、番組が無事1シーズン持ちこたえて放送されたとした場合、今シーズンの終わりには、主人公は脱獄を成功させるはず、あるいは失敗に終わって殺されたりする、なんて可能性もあるわけだが、いずれにしても、今シーズンの終わりにはなんらかの話の決着は着くはずだ。その時、シーズン2はあり得るのだろうか。


もちろん、大風呂敷を敷きまくって最後は超強引に話の辻褄を合わせ、これで続きなんて製作できるのと思っていた「24」が来春には第4シーズンを迎えることを思えば、人気さえ出れば何でもありで続編を製作するのは、アメリカTV界の常識である。「プリズン・ブレイク」が人気が出た場合、もし主人公が脱獄に成功しなかったとしたら、また次のシーズンいっぱいを通して地道に脱獄のチャンスに賭けるという案ももちろん存在するし、それはそれでもしかしたら面白いかもしれない。あるいは脱獄に成功した場合、「プリズン・ブレイク」という番組タイトルはそのままでも、今度は主人公の兄に濡れ衣を着せた相手に復讐して回る復讐ドラマになるかもしれない。つまり、やはり何でもありだ。ま、そんな先の話の心配を今から部外者がしていてもしょうがないわけだが。


番組では冒頭、いきなり主人公のマイケルが無謀な銀行強盗を企み、すぐさま逮捕されて刑務所入りする。それが話の目的だから当然だ。うまい具合に兄と同じ刑務所に入れられたマイケルは自分の持てるありとあらゆる才覚を使って脱獄の計画を練るが、当然、そこにはマイケルの邪魔をしようとする囚人もいれば手助けをしようとする囚人もいれば、看守の目も光っている。また、私は、いったんマイケルが収監された場合、カメラはほとんど刑務所から出ず、主人公の脱獄までの行動をとらえるドラマになるのだと思っていた。つまり、私が想像していた番組内容は「アルカトラズからの脱出」だ。あるいは「ショーシャンクの空に」でも、それこそ「ザ・ロンゲスト・ヤード」でもいいのだが、要するに、刑務所内のドラマだと思っていた。ところが、「プリズン・ブレイク」はちょっと違う。


考えたら、いくらなんでも1シーズンすべてを刑務所内だけで過ごすのは、やはりかなり無理だったようだ。そのため、だいたい3分の1くらいの時間を割いて、壁の外の世界、つまり、われわれの住む社会も描かれる。そこで、マイケルの兄リンカーンを罠にはめた連中と、その真相に迫ろうとするマイケルの協力者らも平行して描かれるわけだが、そこでは真相に迫ろうとする者、あるいはマイケルに協力しようとする者らが次々と消されて行く。一方、マイケルの脱獄の準備は着々と続いており、最新のエピソードでは、既にマイケルらの扇動により刑務所内に暴動が起こっていた。もしかしたらわりあい早く刑務所を脱出し、あとは復讐譚へと転化していくのかもしれない。しかし、何度も言うようだが、もしそうなった場合、シーズン2はどうなるんだろう。


主人公のマイケルに扮するのは、「白いカラス (The Human Stain)」のウェントワース・ミラーで、その時もすごく整った顔のハンサムなやつだなあと思ったが、それは今回も変わらない。こういう綺麗な顔を汚して泥だらけになって脱獄をするからこそいいんだと、当然作り手も考えているわけだ。そのわりには締まった身体つきをしており、この顔で本当に刑務所入りなんかしたら、周りの囚人どもがほっとかないだろうと危ない想像をしてしまう。兄のリンカーンに扮するドミニク・パーセルは、はて、どこかで、しかも何度も見たことのある顔だが思い出せないと思っていたら、3年前のUPNのドラマ「ジョン・ドー (John Doe)」で、記憶をなくした天才という主人公に扮していた彼だった。確かあの番組でも何者かにはめられて記憶をなくして追われていたはずだ。


刑務所内では、囚人のボス的存在ジョン・アブラジにピーター・ストーマーが扮している。また、男くさいドラマであるため、当然のことながら内外部でマイケル/リンカーンを助ける存在には女性があてられており、外で問題を追及する弁護士ヴェロニカにロビン・タニー、刑務所内の女医サラにはサラ・ウェイン・キャリーズが扮している。製作総指揮の一人に名を連ねているのは「レッド・ドラゴン」のブレッド・ラトナーで、パイロット・エピソードの演出も行っている。


この番組、舞台はイリノイ州ということになっているんだが、実は現在、イリノイ州はジョージ・ライアン元知事の鶴の一声で、現在は死刑制度は廃止、というか、棚上げされている (このあたりの詳細は「デッドライン」に詳しい。) つまり、リンカーンは死刑になることはないわけだ。もちろん事実とフィクションは異なるわけだが、ここは一つ、舞台をアメリカで最も死刑になる人間の多いテキサスに移し、近くの大都市はヒューストン、刑務所は見渡す限り砂漠の真ん中で、脱獄は10年に一度の超大型ハリケーンが直撃したその日、なんて設定にすれば、今ならば説得力だってかなり増すのに、なんて思ったりもした。



追記 (2005年11月)

脱獄なるかならずかで視聴者を引っ張ってきた「プリズン・ブレイク」、ついに、マイケルとその仲間が行動を起こし、当然思うように事は運ばず、すわ、計画発覚かと視聴者に気を持たせておいて、なんと次回はいきなり4か月後の来年3月からと予告が流れる。アメリカTV界ではだいたい新番組は6回、9回といった単位で小刻みに発注、製作されるため、まずここまでしか用意ができていなかったというのは当然あるだろうが、それだってFOXが番組の人気を確信し、「プリズン・ブレイク」が1シーズン全22エピソードを製作すると発表したのは先々月のことであり、充分次回以降製作の時間はあった。


ところで「プリズン・ブレイク」が編成されている月曜夜9時枠は、FOXの数少ないヒット・ドラマの一つである「24」が編成されている時間帯であり、来春から新シーズンが始まることは既に決定している。このまま行くと「プリズン・ブレイク」はうまく行くにせよ失敗するにせよ、脱獄計画が一段落した時点で新年を迎え、その上で今の放送枠を「24」に明け渡し、自分は他の時間帯に移らざるを得ない。たぶん、来春からいきなり新時間帯で続きを放送するよりも、脱獄が始まってこれからどうなるかという視聴者の注目が最大になっている今、一時的に棚上げし、来年3月から続きの放送を始め、シーズンの終わりに向けて盛り上げていこうという腹らしい。


もちろんこういう思惑は何も新しいものではなく、だいたいどの人気ドラマだって、通常5月のシーズン最終回に非常に思わせぶりなクリフハンガーで話を宙吊りにして視聴者をはらはらさせ、そのまま9月の新シーズンまで興味を持続させようとする。要するに今回の「プリズン・ブレイク」は同じことをシーズン中にしているだけに過ぎないのだが、しかし、やはりこんなこと、シーズンの途中でするか、普通。というわけでマイケルとリンカーンと一味の脱獄計画の帰趨は、来年3月までお預けなのであった。もうそん時は話のディテールなんて忘れちまってるよ、まったく。






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Prison Break

プリズン・ブレイク   ★★★

 
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