第5回プレジデンツ・カップ

2003年11月20-23日   ★★★★

南アフリカ、ジョージ、ファンコート・ホテル・アンド・カントリー・クラブ・エステイト

初日: フォーサム

前回はアメリカが初日5-0と完勝していきなり勝負を決めたが、今回も出だしはレティーフ・グーセン、ヴィージェイ・シングの、勝って当然の強力ペア以外は、序盤、すべてアメリカ・チームがリードを奪う。こりゃ今回もインターナショナルはダメかと思っていたら、それから挽回する。まず最初のフィル・ミッケルソン/デイヴィッド・トムズ組対ニック・プライス/マイク・ウィアー組は、ミッケルソン/トムズが16番を終わって1アップだったところを、続く17番パー3、18番パー5でプライス/ウィアー組が連続でとって1アップと逆転勝ち。アーニー・エルス/アダム・スコット組も、ジャスティン・レナード/ジム・フューリック組に対し、残り3ホールで2ダウンから3ホールを連続でとって、これまた1アップで逆転勝ち。


ロバート・アレンビー/スティーヴン・リーニー組もジェイ・ハーズ/フレッド・ファンク組に対し、これまた残り2ホールで2ダウンのドーミーから引き分けに持ち込んだ。最後のインターナショナル・チームの追い込みの方があまりに印象的だったので、アメリカ・チームのデイヴィス・ラヴ3世/ケニー・ペリー組がピーター・ロナード/ティム・クラーク組を4&2で破り、タイガー・ウッズ/チャールズ・ハウエル3世組がスチュアート・アップルビー/K. J. チョイ組を4&3で破ったマッチなんてほとんど印象に残らない。特にデイヴィス・ラヴ3世のできが非常によく、グリーン周りから連続してボールをカップに入れていたが、そんなのは霞んでしまった。これで初日、インターナショナル 3 1/2ポイント - アメリカ 2 1/2ポイント。因みに今回からは初日のフォーボールと3日目のフォーサムは前回の5ペアから6ペアに増えたため、合計で34ポイントとなり、勝つためには17 1/2ポイントを得ることが必要となる。



2日目: フォーボール/フォーサム

午前中のフォーボールはアメリカが3ポイント、インターナショナルが2ポイントで、これで共に5 1/2ポイントで並ぶ。しかし午後のフォーサムはアメリカが圧倒、5マッチ中4マッチを奪い、これでアメリカ9 1/2ポイント、インターナショナル6 1/2ポイントと3ポイント差。午前中のフォーボールでは、ウッズ/ハウエル組がエルス/クラーク組に5&3で破れるという大差がついた。ウッズがマッチ・プレイで3ホールも残して破れるシーンなんて初めて見た。フォーサムだとそれほどでもないんだが、フォーボールだと精彩がない。自分でもなぜフォーボールだと成績が悪いのか不思議だと答えていたが、本当に不思議。



3日目: フォーボール

インターナショナルがアメリカを圧倒、6マッチすべてに勝つスイープで、ゲームを振りだしどころか12 1/2-9 1/2ポイントと逆に3ポイント差をつけ、大いに優位に立つ。これまで3連敗だったがいいゴルフをしており、ペアリングさえよければと思われたチョイが、初めてスコットと組んでペリー/ジェリ・ケリー組を5&4で破って鬱憤を晴らすかと思えば、エルス/クラーク、グーセン/シング組も噛み合い、それぞれフューリック/ハーズ組を3&2、ウッズ/ハウエル組を2&1で破る。さて、しかし最終日のシングルスは、アメリカ・チームがいつぞやのライダー・カップで劇的な逆転勝ちを見せたこともあるため、3ポイントのリードはまだ安全圏とは言えまい。うーむ、最終日も目が離せない。



最終日: シングルス

インターナショナルの3ポイント・リードで始まったシングルス、アメリカが徐々に差を詰める。第2マッチのケリー vs クラークは、17番パー3でティ・ショットを堀に打ち込んだクラークが、それでも第2打をグリーンに乗せ、パーにまとめて勝負をエクステンドするも、ケリーが1アップでクラークをうっちゃる。第3マッチのプライス vs ペリーは、プライスが18番グリーン上で勝負をオール・スクエアに戻すパットを外し、パターを叩き折るも1ダウンで破れる。ミッケルソンはグーセンに2&1で破れ、これでミッケルソンは今回、5戦全敗。今季のミッケルソンを象徴するような結果となった。負けが決まった17番のグリーン上で、ほとんど泣き出しそうに見えた。


結局勝負は、両者16 1/2ポイントと完全にデッド・ロックに乗り上げたまま、最後のペアのラヴ vs アレンビー戦の結果如何となった。ラヴ1アップで迎えた18番パー5で、ラヴは第3打のグリーン下からのチップ・ショットをダフり、ボールはグリーンに届かず転がり戻る。ラヴは結局パー・パットも外し、このホール、アレンビーがとってオール・スクエア、共に17ポイントとなって、勝負はプレジデンツ・カップ始まって以来のプレイオフとなった。


そのプレイオフ、両チーム一人ずつ出してのサドン・デスとなる。もちろんアメリカはウッズ、インターナショナルは地元のエルスだ。これが南アフリカでの開催でなければシングの可能性もあったろうが、まあ、ここは誰も異論はあるまい。


二人ともシャープなできとは言い難かったが、それでもクラッチ・パットははずさないところはさすがプロの中のプロ。18番パー5、1番パー4、共にパーで回り、迎えた2番パー3でウッズは15フィートのパー・パット、エルスは6フィートのパー・パットを残す。今度こそこれで勝負は決まるか。しかしウッズは慎重にこれを沈め、得意のガッツ・ポーズ、エルスもいつものように淡々と返しのパットを決め、どちらも譲らない。無茶苦茶手に汗握る。


ここでなんと暗くなってきたため両チーム監督のジャック・ニクラウスとゲイリー・プレイヤーが出てきて、勝負はタイのままで終わろうということになった。ここまでいい勝負をしてきて、負ける方は確かに可哀想だ。しかしライダー・カップもプレジデンツ・カップも、タイで終わった場合、前回勝った方がカップをキープするというのはルールだ。それをなくすためにわざわざプレイオフを採用しているのに、それでやっぱりタイのまま終わるというのは、ちょっとプレイオフを採用した意味がない。だったらラヴ vs アレンビー戦が終わった時点で、タイということでアメリカがカップをキープするということでよかっただろう。というか、17番を終わってラヴの1アップとなった時点で、アレンビーの勝ちはなくなり、少なくともアメリカのタイ以上は決定したわけだから、そこでラヴはコンシードして最後のホールをアレンビーに譲り、名を捨てて実をとってもよかったのだ。タイだとプレイオフがあるからというので二人とも最後までプレイしたんだろうに、結局タイのまま終わるというのでは、ちょっと収まりがよくないんではないか。


いずれにしても、最初は両チームともタイでしょうがないかという雰囲気だったのだが、タイだとアメリカのカップのキープが決まることを聞いて、インターナショナルが、だったら勝負を続けよう、ボールが見えないのなら、明日またシングルスをやるのに吝かではない、なんて感じになって、収拾がつかなくなってきた。結局、グリーン上でニクラウスやゲイリー、その他のオフィシャルが討議した結果、今回に限りタイでカップをシェアという、なんとも灰色の決着で幕が引かれた。


もちろんあんないい勝負をしている両チームのどちらかが勝ち、どちらかが負けというのは可哀想だとは思うが、しかし勝負は勝負。プレイオフまで導入したのなら、やはり黒白決着を着けてもらいたかったとは思わないではない。でも、ニクラウスとプレイヤーの言うこともわかる。これでどっちかが勝ち、どっちかが負けた場合、4年前のライダー・カップみたいに感情が爆発してゴルファーとギャラリーがコースになだれ込み、収拾がつかない騒ぎになるということも考えられないではない。


アメリカでは昨年のMLBのオールスター・ゲームで、延長の末、両チームとも使える選手がいなくなって同点引き分けという前代未聞の珍事が起きた。基本的にMLBには引き分けというシステムはなく、勝負がつくまで延長何回まででも試合は続く。ガキの遊びじゃないんだからそれが当然という意識が根底にあるからだが、それを例にとるなら、やはりゴルフだってプロである限りガキの遊びじゃないんだし、勝負はつけてもらいたい。


その一方で、フェア・プレイや礼節、お互いの敢闘を称えるスポーツマンシップを重んじるゴルフがベイスボールやその他のスポーツと同じかといえば、確かに少し違うような気もしないではない。うーん、いずれにしても今後、このような灰色の決着がないよう、ルールが改正されるのは間違いあるまい。







< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system