第7回プレジデンツ・カップ

2007年9月27日-9月30日   ★★★1/2

カナダ、ケベック、ロイヤル・モントリオール・ゴルフ・クラブ

初日: フォーサム

カナダのモントリオールで開催の今回のプレジデンツ・カップ、近年はライダー・カップよりエキサイティングな勝負を演出しているが、特にこれまでのところアメリカ以外で開催されるカップの方が断然面白いので、今回も期待する。ゲイリー・プレイヤーによるキャプテンズ・ピックの一人は地元のマイク・ウィアー。当然誰がキャプテンでもここはウィアーを入れて地元ギャラリーを味方にしようと考えるだろう。

実際初日のフォーサムでは、インターナショナルが獲得したポイントはそのウィアーとヴィージェイ・シングが組んだペアがフィル・ミッケルソン、ウッディ・オースティン相手に分けたハーフ・ポイントだけで、それ以外の5マッチはすべてアメリカが勝った。実際この勝負が一番面白かった。ロイヤル・モントリオールの18番パー4はフェアウェイ左に池があり、18番までもつれたマッチでは結構ばんばん池に落としていた。もし週末インターナショナルが挽回して来るなら、18番はかなりエキサイティングな勝負を演出しそうだ。初日を終わってスコアはUSA 5 1/2、インターナショナル 1/2ポイント。


2日目: フォーボール

初日と打って変わってフォーボールはインターナショナルが圧倒する。アメリカがポイントを獲得したのはスティーヴ・ストリッカー/スコット・ヴァープランク組がアダム・スコット/K. J. チョイ組を2&1で下した1ポイントと、デイヴィッド・トムズ/オースティン組がトレヴァー・イメルマン/ロリ・サバティーニ相手に分けたハーフ・ポイントだけだった。

前回、やっとなぜだかフォーボールで勝てないタイガー・ウッズがジム・フューリックと組んで負けなしになったと思ったら、この日は前回のフォーボールでベスト・マッチだったシング/スチュアート・アップルビーとまた当たり、今回は5&4と完膚なきまでに叩きのめされた。特にウッズとフューリックの調子がよくなかったというよりも、シング/アップルビーのできがよすぎた。フロント・ナインではいきなり1番パー4でシングがバンカーからの第3打をカップ・インさせ、パー5では50ヤードの第3打をこれまた直接カップ・インさせる。バック・ナインでは今度はアップルビーがパー5でイーグルを決めるなど、常に先を越された。

一方、唯一アメリカが勝ちポイントを上げたストリッカー/ヴァープランクの対戦相手となったスコット/チョイは、チョイの調子が今一つなのと、グリーン上でスコットがミドル・レンジのパットのほとんどを外したのが利いた。あのうちのいくつかが入っただけでも最低でもタイに持ち込めただろうに。しかしいずれにしても、この日はオースティンの日だった。元々ガッツィなプレイをするゴルファーではあるが、それで決め所のパットは絶対に外さないとなれば、勝負は盛り上がる。とはいえこの日最大の見せ所はリーチャブルの14番パー4で、先に打ったサバティーニが見事に1オンしたため、トムズもオースティンもドライヴァーを使わざるを得なくなった。

結局二人とも左側の池に落とし、本当ならそこでこのホール諦めてもよかっただろうが、オースティンはほとんど水面下に沈んでいるボールを打ちにいった。もし池から出すことができたらまだわからないという程度の微かなチャンスを考えたんだろうが、結局打ち損ね、そのまま池の中に転んで全身ずぶ濡れになった。その後次の17番パー3でバーディを奪ってオール・スクエアとなり、18番でも入れなきゃ負けのバーディ・パットを沈めてハーフ・ポイントを拾った。あのずぶ濡れプレイでギャラリーの応援を勝ち得たという感じだった。これでUSA 7、インターナショナル 5。勝負はまだわからない。


3日目: フォーサム/フォーボール

午前中のフォーサムでアメリカがインターナショナルをまた圧倒、今度はタイすら与えず5マッチすべてに勝つ。今回のアメリカのフォーサムの完勝ぶりは言葉もない。初日のウィアー/シングのタイのハーフ・ポイントがなければ、フォーサム11-0という全勝になるところだった。このハーフ・ポイントがウィアーのホーム・アドヴァンテイジのおかげと言えるか。これでUSA 12、インターナショナル 5。

午後のフォーボールは今度はまたインターナショナルが押すが、それでも勝ちきれない。出だしこそアメリカ優勢に見えたがすぐ盛り返し、最後のマッチのオグルヴィ/オハーンがウッズ/トムズに終始押されていた以外はどのマッチも中盤以降はインターナショナルが押していたんだが、それでも終わってみると最初のマッチのフューリック/スチュワート・シンクはエンゲル・カブレラ/チョイ相手に1アップで逆転勝ち。ミッケルソン/オースティンもスコット/レティーフ・グーセン相手に分けて、ウッズ/トムズと合わせ、結局どちらも2勝1分けの2.5ポイントずつを獲得する。

この日の一番の見物はフォーボールで組んだオースティンとミッケルソンで、16番パー4で第2打を池に落としたミッケルソンに対し、昨日池に落としたボールを打ちにいってずぶ濡れになってギャラリーを沸かしたオースティンが、ミッケルソンをけしかける。最初はその気のなさそうに見えたミッケルソンだったが、オースティンの第3打のチップがカップをかなりオーヴァーしてパーも危うくなったため、ミッケルソンも考えを変えてレイン・パンツをはいて池に入る。

なんとか水の中から出した第3打はほとんどボールが元の位置に転がり落ちるが、第4打をカップに絡め、このホール落としたとはいうもののやはりギャラリーを沸かした。いずれにしてもこれでUSA 14 1/2、インターナショナル 7 1/2。アメリカは明日のシングル12人のうち3人勝てばカップ保持、しかもこれまではシングルスはアメリカの方が断然押しているからほとんど勝負の帰趨は決まっただろうが、それでも明日は面白い勝負を期待する。


最終日: シングルス

勝負の行方としてはまずアメリカが負けることはあるまいと思われた今回のプレジデンツ・カップ、しかし今年MLBでは残り試合10ゲーム程度を残して2位に5ゲーム差以上をつけ、地区優勝間違いなしに見えたNYメッツがまさかの連敗に次ぐ連敗で残り試合一つを残してフィリーズと同率首位、そしてその最後のゲームに負けてワイルド・カードでプレイオフ進出すら逃すという、MLB史上最大の大崩れを喫した。何が起こるかわからないのがスポーツだ。

なんて言ってはみたものの、いつぞやのザ・カントリー・クラブでのライダー・カップみたいなことがまた本当に起こるとは私も本気では思っていないのだった。12人中3人勝てばいいだけでとりこぼしがあるとは到底思えないし、実際、まず3マッチ目のミッケルソン vs シング戦で、ミッケルソンが5&4なんて大差で勝つと、その後すぐヴァープランクも2&1でサバティーニを下す。そしてこの日絶好調のシンクがオハーンをこれまた6&4で下した時点でアメリカは17 1/2ポイントと過半数に達し、対抗戦としてはアメリカの勝ちが決まった。

とはいえ、やはり勝負としてはその後も面白いマッチが目白押しで、なかでも白眉はやはりウッズと地元ウィアーのマッチだろう。前半好調のウィアーは、パットの決まらないウッズに対し3アップまでリードを広げるが、ウッズは後半挽回に転じ、14番でウィアーがボギーを叩いてオール・スクエア。15番ではウィアーが第2打を池のほとんど前日のミッケルソンと同じ場所に落とし、今回のお約束となった池に降りての第3打を試みるが、ボールは水の中から出たもののグリーンを大きく越え、このマッチで初めてウッズが1アップのリードを奪う。

しかしウィアーは17番でバーディ・パットを沈め、またもやオール・スクエア。続く18番で今度はウッズがティ・ショットを池に落とす。ドロップしての第3打はグリーン手前のラフへ。難しい第4打はピン・ハイ1フィートにきちりと寄せるが、しかしウィアーは第2打をグリーン上カップまで20フィートにつけていたため、ここでウッズはコンシード、1アップでウィアーが勝った。17番でウィアーがバーディ・パットを決めた時のグリーンを取り囲むギャラリー・スタンドからの声援なんてほとんどフットボールの試合並みで、いや、エキサイティングだった。

その後もそれなりに面白い勝負が続いたんだが、既に対抗戦としての白黒はついていたのと、ウッズ -ウィアー戦ほどの盛り上がりには届かなかった。考えたらオースティンを2&1で下したカブレラなんかも前回ミッケルソン相手に最後の最後まで競っていい勝負見せていたし、チョイがメイハンを3&2で下した勝負以外はすべて17番以降までもつれる接戦だった。結局シングルスではインターナショナルが12マッチ中7マッチを制した。今回最も活躍したのは、4 1/2ポイントを稼いだトムズ、次が4ポイントのヴァープランクだった。アメリカが早々と勝ちを決め、最終スコアも19.5-14.5と5ポイント差ついたとはいえ、やはり国別対抗のマッチ・プレイは面白いとまたまた認識を新たにしたのだった。

これまで南アフリカとオーストラリアと2度アメリカ国外で開催されたプレジデンツ・カップは、オーストラリアではインターナショナルが勝ち、南アフリカではタイだった。3回目にして初めてアメリカは自国外で勝利を手に入れたわけだが、国外とはいえカナダはほとんど地続きで、モントリオールなんて海外とは思っていないアメリカ人も多かろう。MLBにはトロント、NHLにはそれこそモントリオールのチームもあるのだ。ついでに言うと、今回の舞台となったロイヤル・モントリオールはこれまでのオーストラリア、南アフリカのリンクス・タイプのコースとは異なり、アメリカのゴルフ・コース的なレイアウトで、その点もアメリカ有利に働いたとは言えるかと思ったのだった。 



 
 
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