パワーレス   Powerless 

放送局: NBC 

プレミア放送日: 2/2/2017 (Thu) 20:30-21:00 

製作: エシュガディ・プロダクションズ、DCエンタテインメント 

製作総指揮: ジャスティン・ハルパーン、パトリック・シューマッカー、ディーン・ローリー、レン・ゴールドスタイン 

出演: ヴァネッサ・ハジェンズ (エミリー・ロック)、ダニー・プディ (テディ)、クリスティーナ・カーク (ジャッキー)、ロン・フンチス (ロン)、アラン・タディク (ヴァン・ウェイン)、ジェニー・ピアソン (ウエンディ) 

 

物語: チャーム・シティのウェイン・セキュリティの調査開発部にエミリーが配属される。スーパーヒーローやスーパーヴィランだらけのチャーム・シティでは日頃から街中で戦闘アクションがひっきりなしで、その巻き添えを食って怪我をする市民が絶えなかった。エミリーのチームはその対策グッズの開発に着手するが、部下は揃いも揃ってやる気なし根性なしの上、責任者のヴァンまで実はこんな会社、潰れてもいいと思っていた‥‥


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Powerless


パワーレス  ★★1/2

近年のスーパーヒーローの乱立振りは凄まじく、既にもうどこにどれだけスーパーヒーローがいるのか、よくわからない。これだけのスーパーヒーローを必要とするほどヴィランが多いのか、それともスーパーヒーローが供給過多なので帳尻を合わせるためにヴィランが生まれてくるのか。しかもこれだけスーパーヒーローが林立して、それなのに世界はどんどん悪くなって行くように見える。あるいは、だからスーパーヒーローが生まれてくるのか。 

 

これだけスーパーヒーローが多いと、当然のようにアンチヒーローも生まれてくる。それが昨年の「デッドプール (Deadpool」であった。CWの「アイゾンビー (iZombie)」も、その流れの亜種と言えるかもしれない。 

 

そしてまた、スーパーヒーローの過剰は、市井の人々にも影響を与える。街ではいつでもどこでもスーパーヒーローとスーパーヴィランが戦いを繰り広げており、油断しているとそのとばっちりを食う。結局いつの時代でも、割りを食うのは真面目に働いている普通の人々なのだ。チャーム・シティのセキュリティ会社で働くエミリーは、この状況を打破すべく立ち上がる‥‥というのが、「パワーレス」の舞台設定だ。 

 

チャーム・シティはゴッサム・シティの姉妹シティであり、エミリーの働く会社はウェイン・セキュリティ‥‥といえば、もちろんこれは「バットマン (Batman)」の設定のもじりに他ならない。ウェイン・セキュリティはバットマンことブルース・ウェインの一族であるヴァン・ウェインが経営する企業だ。 

 

しかしヴァンはこんな誰も知らないような場所でなく、陽の当たるゴッサム・シティでブルースと共に働きたかった。そのため経営は投げやりで力が入らず、ウェイン・セキュリティが潰れればいいと思っていた。エミリーはこういう使えない上司や気の利かない部下に囲まれ、孤軍奮闘する。 

 

前回、CWによるアーチー・コミックスの映像化である「リヴァーデイル (Riverdale)」について書いて、DCコミックスの映像化番組だらけのCWで「リヴァーデイル」が編成されるのはなんか違和感がある、みたいなことを書いたが、その線で言えば、DCコミックス映像化である「パワーレス」こそ、CWが編成するのに相応しい。なんせCW編成は、右を見ても左を見てもスーパーヒーローだらけなのだ。その中で、スーパーヒーローたちに囲まれて右往左往する人々の奮闘を描く「パワーレス」は、意味があったろうにと思ってしまう。 

 

CWでは、昨シーズンCBSで始まった「スーパーガール (Supergirl)」も移籍してきており、DCコミックス囲い込み運動が起こっている。各番組間でも連携が起きており、先頃「フラッシュ (The Flash)」と「スーパーガール」で、同じキャラクターとストーリーで話が続くクロスオーヴァー・エピソードが放送された。ついでに言うと後半はそれがミュージカルとして製作されていた。これはわからんではない。なんとなればスーパーガールを演じているメリッサ・ベノイストはFOXのミュージカル・ドラマ「グリー (Glee)」出身であり、歌はお手のもんだからだ。 

 

とはいえ私が言いたかったことは、そのクロスオーヴァー・エピソードにおいて、スーパーマン一族の一人ラー・ガンドが登場、その母親にテリ・ハッチャーが扮していたということだ。ハッチャーといえばABCが放送していた「ロイス&クラーク (Lois & Clark)」でロイス・レーンを演じていたその人であり、スーパーマンことクラーク・ケントを演じたディーン・ケインは、「スーパーガール」のプレミア・エピソードにカメオ出演していた。これでハッチャーも出ていたらと思った視聴者は私一人だけではなかったはずだ。こんなところでその実現を目にすることができた。 

 

さらに言うと、「スーパーマン」は、その若い頃を描く「ヤング・スーパーマン (Smallville)」が、CW前身のWBで放送されていた。CWとDCコミックスは、かように切っても切れない関係にある。実際、スーパーヒーローだらけの街で四苦八苦する人々を描く「パワーレス」の面白さは、前後左右を「フラッシュ」、「スーパーガール」、「アロー (Arrow)」、「アイゾンビー」、「レジェンズ・オブ・トゥモロー (Legends of Tomorrow)」等のDCコミックス番組に囲まれてこそ生きる。それなのに、よりにもよってスーパーヒーロー番組なんか一本も編成されていないNBCでの放送か。CWで「リヴァーデイル」が放送されるのより、さらに違和感あると思うのであった。 

 

とはいえ、「パワーレス」は、単体コメディとして楽しめないわけではない。プレミア・エピソードの冒頭のつかみは、チャーム・シティで朝のラッシュ・アワーで戦うスーパーヒーローとヴィランが、エミリーの乗る高架列車の線路を破壊してしまう。このままだと列車が地上に激突してしまう‥‥という展開は、これは「スパイダー-マン 2 (Spider-Man 2)」のパロディだろう。むろんスパイダー-マンはDCコミックスではなく、ライヴァルのマーヴェル・コミックスの中心的スーパーヒーローだ。思わずにやりとする。「パワーレス」も「スーパーガール」のように、来季からCWに場所を移して放送が続く可能性というのはどうだろうか。 











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