プラネット・オブ・ジ・アップス   Planet of the Apps 

提供: iTunes (アップル) 

プレミア提供日: 6/6/2017 (Tue) 1 hr 

製作: プロパゲイト・コンテント 

製作総指揮: ベン・シルヴァーマン、ハワード・オーウェンス 

ジャッジ/アドヴァイザー: ジェシカ・アルバ、グウィネス・パルトロウ、ゲアリ・ヴァイナーチャク、ウィル・アイ・アム 

ホスト: ゼイン・ロウ 

 

内容: 新しいアプリ (アップス) の開発プレゼン・リアリティ。


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Planet of the Apps


プラネット・オブ・ジ・アップス  ★★1/2

ついにアップルのiTunesもオリジナル番組製作に乗り出した。もっとも、iTunesはNetflixやamazon、Hulu等の、現在主流のサブスクリプション型のヴィデオ・ストリーミング・サーヴィスとは多少毛色が違う。 

 

なんてったってストリーミング・サーヴィスの嚆矢であり、最初は音楽が基本で、ヴィデオに手を出すまで時間があった。今のロウ・ティーンは、昔はiTunesは音楽しかなかった、アプリなんかダウンロードできなかったと言ったら、不思議な顔をするに違いない。 

 

iTunesの出現以後、人々が音楽やヴィデオを楽しむ方法は大きく変わった。特にヴィデオの場合、人々はコンピュータ上で個人で映像を楽しむようになり、そしてiPhone、iPadとYouTubeおよびストリーミング・サーヴィスの普及により、屋外でもストリーミングを楽しむようになった。 

 

とはいえ私の場合、iTunesでヴィデオ視聴するかというと、話は別だ。いまだにiTunesは私の音楽リスニングのメインではあるが、ヴィデオ・TV番組視聴に関しては、そうではない。ただでさえ家ではDVRをフル稼働させてTV漬けに近い生活をしているのに、出先でまでヴィデオを見ようという気にならないし、だいたい屋外ではiPad miniを使っての書きもの中心で、ヴィデオを見ている暇がない。 

 

当初アップルは、あくまでもiTunesを各種ストリーミング・サーヴィスを提供するプラットフォームとして展開していた。自分たちは音楽、アプリ、ヴィデオ等のオリジナル・コンテンツ製作には手を出さず、流通の場を提供することによって場所代をとり、一方で視聴者からも金を徴収する。さらにハードとしてのiPhone、MacBook、iMacがある。この囲い込みが大きく成功したからこそ、今の巨大企業としてのアップルがある。 

 

一方、サブスクリプション型のストリーミング・サーヴィスであるNetflixは、ハリウッドのステュディオと契約してヴィデオ・ソフトを充実させ、さらに巨額の金をオリジナル・コンテンツ製作に注ぎ込むことで、こちらも大きく成功した。ほぼ無尽蔵の映画を月10ドル程度で無制限に見れるというお得感が視聴者にアピールする大きな理由の一つではあるが、やはり最大のポイントは、オリジナル・コンテンツにある。 

 

最初にNetflixを業界地図に載せたヒット番組「ハウス・オブ・カード (House of Cards)」を筆頭に、「オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック (Orange Is the New Black)」、「アンブレイカブル・キミー・シュミット (Unbreakable Kimmy Schmidt)」、「メイキング・ア・マーダラー (Making a Murderer)」、「ストレンジャー・シングス (Stranger Things)」といった番組が次々と話題になり、エミー賞にもノミネートされるなど評価されたことから、コンテンツ提供者としての地位を確立した。 

 

このことがアップルを刺激したことは想像に難くない。むろん今のままのビジネス・モデルでも利益は充分確保できるだろうが、オリジナル・コンテンツを自社で所有し、その権益を今後もずっと享受できるうまみを改めて考えたに違いなく、その結果登場したのが、今回の「プラネット・オブ・ジ・アップス」だ。もちろん「猿の惑星」の「Planet of the Apes」のもじりであり、こちらはエイプスではなくアップス、日本風に言うとアプリだ。 

 

その中身は、アプリ製作版の「シャーク・タンク (Shark Tank)」、つまり「マネーの虎」、つまりアプリ開発起業プレゼンだ。プレゼンターはジャッジ/アドヴァイザーのパネルを前にして開発中のアプリをプレゼンし、その開発費用を拠出してもらおうというものだ。どのプレゼンターも基本のアプリ開発は既に終わっており、ビジネスとしてスタート済みだったりするが、ブレイクするためにまだ何らかの発展やサーヴィスの向上が必要だったりする。しかしそれには金とマンパワーが不可欠だ。そこで資金を調達するための、こういう番組の出番となる。いかにもiTunesらしい番組であり、目の付け所は悪くないと思う。 

 

ジャッジ/アドヴァイザーにはジェシカ・アルバ、グウィネス・パルトロウ、ゲアリ・ヴァイナーチャク、ウィル・アイ・アムという著名人が名を連ねている。この中でヴァイナーチャクだけは芸能界セレブではなく、元々はワイナリー経営から起業家として成功した人物である由。顔からはまったく予想外の甲高い声でしゃべる。 

 

プレゼンターはまず、この4人の前に下りエスカレイターで運ばれる。その1分間で、自分のアプリがどういうものか説明する。ピッチやプレゼン以前の段階であるが、ここで誰かが興味を示さなければ、この段階でアウト、プレゼンすらさせてもらえない。誰か一人でも興味を示すと、やっとプレゼンの機会が与えられ、その後でジャッジが今度はアドヴァイザーとしてさらにこのアプリをバックアップするかどうかを判断する。 

 

例えば、出会い系アプリ「ツイスト」には、パルトロウだけが興味を示したが、その後のプレゼンで他のジャッジから弱点を指摘され結局パルトロウも辞退した。アンドリュウのARを使ったインテリア・デザイン・アプリの「ペア」にはアルバとパルトロウが興味を示し、プレゼンの後さらにヴァイナーチャクも興味を示すが、アンドリュウは最初から積極的だったアルバを指名する。ジェイクとレクシーが開発したセキュリティ・アプリの「コンパニオン」には、ヴァイナーチャク一人が興味を示す。アルバは自身で会社を経営しているようで、実は割とビジネス・ウーマンとしてもやり手っぽさそうで、意外。「メカニック: ワールドミッション (Mechanic: Resurrection)」の印象とは大違いだ。 

 

アドヴァイザーがついたアプリには6か月間のさらなる開発期間が与えられ、その間に念入りにマイナー・チェンジや問題点の改良、ビジネス・プランが詰められ、今度は本当に金を出すライフスピード・ヴェンチャー・パートナーの4人のパネルを前に再度プレゼンが行われる。ライフスピードはスナップチャットをこの世に送り出したことで知られている。 

 

プレゼンを前に「コンパニオン」に痛手となったのは、グーグルが同様の無料のセキュリティ・アプリ「トラスティド・コンタクツ」を発表してしまったことで、有料モデルを目指していた「コンパニオン」にとっては大きなマイナス材料だ。しかしジェイクとレクシーは差別化案を捻り出し、無事100万ドルの出資を手にした。残念ながらアンドリュウのプレゼンは成功しなかった。ジェイクとレクシーのプレゼン時にはヴァイナーチャクが同席し、アンドリュウのプレゼン時にはアルバが同席していたが、一番最初のピッチ時には高飛車で意見を述べていた彼らが、最後のプレゼン時にはプレゼンターと一緒になって緊張しているのが見てとれ、何やらおかしかった。それにしてもジェイクとレクシーは、それぞれジョナ・ヒルとメイミー・ガマーそっくりで、なんでお前らが一緒にいる、新しいドラマかそれともコメディかと思わせる。 

 

私的には、アプリとは、例えばマイクロソフトのワードやエクセルのように、基本的に一度インストールしたらずっと利用し続けるもの、つまりほとんどソフトウェアと同義という印象があった。しかし近年は、アプリはソフトというよりもガジェット、あるいはTV番組の一エピソードという感じに近く、使い捨てで、利用者は日に日に新しいアプリを求めているらしい。その上で、例えばインスタグラムやツイッターのように、ほぼ毎日使う常駐アプリも出てくる。 

 

番組自体は結構面白く見たが、個人的にはアプリを利用するのは基本的にシンプルな書きものアプリとEvernote、銀行系、天気予報、それに出先でのグーグル・マップとあとは幾つかのゲームくらいという私のようなオールドタイマーにとって、新規アプリはよほどのことがない限り試してみる気にならない。しかしいつも新しいアプリの出現を心待ちにしている者には、番組は強くアピールするかもしれない。 











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