フェニックス・オープンが開催されるTPCスコッツデイルは、16番、パー3の絶叫ホールが有名である。このホールはティからグリーンまで観客席スタンドが設けられ、ゴルファーのティ・ショットに対して、「ゲット・ザ・ホール!」だとか「ヒット・ザ・フラッグ!」だとか皆思い思いに絶叫するのだ。特に、2年前にタイガー・ウッズが本当にホール・イン・ワンをした時なんて、耳を聾するほどの歓声が沸いた(今年はウッズは出ていない)。


そういうのが売りになっているものだから、皆ビール片手にほとんどアメフト観戦のノリでゴルフを見ている。そういう危ないノリがあるからか、昨年はピストルを携帯していたファンが逮捕されたりして、あまりファンが暴走しないように今年からアルコール販売が禁止になったそうだ。うーん、ここのトーナメントはどう見ても他のトーナメントとは異質だったからなあ。昨年は、フェアウェイを外したウッズのボールの前にあった巨大な石を、ファンが4、5人がかりで動かして打てるようにしてあげていた。あれはルース・インペディメントではないから動かすのはペナルティだと後で問題になっていたが、そういうふざけているとも言えるシーンが頻出するのがフェニックス・オープンの特色で、それはそれなりに面白いと言えば面白いトーナメントである。ただし、アルコールの効果がなくなったからか、今年は静かでした。


昨年のビュイック・オープンで最終日に崩れて惜しくも勝ちを逃したトム・レーマンが、今度は途中首位から後退しながらも執念で4年ぶりの優勝をもぎ取った。この人は勝とうとする決意が身体から滲み出るところがプロらしくて私は好きだ。4年前だったかの全英オープンで勝った時も、とにかく絶対勝つ、という決意が身体中に漲っていた。その癖して若いもんの面倒見がいいところなんて親分肌で人柄もよさそうだし。昨年暮れのワールド・チャンピオンシップ、首位を走っていたタイガー・ウッズが最終日の17番でボールを池に落として痛恨のダブル・ボギーを叩き、それを地元(スペイン)のファンが喜んでいた。それをウッズの肩を叩いて慰めていたレーマンが思い出される。そういう人物が首位争いに絡むと、俄然試合は面白くなる。


今回は、初日レーマンとフィル・ミッケルソンがトップ、ミッケルソンは翌日大叩きして沈んだが、3日目また好スコアでトップ争いに復帰、一方レーマンは2日目までトップだったが3日目パットが入らず僅かに首位から脱落、しかし自力のあるこの二人が最終日にまた頑張ったおかげで、勝負にめりはりがついた。最終日は、ミッケルソンが一時トップに立ったが、バック9で崩れて自滅、その後もハル・サットンやロバート・アレンビーらが交互にトップに立つが後が続かず、皆いいところでボギー、池ポチャ、ダブル・ボギーを連発して荒れ模様。最後の最後でトップを奪い返したレーマンが逃げ切った。


でも、18番ホールでの5フィートのクラッチ・パー・パットを決めるところなんかさすがで、ボールはホールを外れて転がっていこうとしているのに、念力で強引に沈めたという感じだった。一方、これを入れればプレイオフという4フィートのパットを外したアレンビーは、なんか、外れてもそんなに悔しがっているような素振りもなく、この辺の差なんだよなと思ってしまった。それにしても、3日目終了時点で首位だったフランク・リックライターも結局崩れていったし、いいところまで行っても勝てない奴と勝つことができるゴルファーの間には、薄いけれども確実に一線が画されている気にさせてくれるトーナメントだった。







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フェニックス・オープン

2000年1月27-30日   ★★1/2

アリゾナ州スコッツデイル、TPC・オブ・スコッツデイル

 
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