放送局: WB

プレミア放送日: 9/14/2003 (Sun) 20:00-22:00

製作: ディプロマティック・プロダクションズ、ペプシ-コーラ・ノース・アメリカ

製作総指揮: マイケル・デイヴィース、マティ・レシャム

ホスト: ドリュー・キャリー

共同ホスト: ジェイミー・ケネディ、ホリー・ロビンソン・ピート


内容: 優勝賞金10億ドルを賭けたゲーム・ショウ。


_______________________________________________________________


賞金がかかるゲーム・ショウの場合、その面白さは多くを懸賞金の額に負っていると言っても過言ではない。だいたい、どんなゲーム・ショウでも、金じゃないことはあっても何かが賞品として設定されており、参加者はその獲得を目指して奮闘する。そしてその賞金/賞品が大きくなればなるほど、エモーションは高まり、参加する方も見る方も興奮する。


「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」が最初あれだけ話題になったのも、ひとえに100万ドル、円にして1億円あまりという、これまでのこの種のクイズ番組の標準からしたら桁違いの賞金額の大きさにあった。この一問、たった一問を正解するか誤答するかで天に上るか地に落ちるかが決まる。さて、解答者は正しい答えを口にすることができるだろうか、というスリル、緊張感こそが、「ミリオネア」があれだけヒットした最大の理由である。


そして今、なんと優勝賞金10億ドル (ビリオン・ダラーズ)、約1,000億円という、驚天動地の賞金額を設定した番組が現れた。番組スポンサーのペプシ・コーラは、この一回限りの特番で、もし本当にミリオネアならぬビリオネアが出現した場合、いくら巨大企業といってもそんな金払えるわけはなく、はっきり言って倒産である。それで保険をかけて番組スポンサーとなっているわけだが、たとえビリオネアが現れないとしても、保険料はかなりの金額に達しただろう。もしビリオネアが現れた場合は、保険をかけていたとしても一括払いできるわけもなく、賞金は今後40年間の分割払いになるということが、番組が始まる時に画面下部に小さな文字で説明される。もし貰えるなら、何年払いだろうと私は構いません。


さて、その番組進行であるが、まず、フロリダの特設スタジオに、抽選で選ばれた1,000人の参加者を集める。彼らはスタジオ入りする時に、銘々が任意の6桁の数字を選ぶ。一方、スタジオの別室では、不正が行われないように厳重に監視された中で、まず共同ホストのホーリーがサイコロを振って6つの数字を選び出し、さらにその数字が刻まれた6つのビリヤードの玉を袋に入れ、それをチンパンジーのミスター・マニーバッグスが無作為に取り出した順番に並べる。その数字を観客席の参加者が任意に選んだ数字と照らし合わせ、10人がステージ中央に呼ばれる。もし自分が選んだ数字がミスター・マニーバッグスの選んだ数字と一致した場合、あんたは億万長者だ! もし一致していなくても、最も近似した数字を選んだ参加者には100万ドルが与えられる。


とはいえ、事はそう単純に進むわけではなく、ゲームっぽい進行が加味され、番組を盛り上げることを忘れてはいない。10億ドルを獲得する数字はチンパンジーのマニーバッグスが既に番組の冒頭で選んでいるわけだが、その数字はTVを見ている視聴者には教えられるが、会場の参加者には伏せられている。そして、ステージに呼ばれた10人のうち、本当にミスター・マニーバッグスが選んだ数字と一致、あるいは近似した数字を選んだ者は一人しかいない。あとの9人は捨てキャラなのだ。で、そういう捨てキャラも壇上に上げちゃってどうするのかというと、それらの参加者で勝ち抜きゲームを行うのだ。


まず、最初にいくらかの賞金を設定して、もし自信がなければ、その賞金だけを受けとって、ここで降りてもいい。そうやって段々掛け金を上げながら、一人ずつ減らしていくわけだ。しかし誰も降りなかった場合、もっとも数字の遠かった者から失格になる。その場合、一銭も貰えない。たかだか1万ドルを受けとって、100万ドル、あわよくば10億ドルを手にするチャンスをみすみす逃すか。一銭ももらえない結果になっても、10億ドルのチャンスに夢を賭けるか。思案のしどころである。


結局、最初は皆、誰も降りなかったのだが、最初に数人、何も貰えずに失格になると、これはみすみす失格になるよりは、たとえ10億ドルの1万分の1の金額でも貰った方が得と考え始めるようで、段々その賞金を受け取って途中で降りる奴が増えた。それでも何万ドルは貰えるわけだから、考えてみたらそれだってかなりの棚ボタである。しかし、そうやって最初に連続して降りた者が全員女性だったのは、やはり地に足がついていると言うか実利主義と言うか。


実際、このシステムでは別にクイズに答えて勝ち抜いていくというわけではなく、ほとんどが運である。自分が選んだ数字が10億ドルを獲得する数字に他ならないと信じる者は途中で降りないで残るし、自信がなければ途中でその時点での掛け金を受けとってリタイアする。どちらをとるかはすべて参加者の自由だ。というわけで、私は最初、番組を見るまではこれを「ミリオネア」の掛け金をただ100万ドルから10億ドルに上げただけのようなクイズ番組だと思っていたのだが、そうではなく、どちらかというと、やたらと掛け金の高いポーカーに感覚が近い。ほとんどカンと度胸と運試しなのだ。自分自身のツキを信じ、たとえ一文も貰えなくてもレイズし続けるか。あるいは適当なところで妥協して降りるか。もし降りた場合、あとで自分が10億ドルの数字を選択していたことがわかっても、すべては後の祭りである。10億ドルを獲得するチャンスは、観客席にいる次の誰かに与えられる。


ここで結果を言ってしまうと、最後まで残った二人はやはり男性で、一方は若く、一方はやや禿げがかった中年のおっさんとなった。そこでまた二人は降りるかどうかの選択を迫られ、特におっさんの方は降りるかどうか、最後の最後まで迷ったようだが、結局ここまで来たんだ、ええいままよと、二人共残った。そして、実際に10億ドルの番号に近い数字を選んだのはこのおっさんの方で、若い男は結局無一文で追放された。


おっさんは100万ドルを獲得、そして10億ドルが貰えるかどうかの開票ならぬ開ナンバーで、マニーバッグスが選んだ数字と一桁ずつ照らし合わせる。一の位‥‥一致。十の位‥‥一致。百の位‥‥一致。段々会場がざわめいてくる。千の位‥‥一致。おおーっ。あと二つ合えば10億ドルだ! そして万の位‥‥不一致! 会場からああーっというため息が漏れ、10億ドルの獲得はならなかった。しかし、それでもおっさんは100万ドルを獲得したのだが、こういう時って、逃した魚の大きさを思ってがっかりするのか、それとも100万ドルを得たことで大いに満足するのだろうか。しかし、それを言うなら最も損したのは、最後まで来て無一文で追放された彼だろう。あそこで降りると言えば、彼だって10万ドルだったんだけどねえ。世の中そう甘くない。







< previous                                    HOME

 

Pepsi Play for a Billion

ペプシ・プレイ・フォー・ア・ビリオン   ★★1/2

 
inserted by FC2 system