Peppermint


ペパーミント  (2018年9月)

実は最初、ジェニファー・ガーナーの後ろに天使の羽のような模様が浮かび上がるポスターを見て、これはてっきりDCかマーヴェル・コミックスの映像化だとばかり思っていた。ただし「ペパーミント」の場合、悪者に正義の鉄槌を下すとはいえ、主人公のライリーは変身するわけでも、何かスーパーパワーを身につけるわけでもない。自身の鍛錬によって、悪漢共に対抗できる力や知識を身につけるだけだ。どちらかというと、ジェイソン・ボーンやジェイムズ・ボンドといったスーパーエージェントに近い。 

 

ピンキリのマーヴェル・ヒーローは、変身したりスーパーパワーを使うスーパーヒーローもいれば、こういう生身型もいる。例えば「アベンジャーズ」の場合、変身するハルクやスーパーパワーを持つスカーレット・ウィッチやスパイダーマン、スーパースーツを着込み、ある意味変身するアイアンマン、着替えただけにしか見えないが、そうすると強いキャプテン・アメリカ、元々人間ですらないソーやヴィジョン等、ヴァラエティに富んでいる。 

 

そこが面白いと言えば言えるが、欲張り過ぎて収拾がつかないという印象も否めない。その中で最も印象が薄いのが生身のホウクアイというのは、誰もが同意するだろう。どんなに速弓が射てようとも、人間じゃないやつらにかなうわけがない。 

 

今回は、別に事前に変身したガーナーのイメージをどこでも見た記憶がないので、たぶん生身型と予想する。最近はスーパーパワーを持つスーパーヒーローものに飽きてきているし、これならよかろう。生身のくせにスーパーヒーロー並みに強かったりすると今度は興醒めなのだが、そこはまあ、見てみないとわからない。 

 

などなど、てっきりスーパーパワーを用いない、生身の新しいスーパーヒーローの誕生とばかり思ってあれこれ妄想を膨らませていたのだが、実は「ペパーミント」は、DCともマーヴェルとも関係がない、というのは、実際に劇場に足を運び、話が始まった瞬間に知った。あの、必ず一番最初に現れるマーヴェルのロゴが出ないのだ。あれ、これ、マーヴェルの新ヒーローじゃないの? と、一瞬呆っ気にとられる。勝手に思い込んでいた奴が悪いとはいえ、しかし、私はなんでここまで「ペパーミント」をマーヴェルと思い込んでいたのか。自分でもわけがわからん。 

 

今回ガーナーが扮するのは、夫と娘をギャングに殺され、その復讐を果たそうとする女性ライリーだ。娘の好きなペパーミント・アイスクリームを買っていて一人遅れ、自分だけ九死に一生を得て助かったライリーは、しかし裁判でギャングが裏で司直に手を回して釈放され、さらに自分も病院で軟禁されそうになって救急車から逃げ出し、そのまま姿をくらます。どうやらその間、虎の穴みたいなアンダーグラウンドの戦士養成機関で鍛えたようで、帰ってきたライリーは、情け容赦ない女性戦士となっていた。 

 

後はもちろんライリーの復讐の戦いが描かれる。元々出世作はABCの「エイリアス (Alias)」だからアクションはお手のもんといえ、今回もかなりの部分をスタントなしで自分自身で演じているようだ。 

 

ガーナーは現在、ペイTVのHBOでも「キャンピング (Camping)」に主演している。本当はキャンプなんか趣味じゃない家庭の主婦が、嫌々夫の趣味につき合ってキャンプするというコメディだ。ガーナーは「エイリアス」の印象が強いが、アメリカではどちらかというと「13ラブ30 サーティン・ラブ・サーティ (13 Going on 30)」や「ジュノ (Juno)」等、コメディの方でよく知られている。むしろ「エイリアス」が 例外だ。日本ではガーナーが出ているコメディ系作品がほとんど未公開なので、なおさらコメディ系のガーナーには馴染みが薄いかもしれない。

 

 

(注) 以下、結末に触れてます。 

 

実は「ペパーミント」も「キャンピング」も、ほとんど誉められていない。というか、両方共積極的に貶されているという印象を受ける。 特に「ペパーミント」の場合、私見では一番痛かったのは、獅子身中の虫というか、ライリーを親身になって助けるカーマイケル刑事が、先々週見た「サーチ (Searching)」同様、もしかして裏切ってる? と早い段階で思わせてしまうことだ。別に作り方が下手というのではなく、こういうのって最近あったなと、ふと気づいてしまう。残念な気づき方だがしょうがない。 

 

他にも、確かに展開が読めるとかクリシェと思わせる部分が多々ある。ガーナーのアクションは悪くないが、確かにそれだけだと弱いかと思わせる。ガーナーは怪我した格好がわりと似合う女優であり、自分でもその辺を理解しての今回の出演だろう。 

 

例えばシャーリーズ・セロンやケイト・ブランシェットは、殴られて目の周りに青タン作ると似合うという殴られ系女優の筆頭だが、ガーナーの場合、青タンつくるというよりも、怪我をして血を流したり痛そうにしているのがはまるという、なかなか得難い女優だ。とはいえそれが、セロンのようにアクションが絵になるとか、ブランシェットのように怯えた表情がいいとかの、唯一無二のセールス・ポイントになるまで行ってないのが惜しい。それさえあれば、本格的にアクション・スターを目指せると思うんだが。 











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ロサンジェルス。ライリー・ノース (ジェニファー・ガーナー) は夫クリスと幼い娘カーリーとつましいながらも幸せな生活を送っていた。クリスは今の生活から脱却するためにギャングを襲う計画を立てる。直前で断念したものの既に計画はギャングの知るところとなっており、ある夜ギャングのクルマからの銃撃によって夫と娘を殺される。一人助かったライリーは裁判で証言するが、しかしギャングの息のかかった裁判官は、証拠不十分としてギャングを釈放する。その後行方をくらまし、5年後に再び姿を見せたライリーは、鍛錬を積み、ギャングへの復讐を決意していた。ライリーは貧民街に身を隠し、一人また一人とギャングを始末していく‥‥ 


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