Penny Dreadful   ペニー・ドレッドフル

放送局: ショウタイム

プレミア放送日: 5/11/2014 (Sun) 22:00-23:00

製作: ニール・ストリート・プロダクションズ、デザート・ウルフ・プロダクションズ

製作総指揮: ジョン・ローガン、サム・メンデス

出演: ジョシュ・ハートネット (イーサン・チャンドラー)、エヴァ・グリーン (ヴァネッサ・アイヴズ)、ティモシー・ダールトン (マルコム・マーレイ)、リーヴ・カーニー (ドリアン・グレイ)、ビリー・パイパー (ブロナ・クロフト)、ダニー・サパニ (センビーン)、ハリー・トレッダウェイ (ヴィクター・フランケンシュタイン)、ロリ・キニア (カリバン)


物語: 1891年ロンドン。射撃の見世物で各地を転々としているイーサンは、謎の女性ヴァネッサから、内容を明らかにしないがかなり胡散臭い依頼を受ける。夜、指定された場所に赴いたイーサンは、そこでマルコムと会う。彼らはヴァンパイアと思われる異形の者に襲われるが、なんとか撃退する。実はマルコムの娘は何者かに攫われており、マルコムは娘をとり戻すためには何事も厭うつもりはなかった。彼らは、死んだ者を生き返らせるクリーチャーの創造を研究しているフランケンシュタイン博士にヴァンパイアの解剖を頼む。その皮の下からは、ヒエログラフと思われる文字が現れる。それは古代エジプトの「死の書」の一節だった‥‥


_______________________________________________________________

Penny Dreadful


ペニー・ドレッドフル (ナイトメア --血塗られた秘密--)  ★★★

「ペニー・ドレッドフル」という単語を聞いたのは初めてだが、これは19世紀英国で流行った安物 (1 ペニー) の扇情的な読み物雑誌のことを言うそうだ。「スウィーニー・トッド (Sweeney Todd)」もペニー・ドレッドフルが出自である由。そういう媒体をタイトルに持つショウタイムの「ペニー・ドレッドフル」は、もちろん百鬼夜行魑魅魍魎が出没する、ヴィクトリア朝英国の暗黒世界を描くホラーだ。


霊媒のヴァネッサを演じるエヴァ・グリーンは、近年、時代ものに出る機会が多い。そういうコスチューム・プレイでなくとも、憑いたり憑かれたりなどという異界の力が絡む話ばかりだ。「ダーク・シャドウ (Dark Shadows)」「300: 帝国の進撃 (300: Rise of an Empire)」、スターズの「キャメロット (Camelot)」等、みんなそうだ。現在、明らかに最も高い頻度で魔術を使える役を演じている俳優と言える。ここでももちろんそうで、タロットを用いて未来を占ったりしている。冒頭、十字架を前に祈りを捧げ、トランス状態に入って目がひっくり返るのだが、こんな怖い演技がこんなに様になる女優もいないと思わせる。伊達に毎回魔女ばかり演じているわけではない。


グリーン演じるヴァネッサが仕えるサー・マルコムに扮しているのがティモシー・ダールトンで、実は007の「カジノ・ロワイヤル (Casino Royale)」でボンド・ガールとして頭角を現したグリーンに対し、その数代前の007を演じていたのがダールトンだ。二人は共演するべき運命にあったのかもしれない。さらに言うと、フランケンシュタイン博士が想像するクリーチャーに扮しているロリ・キニアは、現007シリーズの常連だ。ペニー・ドレッドフルと007は同じ国の生まれなのだ。


すごく久しぶりという印象があるのが、イーサンを演じるジョシュ・ハートネット。小品には出ていたようだが、こちらとしては2006年の「ブラック・ダリア (The Black Dahlia)」以来という印象だ。


マルコムは異形のモノに攫われた娘を奪回するために、腕の立つボディガード的な人物を探していた。その白羽の矢が立ったのが、巡業射撃ショウに出演していたイーサンだ。会場では観客はスタンドからショウを見物している。真ん中に立っているイーサンが右側の的を撃ち抜くと客は右を向き、イーサンが振り返りざま今度は左側の的を撃つと、客は全員一斉に左を向く。その中でスタンドの真ん中に座っているヴァネッサだけは右も左も向かず、ただじっと中央のイーサンだけを注視していた。


という演出は、昔ヒッチコックがテニスの試合を背景にこの技を使っていた。白黒の、あれは「海外特派員 (Foreign Correspondent)」だったかそれとも「三十九夜 (The 39 Steps)」だったか。さすがに英国の業界関係者だと、ヒッチコックは当然のように見ているのだな。


第1話の終わりでは、フランケンシュタイン博士が創造したクリーチャーが、ついに息を吹き返す。フランケンシュタインは停電のため落ちた灯りをなんとかするために、かまどのようなものの前に座り込んで火をつけようとする。それを2回繰り返すのだが、フランケンシュタインの後ろに横たえられているクリーチャーは、フランケンシュタインが屈み込むと画面から外れて見えなくなる。フランケンシュタインが立ち上がると、後ろのクリーチャーが寝ているベッドがまた画面に映り込んでくる。


その時、クリーチャーに命が吹き込まれて起き上がっているに違いないと思わせどきどきさせる呼吸がかなりクラシックで、最近、こんなショッカーでもアクションでもCGでもない真っ当な演出のホラーを、久し振りに見たような気がする。そうそうホラーってのは、こちらの過剰な想像力を刺激する時が一番怖く、効果があるのだ。


一般的には命の宿ったクリーチャーは、逃げ出してフランケンシュタインや町の住民を恐怖に陥れるのだが、「ペニー・ドレッドフル」では、立ち上がったクリーチャーは、エモーショナルになって、まるで長年生き別れだった血縁に会ったような感じでフランケンシュタインと相対している。どうやらこのクリーチャーは、単に怪物というよりも、どちらかというとエレファント・マン的な異形の人間として造形されるようだ。なかなか面白そうな展開になってきた。











< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system