放送局: TLC

プレミア放送日: 4/15/2004 (Thu) 8:00-8:30

製作: WGBH、9ストーリー・エンタテインメント、TVオンタリオ、ディスカバリー・キッズ

製作総指揮: ケイト・テイラー、ジェシカ・ハンロン

クリエイティヴ・プロデューサー: カイ・ピンドール

脚本: キャシー・ウォー、ダイアナ・デキュベリス、ジョー・ファロン

ナレーション: ジョーン・キューザック

声: スコット・ボーディン (ピープ)、キャシー・ラスキー (クアック)、アマンダ・ソハ (チャープ)


物語: 第1話「クアックととても大きな岩 (Quack and the Very Big Rock)」

ひよこのピープとこまどりのチャープ、そしてアヒルのクアックは仲よし仲間。ある日クアックが丘を上っていると、彼のいつもの通り道に大きな岩が転がり落ちていた。自分の通り道によけいなものがあるのが気に入らないクアックは、ちょっとだけ迂回することにも腹が立つため、どうしても岩をのけてしまいたい。しかしクアックの力では岩はうんともすんとも動かない。クアックはピープとチャープに手助けを要求するが‥‥


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建て前上は生涯教育チャンネル、現実にはエンタテインメント・チャンネルと化しつつあるTLCは、しかし、まだまだ朝の時間帯では幼児向けの教育番組をちゃんと放送している。「レディ・セット・ラーン! (Ready Set Learn!)」と題されたその朝の教育番組の時間帯では、ペンギンのパズがホスト役となり、番組の合い間合い間に幼児に様々なことを教えるという体裁をとっている。ついでに言うと、それらの番組は、TLCの姉妹チャンネル、ディスカバリー・キッズでも放送されている。


「レディ・セット・ラーン!」は、「マジック・スクール・バス (Magic School Bus)」、「アニマル・ジャム (Animal Jam)」、「ブラム (Brum)」等の幼児向け番組を一まとめにした番組枠で、なかでも「マジック・スクール・バス」は、かれこれ10年くらい続いている。中途半端にリアルな絵は私はあまり好きではないが、かなり歴史と定評のある教育アニメーションだ。


今回、その一角に加わるのが、「ピープ・アンド・ザ・ビッグ・ワイド・ワールド」だ。ひよこのピープとこまどりのチャープ、暴れん坊のアヒルのクアック3人組を主人公に、彼らを取り巻く世界を描く。新番組であるが、番組自体は古くからあり、そもそもの原型は、既に1962年にモノクロ版で世に登場している。そのクリエイターのカイ・ピンドールが今回もクリエイティヴ・プロデューサーとして名を連ねている。


極端なデフォルメを施したり、ヘンに劇画的になったりするなど、どうしても私がそれほど惹かれない最近のアメリカのアニメーションにおいて、「ピープ」は、そのデフォルメが非常にうまくはまった稀な例だと思う。登場人物は、主人公のピープを筆頭に、すべてほとんど一筆書きができそうな簡略なキャラクターでありながら、うまく愛嬌を持たすことに成功している。


とはいえ、では、登場人 (動) 物がなにかということが一目でわかるかというと、それはそれでまた別問題だ。全身青色のクアックなぞは、正直に言うと、これのどこがアヒルなのかよくわからないが、なぜだか水兵帽を被っていると、アヒルかな、なんて思ってしまうのが不思議だ。チャープも、せいぜいが雀かな、と判断するくらいが関の山で、はっきり言って、これのどこがこまどりなのかよくわからない。


主人公のピープだって、実はかなり疑わしい。だいたい、ひよこのはずなのに、よく見ると既に彼の頭には赤いとさかが出ているではないか。それではひよこではなく、ニワトリというのだ。とまあ、ツッコミどころはままあるのだが、それでも、単純な色使いやデフォルメと相俟って、アメリカのアニメーションの中で、「ピープ」が視覚的に最も好感を持てる番組の一つであることは変わりない。


番組の第一回では、彼らがクアックの通り道にでんとすましている大きな岩を取り除こうと奮闘するが、岩はぴくりともしない。それは彼らが岩を丘の上の方に向かって押し上げているからだ。ところが下の方に向かって押す方が動かしやすいことがわかり、最後にはついに岩を斜面から転がり落とすことに成功する。私はこれを見て、一人ではできないことでも皆が協力して力を合わせるとできるようになるということを諭したエピソードかと思った。


そしたら、そのエピソードが終わり、次のエピソードとの合い間に、番組に関連した映像教材が流れるのだが、そこで子供たちが、色々なものを土手の上から転がすことを試している。タイヤは遠くまでよく転がっていくが、小さくて軽いものはすぐに芝に絡まって止まってしまう。あるいは糸車のようなものでも、コンクリートの上ではよく転がるなど、要するに、このエピソードの狙いは、加速や重力、抵抗というような概念をそれらしく教えることにあったようだ。


また、次のエピソードでは、ピープたちは自分たちの影を見て、自分たちの真似ばかりする新しい友達ができたと思い込む。しかしその友達は、日陰に行くといなくなってしまうのだった。ということから、直後の映像教材では、子供たちは懐中電灯を利用したりして影絵遊びを楽しむなど、日光、光に興味を持たせる話となっている。つまり、「ピープ」は、私は、なんとなく友達や仲間、他人と力を合わせることについて諭す道徳的教育番組だと思っていたのだが、そうではなく、サイエンス番組であったのだ。


とはいえ、「ピープ」を見る子供たちが、そういう、サイエンスを意識して番組を見るということはあるまい。実際の話、そういう教育的見地云々を抜きにして見た方が、「ピープ」は楽しめると思う。どうしても押しつけがましい印象がつけまとうこの種の教育番組において、「ピープ」は、万人が楽しめることのできる稀な番組と言えよう。





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Peep and the Big Wide World

ピープ・アンド・ザ・ビッグ・ワイド・ワールド   ★★★

 
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