放送局: FOX

プレミア放送日: 9/28/2001 (Fri) 21:00-22:00

製作: ブラッド・グレイTV、コロムビア・トライスターTV

製作総指揮: マイク・ホワイト、ブラッド・グレイ、ダイアン・キートン、ビル・ロビンソン

共同製作総指揮: ジム・ハート

クリエイター/脚本: マイク・ホワイト

監督: ダイアン・キートン

撮影: ロイ・ワグナー

音楽: マーク・スノウ

編集: タチアナ・リーゲル

美術: デボラ・レイモンド

出演: アリソン・ローマン (リリィ・マッカリスター)、マーティン・ドノヴァン (ウィル・マッカリスター)、デイナ・デラニー (キャサリン・マッカリスター)、フィリップ・ベイカー・ホール (ジョージ・グリーリー)、バーバラ・バブコック (リリアン・グリーリー)、アラン・シンプソン (ヘンリー・ベロウ)、ニコール・パッジ (ジェニー)、マーク・ヴァリー (ロバート・グリーリー)、バルサザール・ゲティ (ネイト・グリーリー)、ナターシャ・グレッグソン・ワグナー (ベス・グリーリー)、ポール・ディロン (フィリップ・パーカー)


物語: カリフォルニア、パサディナの超高級住宅街に広大な敷地と邸宅を構えるマッカリスター家は、誰一人知らぬ者のない名門一家であった。表向きは町の名士として平和な一家を装っていたが、主のウィルは浮気をしており、その妻キャサリンの最大の気がかりは夫や子供たちのリリィとメイスンの教育ということよりも今夜のパーティが成功するかということで、とにかく人のやることなすことにけちをつける義母リリアンの一言一句に汲々としていた。


ある夜、ウィルとキャサリンが外出している最中に邸宅の中に何者かが忍び込み、拳銃で自分の頭を撃って自殺するという事件が起きる。ウィルは家の力を使って事件を揉み消すが、リリィが通う学校の同級生フィリップは、自殺した男がキャサリンの昔の同級生であり、マッカリスター家の過去と何か関係があることを突き止める。しかしリリィが何を訊いてもキャサリンとウィルは知らぬ存ぜぬの一点張りで、頑として過去を語りたがらない。そのうちにも一家の鼻摘み者ネイトはキャサリンが大事にしていたネックレスを盗み出し、ウィルの浮気がばれ、ベスの連れてきたボーイフレンドの家系が問題となるなど、マッカリスター家の前に大きな暗雲が立ち込め始める‥‥


_______________________________________________________________


はっきり言って私はアメリカのプライムタイム・ソープのブームは終わっていたと思っていた。元々このブームは「ビバリーヒルズ青春白書」、「メルローズ・プレイス」等を擁していたFOXが一人で作り出し、一人で盛り上げたようなものなのだが、両番組が最終回を迎えてしまった現在、また新たなブームがやって来るには、あと数年の周期が必要だと思っていた。実際、昨年FOXは「ザ・ストリート」というダレン・スター製作のプライムタイム・ソープを編成、大御所アーロン・スペリングもNBCで「タイタンズ」の放送を始めたのだが、両番組とも2、3回放送されただけで低視聴率を理由にキャンセルされている。TNTが初めてこの分野に挑戦した「ブル」もダメだった。


それなのに、FOXはまた飽きもせずに新たなソープ、「パサディナ」を編成したのだ。本当に懲りないよな、こいつら。私はプライムタイム・ソープにほとんどと言っていいほど魅力を感じないので、本来ならこの種の番組はすべてパスするのだが、今回に限っては出演者と製作陣にちょっと惹かれるものがあった。まず、主演のデイナ・デラニーとマーティン・ドノヴァン。デラニーは日本ではさほど知られていないが、アメリカではこの種の番組の走りとも言える「チャイナ・ビーチ」以来、お茶の間に浸透しているわりとビッグ・ネイムである。一方ドノヴァンは、今年「華麗なるギャツビー」「エイミーとイザベル」で、腹に一物持つ中年俳優としての位置を着実に築いており、この配役はぴたりはまっていると思わせた。


他に超ヴェテランのフィリップ・ベイカー・ホール、「スペース・カウボーイズ」でのクリント・イーストウッドの奥さん役も記憶に新しいバーバラ・バブコック、「マンハッタン恋愛事情 (Two Girls and a Guy)」のナターシャ・グレッグソン・ワグナー、「白い嵐」のバルサザール・ゲティと、気になる布陣が揃う。製作の方も、製作総指揮と共にプレミア・エピソードの演出を担当しているのはなんとダイアン・キートンで、彼女は昨年も「電話で抱きしめて (Hanging Up)」を演出と、徐々に女優としてよりもカメラの後ろ側の方に活躍する場をシフトしている。クリエイターのマイク・ホワイトはWBの「ドーソンズ・クリーク」を製作しているが、有名なのはインディ映画の「チャック&バック」の脚本/主演の方で、どちらかというと受けを狙うタイプの人ではないなど、これまでのソープとはちょっと違った何かを感じさせる。


「パサディナ」と、スペリング/スターが製作するソープとを比較して一見して目につく最大の違いは、登場人物の年齢層の幅である。「ビバリーヒルズ青春白書」から始まって「MP」、「Sex and the City」、昨年の「ザ・ストリート」に至るまで、これまでのこの種のプライムタイム・ソープの最大のポイントは出演者が若い層に限られていたことで、最も歳がいっていても、せいぜいが30代の中盤くらいまでだった。ところが「パサディナ」は、下はまだ12、3歳の男の子から、上はほとんど老齢に達した人間までもが描かれる。つまり、「パサディナ」はソープはソープでもスペリング/スターの得意とする美男美女系のソープではなく、往年のネットワークが得意とした、例えば「ダラス」や「ダイナスティ」のような、とにかくありとあらゆるタイプの人間が入り乱れる、いわばソープの王道を行くドラマなのである。


一応主人公は15歳のリリィということになっており、番組は彼女の目から見たマッカリスター家の一部始終が描かれるわけだが、少なくともスペリング/スター製作番組のような美男美女総出演のドラマとは一線を画している。第一、リリィなんて、一見しただけではなんでこういう顔の女の子がソープ番組で主演になれるのかまるでわからない。私は別に自分の美的感覚に自信を持っているわけではないが、それでも彼女を美人とか可愛いとかいうものは少ないだろう。


だからかは知らないが、数多登場するキャラクターの中で、彼女だけは後ろ暗いところがないように性格が設定されている。その他の人間は、リリィの弟のメイスンにはじまって祖父母のジョージとリリアンに至るまで、登場する全員が全員腹黒いか素行に何か問題のある人間として設定されており、それらが皆、お互いの腹を探りながら行動する様が描かれる。あまりに同情する余地がないので、早く皆問題を起こして痛い目に遭ってくれないかと思わせる。実際、番組はスキャンダルに巻き込まれたマッカリスター家をリリィが一年前に遡って思い出すという体裁をとっている。これからいかにマッカリスター家が崩壊していくかがつぶさに描かれるわけだ。


こういうソープらしいソープを最近見た記憶がなかったので、たまに見ると実に面白かった。前述したように私は別にソープのファンじゃないのだが、こういういかにもという感じの王道を行く番組はやはり面白い。毎日放送される日中のソープは、あまりにも無理があり過ぎる上に手抜きがひどくていくらなんでも見る気になれないし、スペリング/スターのプライムタイム・ソープを見ていつも感じる、世の中20代の人間ばかりなわけじゃないんだけどなあという感じも「パサディナ」では受けなかった。ソープというのは恋愛だけが主題というわけじゃなく、人間関係の曼陀羅模様のいびつさ、えげつなさ、面白さを描くものというのが私の意見である。そのためには老若男女入り交じってもらいたいし、たとえ内容が先の読めるできレースのようなものに見えようとも、やるからにはそういうものをこそ大真面目に力技で演じてもらいたい。これぞソープの醍醐味である。「パサディナ」はしかも登場人物がほとんどすべて悪者というのもいい。きっと皆段々どつぼにはまって落ちていくとこまで落ちていくんだろう。思わず期待してしまう。


しかし、珍しくも私が面白いと思ったプライムタイム・ソープの「パサディナ」であるが、実は幸先はあまりよくない。なんてったって視聴率がどん尻なのだ。プレミアからほとんど2-3%で推移しており、これは一と月も持たずにキャンセルされるかと思われた。ネットワークで2-3%の視聴率って、これってはっきり言ってほとんど誰も見ていないに等しい。4大ネットワークの新番組の視聴率ではぶっちぎりの最下位である。おかげで「パサディナ」は視聴率レースで重要な11月のスイープ月間では編成から外されてしまい、このほど来年まで新エピソードは放送されないことが発表になった。ほとんどキャンセルされたのと同じ扱いである。


しかしそれでもキャンセルの発表はなく、FOXはまだ年明けから「パサディナ」の放送は続けると言っている。この視聴率で、それでもキャンセルをせず、まだ放送を続ける姿勢を見せているのは、番組の質にはわりと自信を持っていることの証拠である。たとえ現在低視聴率に喘いでいても、いったん視聴者がこの番組を発見しさえしてくれれば、きっと見続けてくれるに違いないという願望のようなものが垣間見える。実際私も番組自体は面白いと思った。昨年、「ザ・ストリート」が4-5%という少なくとも「パサディナ」よりは高い視聴率をとりながらも数回放送されただけでキャンセルされたことを思えば、2-3%でまだ辛抱されている「パサディナ」の方が期待されているのはありありだ。


しかし今シーズン、苦しんでいるのは「パサディナ」だけでなく、その他もろもろのリアリティ・ショウも低視聴率に甘んじている。その理由の多くを9月11日のテロリスト・アタックに負っているのは明らかで、あの事件以来、人々は限られた環境の中で敵を一人追放したとか何とかで一喜一憂するリアリティ・ショウの視聴に楽しみを見出せなくなった。ソープも一緒だ。ただでさえソープ・ブームが去った感があるのに、人々がこれ以上ソープの定石であるちまちまとした裏切りやパワー・ゲームの視聴にうつつを抜かす気分じゃなくなったことはよくわかる。本当になんで今時プライムタイム・ソープなんかを編成してしまったのか。タイミングとしては最悪である。「パサディナ」の将来はよく言って灰色としか言い様がない。いくらなんでもこれ以上視聴率が改善されないのであれば、やはり遠からずキャンセルの憂き目に遭うのは避けられないだろう。「パサディナ」は3、4年前か、3、4年後に放送されるべきだった。







< previous                                    HOME

 

Pasadena

パサディナ   ★★★

 
inserted by FC2 system