パリス・ヒルトンズ・マイ・ニュー・BFF

放送局: MTV

プレミア放送日: 9/30/2008 (Tue) 22:00-23:00

製作: イッシュ・エンタテインメント

製作総指揮: マイケル・ハーション、パリス・ヒルトン、ジェイソン・ムーア

ホスト: パリス・ヒルトン


内容: パリス・ヒルトンの新しい親友を選ぶ勝ち抜きリアリティ。


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世にお騒がせ俳優、シンガー、タレントの類いは多々あれど、パリス・ヒルトンほどの知名度と影響力を持つ存在はなかろうと思う。例えば同様にお騒がせ度、スキャンダラス性等をとると、パリスに勝るとも劣らぬ注目度を持つブリトニー・スピアースという唯一無二の存在もある。その列に連なるリンジー・ローハンもいる。


一方、ブリトニーやリンジーは、歌手、あるいは俳優として、その道のプロだ。その実力を疑う者は誰もいない。しかしパリスの場合、自分自身の才能や実力ではなく、世界有数の富豪ヒルトン家の跡取り娘として、その絶大な資金力にものを言わせて好き放題しまくるという、世間をなめまくった態度で逆に注目を集めた。彼女の才能は、その、銀のスプーンを口にくわえて生まれてきたというところにこそあった。


歌うこともできず演技することもできず踊ることもできず性格は傲慢で、ただ少しばかり可愛めという、せいぜい中の上くらいの容姿でしかないパリスであるが、自分が最も必要とされ、自分が最も輝ける時代と場所に生まれてくることこそを才能と呼ぶのならば、たぶんパリスほど才能に恵まれている存在もないとも言える。こんな社会をなめきった態度でマジに大統領選の応援に借り出されようとするその知名度、影響力は、もはや才能とは知能指数や音感、運動神経の問題ではないと納得させられるのに充分なものがあった。


普通、女性タレントが恋人とセックスしているヴィデオがそこらじゅうにばら撒かれたら、だいたいはキャリアの終焉を意味する。特にパリスは清純派として売っていたわけではないとはいえ、そういうことがあったら、少なくとも本人は人前に出るのを自粛すると思う。むろん、パリスはそうではなかった。


法律を破って無免許で車を運転したら刑務所に入れられるのは当然であり、それを不公平だといって不服を唱えるやつには、逆に刑期を倍にしてやればいい。それに駄々をこねてたった一週間だか二週間だか刑務所経験をしたくらいで生まれ変わったと堂々と口にするやつの言うことなんか金輪際信用できない。あのマーサ・スチュワートでさえその何倍もの期間を刑務所入りし、あわやこれで彼女のキャリアも終わりかというところまで行ったのに、たった数日間の刑務所経験が逆に箔となってさらに注目度を高め、むしろキャリアとしてはプラスに働くというのは、やはり計算ではできなかろうと思う。こういうことができるのは世界中でパリスくらいしかいまいと思える時、これはやはり運というよりは才能と呼ぶべきものだろうと思わざるを得ない。


とはいえなんらかの芸を持っているわけではないパリスの場合、ただ彼女一人だけだと、注目を維持するという点ではやはり訴求力に乏しい。パリスがだいたいいつも一人だけではなく自分の他にお騒がせタレントとつるんでいるのは、自分だけだとどうしてもすぐに飽きられるというのを彼女の一流の直感が感じとっているからだと思う。リンジーやブリトニーの場合、彼女らもつるんで夜な夜な悪さする場合もあるだろうが、それでも注目されるのは彼女ら自身だ。しかしパリスがマスコミの前に現れる時は、自分と同等以上の知名度を持つ者と一緒にいる時がほとんどだ。


パリスの名前を一躍お茶の間にまで浸透させたFOXの「ザ・シンプル・ライフ」の場合、パリスの相手はライオネル・リッチーの娘ニコールだった。番組は何シーズンも続き、二人でつるんで全米を旅して回る間柄でありながら、結局二人は友達でもなんでもなかったと、後にニコール自身が自分の口から明言していた。そりゃビジネスと割り切れば赤の他人と旅行するのはなんでもないだろうが、しかしその結果、キャリアにプラスになったのはどう見てもニコールではなくパリスの方だろう。今、ニコールがどこで何しているかなんて、誰も知らないに違いない。誰かとつるんで何をしようとも、結果的にだいたいいつも最終的な利を得るのはパリスなのだ。


そういうパリスがまた開いた口が塞がらない言語道断のリアリティ・ショウに出演する。それが「パリス・ヒルトンズ・マイ・ニュー・BFF」だ。BFFとはベスト・フレンズ・フォーエヴァー (Best Friends Forever) の略で、私とあなたはいつまでも一緒という、つまり親友を意味する。要するに、今は大したタレントとつるんでいるわけではないパリスの、新しい親友を勝ち抜きで決めようというのが「マイ・ニュー・BFF」なのだ。


だいたい、親友という存在をTVの勝ち抜きリアリティ・ショウで決めるものなのかという番組の前提に対する大きな疑問がある。その一方で、たぶん親友よりもっと大きな存在と言える配偶者を、見合いや親の意向によって本人の意志とはまったく関係ないところで決められてしまう場合もある。本当に最終的に結婚するしないかは本人たちの判断に委ねられているとはいえ、ABCの「ザ・バチェラー」のような配偶者を勝ち抜きで決めるリアリティ・ショウが既に市民権を得ている今、親友をTV番組で決めることなぞなんでもないのかもしれない。


番組は女性16人男性2人の計18人の参加者が、パリスのBFFになることを夢見て凌ぎを削る。男性が2人入っているが、別に異性の友人がいてもおかしいこともない。とはいえそのうちの一人、アジア系のオンチはゲイ (というかバイ・セクシャルか?) で、しかも超のつく強力なキャラクターで、普通ならこういうのが近くにいたらBFFどころか顔面に蹴り入れて追い返すところだが、ま、確かにパリスの取り巻きとしては有効かもしれない。


いずれにしても社会をなめ切っているこういう番組、普通なら無視してしまうところだ。それをせず敢えて見てみたのは、番組内でパリスは参加者を引き連れて東京にプチ旅行し、そこでも番組を収録するという発表があったためで、さすがにそうなると気になって、パリス一行が東京に向かう番組第3回まで待って見たのであった。


その第3回、番組は全編東京収録というわけではなく、途中まではいつものようにLA収録で、途中からMTVジャパンのジャパン・ヴィデオ・ミュージック・アウォーズ (JVMA) のプレゼンターとして招待されたパリスが、参加者の中から4人を選び、東京行きに同行させた模様を収録している。パリスが選んだのは、男性のブライアンと、ブリタニー、ナターシャ、シンスーの4人で、しかもこの4人、パリスから発表があると、そのまま着のみ着のまま機上の人となった。


それに先立つ遊園地では、パリスのBFFとなる人間はいついかなる時でも人に見られていることを意識してそれなりのポーズをとっていなければならない、それは絶叫コースターに乗っている時でも同じことという理屈で、参加者をローラー・コースターに乗せ、途中で写真を撮り、それを見てBFF判断の材料にする、というか、ただ歪んだ顔を見て笑っているアクティヴィティもあった。


ここでも出色はオンチで、超のつく怖がりであるオンチは、コースターに乗せられる前から泣き出してパリスにパスさせてくれと懇願、それでもダメとなると意を決して乗り込むが、降りた後にゴミ缶に頭を突っ込んでゲーゲー吐きまくっていた。単にキャラクターというだけなら、こいつに勝る者はいない。しかしこいつ、パリスのBFFというより、MTVのもう一つの恋人/友人獲得系勝ち抜きリアリティの「ア・ショット・アット・ラヴ・ウィズ・ティラ・テキーラ (A Shot at Love with Tila Tequila)」の方に出るべきだったのではないか。


さて東京では、一行はハイアット・ホテルに泊まる。ハイアットという看板が一瞬映るのだが、それがパーク・ハイアットかグランド・ハイアットか、ハイアット・リージェンシーかはわからない。たぶん六本木のグランド・ハイアットなんじゃないかと思う。なんて予想ができるのも、私たち夫婦は今秋、久しぶりに帰省したばかりで、その時やっと六本木まで足を運んで念願の六本木ヒルズ (今さらなんだが) と東京ミッド・タウンを見て回ることができたのだが、おかげで半地下のようなところからレセプションに達するTVに映ったハイアットに、なんとなく見覚えがあったのであった。あれはヒルズのハイアットだ。いずれにしても東京ヒルトンには泊まらないのねと思ったが、今回はMTVジャパンの招待だからそれも当然か。


さてその後パリスは、MTVジャパンの要請もあるのだろう、東京の色んなところに一人で連れ出されてファン・サーヴィスに余念がない。一方のブライアン、ブリタニー、ナターシャ、シンスーはそれぞれいかにも原宿のホコ天にいますという感じのゴス・メイドっぽい衣装をした女の子たちから5万円ずつを手渡され、ラフォーレで独自のセンスで着るものを調達する。


その後一行はVMA会場のさいたまアリーナで合流、パリスはともかくその連れの4人まで、顔は知らないけど誰かセレブに違いないと思い込んだギャラリーによって、サインや握手をせがまれていたりしたのがなにやらおかしい。今回最大のツイストは、東京に来た (VMA会場は実際には埼玉であるが) 4人のうち、追放する二人をこの4人の中から選んでしまうというパリスの爆弾発言で、いきなり4人の顔が緊張する。追放される確率50%であるわけだから、これは緊張するだろう。


そして舞台裏で4人を吟味したパリスは、その場でブリタニーの手をつかむと、そのまま彼女を引き連れて大トリのプレゼンターとしてステージに登場、二人してExileのヴィデオ・オブ・ジ・イヤーを発表したのであった。少なくともブリタニーにとっては非常にエキサイティングな体験だったに違いない。因みに会場ではパリスと顔なじみのファーギーも映っており、パリスにまだBFFは決まらないの? とか訊いていた。


ホテルに帰ると、浴衣姿の4人を前に、これまた和服姿のパリスが登場、わりと似合っていて感心する。彼女はああいう着崩した遊郭女郎的な格好が結構似合う。そしてパリスは今回追放する二人の発表に移る。まずVMAでパリスに選ばれたブリタニーが残る。そして残りの3人からブライアンとシンスーが追放される。やはり男性はBFFとしては不適格だったというのと、シンスーの場合はパーティや食事の席で、ほとんどアル中かと思われるくらい飲んではめを外すのが今イチ気に入られなかったようだ。


さて、番組は既に佳境に入っており、あとは最終回を残すのみで、ここまで残っているのは上述のブリタニーとヴァネッサの二人だけだ。オンチもいつの間にか落ちていたか。ま、彼は最初から話題作りのための客寄せのサルみたいな印象が濃厚だったし、パリスも最初から本気で彼を候補として考えていたわけではあるまい。いずれにしても私としてはほとんどヴァネッサを知らないからなんとも言いようがないが、しかし番組第3回を見た限り、素直っぽいブリタニーは、うまくパリスを立ててやって行けるような気がした。BFFとか言っているが、パリスが本心で求めているのは、自分より目立たずかといってブスではなく、連れて歩くのに有効で何かと役に立つ人間だと思うので、ブリタニーが選ばれる可能性はかなり高いと思う。むろん私はそれが本人のためになるとはまったく思わないが。



追記 (2008年12月)

番組最終回を見たわけではないが、MTVのHPで私の予想通りパリスのBFFに選ばれたのはブリタニーだったことを知った。ブリタニーには自分の人生をめちゃめちゃにされたと思わない範囲でせいぜい一定期間パリスのBFFとしてエンジョイしてもらいたい。考えたらこの番組、もしMTVが第2シーズンも製作しようと考えたら、その時点でブリタニーは捨てられて新しいBFFが選ばれるのだろうか。パリスとMTVのことだからあり得ないことではないと思ってしまうのだった。







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パリス・ヒルトンズ・マイ・ニュー・BFF   ★★

 
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