第86回全米プロ選手権

2004年8月12-15日   ★★★1/2

ウィスコンシン州ヘイヴン、ホイッスリング・ストレイツ・ゴルフ・クラブ

タイガー・ウッズが初日3オーヴァー75というスコアで、いきなりどきどきさせる。ビュイック・オープンを見る限り、復調の気配濃厚で、これでやっと今年最後のメイジャーでドラマを演出してくれるかと思っていたら、見たいのはこういうドラマではない。現在更新中の連続予選通過記録も怪しくなってきて、これはまずい。一方、ちゃんと上位に絡むアーニー・エルスやヴィージェイ・シングはさすが。


初日、2日目のウッズのパーティは、そのシングに、さらにやはりビュイック・オープンで優勝を争ったジョン・デイリーという願ってもないメンツだったのだが、デイリーは初日9オーヴァーと、ウッズより早々と脱落する。それにしても今回の舞台となるホイッスリング・ストレイツは、ウィスコンシン州の湖沿いのコースなんだが、見た限りではまるで英国の海沿いのリンクス・コースだ。いつも熱気の中での開催となる全米プロが、今回に限っては、特に初日なんか肌寒い湖風の吹く中、ゴルファーは長袖シャツやヴェストを着込んでのプレイで、ほんとに全米プロを見ているような気がしない。今年は全米オープンのシネコック・ヒルズもリンクス・タイプのコースだったし、一年で全英を何度も見てるみたいだ。


さて、ウッズは2日目も1番パー4、2番パー5と連続バーディでほっとさせたのも束の間、すぐに貯金を吐き出してしまい、結局3オーヴァーのままバック・ナインを迎えてしまう。予想予選通過ラインは1オーヴァーで、このままでは本当に危ない。ウッズにとってはチャンスのはずの11番パー5もパーでしか上がれず、13番パー4でやっとバーディを奪い2オーヴァーとなるも、まだ一つ足りない。ワン・オン狙いで行ったリーチャブルの14番パー4も結局パーと、スコアはほとんど縮まらない。まずいまずいまずい。


そして残り3ホールとなった時点から、16番パー5、17番パー3で連続バーディを奪い、やっと予選通過したのであった。とはいえ、予選通過すら危なかったものが、終わった時には1ストローク余裕があったところが、確かにただ者ではないのだが。しかし、そんなんじゃなくて、メイジャーで首位に絡んでくれよ。


結局折り返し時点で首位はジャスティン・レナードとヴィージェイ・シングが9アンダーで並ぶ。8アンダーですぐ後ろに着けているのは、ダレン・クラーク、アーニー・エルス、ブライニー・ベアードの3人。レナードとシングは二人とも3日目も踏ん張り、3日目終了時点でシングが12アンダーで首位、レナードが11アンダーで続き、少し離れて8アンダーに、エルス、クラーク、フィル・ミッケルソン、クリス・ライリー、スティーヴン・エイムスの5人が並ぶ。


最終日はフロント・ナインでシングが3オーヴァーともたついたためレナードとシングが逆転、レナード一人が踏ん張るという印象で進む。一瞬スティーヴン・エイムスが伸びてきたかと思われたがすぐにまた集団の中に沈むなど、他にチャージをかけるゴルファーもいないため、ほとんど優勝はレナードかシングのどちらかに絞られたと思われた。しかし、結局シングはさらに15番パー4でもボギーを叩き、この時点でレナード10アンダー、8アンダーで続くシング以下のゴルファーに2打差をつける。しかしレナードも16番ボギーで、これで9アンダー、勝負はまだまだわからない。


最終18番パー4は、第2打を30フィートにつけたシングに対し、レナードの第2打はグリーン手前の一段低くなったラフへ。シングのバーディ・パットは3フィート残し、レナードの第3打もソフトすぎて6フィート残す。レナードはこのパー・パットを外し、このホール、ボギーで、通算8アンダーでレギュレイションを終える。シングはパー・パットを沈め、プレイオフとなった。こうなると、この18番でボギーを叩いて7アンダーでレギュレイションを終えたエルスやクリス・ライリーにももう少しでプレイオフのチャンスがあったのに。6アンダーのミッケルソンだって、ここでバーディを奪えればとどうしても考えてしまうのだが、今さら覆水は盆に返らない。


それにしても勝負が競るのはいいんだが、そばで女房が、つまらないゴルフなんか見ないでオリンピック見ないの、ねえ、オリンピック見ないの、と言っているのをなんとかすかしたりなだめたりして騙し騙し見ているのに、今回に限っては、とっととレナードにウィニング・パットを決めてもらいたかった。レナードのパットがそれた瞬間、私はTV画面に向かってレナードのバカーっと叫んでしまった。これであと、もう1時間かよ。女房の目が吊り上がってきてんぞ。いきなり散歩してくると言って外に行ってしまった。ひえー、あとが怖い。


さて、10番、17番、18番の3ホールで行われたプレイオフは、最終日のレギュレイションの不調が嘘のように、ふっ切れたシングがいきなり350ヤードのドライヴで一人だけバーディを奪い、17番でもティ・ショットを5フィートにつけ、バーディこそとれなかったが、なんか、なんでこんなゴルフをレギュレイションでしなかったかと思うようなほぼ完璧なゴルフを見せる。18番でも40フィートのバーディ・パットを1フィートにつけた時点で、一人先にタップ・イン・パーで上がり、優勝を決めた。レナードでもシングでもどちらでも構わなかったから、プレイオフまで待たないで決着つけてもらいたかったよ。


ところでエルスは、今年はマスターズではほとんど決まっていた優勝をミッケルソンにさらわれ、全米では最終日最終組で回りながら崩れ、全英でもいいところをトッド・ハミルトンに持ってかれてしまった。そして今回もプレイオフに1打差で届かないなど、皆ウッズのスランプとミッケルソンの好調さばかりを口にするが、実は勝てない霊に取り憑かれたかのようなエルスの紙一重のシーズンだったという印象の方が強い。ま、まだ今シーズンが完全に終わったわけじゃないが。







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