オプラ・ウィンフリー・ネットワーク    Oprah Winfrey Network (OWN)

ネットワーク・プレミア放送日: 1/1/2011 (Sat) 12:00


内容: アメリカを代表するTVパーソナリティ、オプラ・ウィンフリーが主宰する新TVチャンネル。


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オプラ・ウィンフリーは、知名度という点ではその名はアメリカ国外ではそれほど知られていないかもしれない。しかしアメリカ国内においては、知名度、影響力、どちらをとっても強大だ。特に本人が黒人女性ということもあり、黒人女性に対する影響力は絶大なるものがあり、時に大統領のそれをも凌ぐ。オバマが大統領になる前は、明らかに女性はブッシュよりウィンフリーの言うことに耳を傾けた。


ウィンフリーがホストのシンジケーション・トーク・ショウの「ジ・オプラ・ウィンフリー・ショウ (The Oprah Winfrey Show)」(通称「オプラ」) は、始まってから4半世紀を数える人気番組で、日中のトーク・ショウとしてだけではなく、アメリカで放送されている、深夜トークをも含めた全トーク・ショウの中で最強だ。


しかし昨夏、ウィンフリーは長らく続いた「オプラ」の2011年限りでの終了を宣言した。この25年間で一応したいことは全部やったという区切りもあるだろうし、次のステップに進みたいという希望もあるだろう。それが今度は自分がホストのショウどころか、自分が全番組を掌握して全権を握るチャンネル、オプラ・ウィンフリー・ネットワーク (Oprah Winfrey Network (OWN)) の立ち上げだった。


ちょっとこのスケール、さすがウィンフリーと言わざるを得ない。アメリカにはそれなりに力を持つパワー・プレイヤーは結構どこにでもいるが、しかし、一人で番組どころかチャンネルを立ち上げてしまうという発想をした者はほとんどいない。発想はしても、様々な条件や制約、資金力の問題が、それを阻むだろう。


記憶している限りではHDTVの黎明期に、これはビジネス・チャンスになると見込んで、まだほとんどHDという単語自体知られていない時期にHDTV専門チャンネルを独力で立ち上げた億万長者のマーク・キューバンという例が思い浮かぶ。しかしそれだって、キューバンはHD番組の製作に尽力してチャンネルの顔となっただけであって、番組そのものがキューバンと関係しているわけではない。


一方、ここがウィンフリーのすごいところだが、OWNが編成する番組は、すべてウィンフリーが製作に関係している。つまり、すべての番組においてウィンフリーのカラーが出ている。ウィンフリーによるウィンフリーのための番組を揃えるチャンネルが、OWNなのだ。いくらアメリカが500チャンネル時代といっても、チャンネル数には限りがあり、どんなに個人に力やアイディアがあっても、個人チャンネルの実現はかなり難しいと言える。その上、そのチャンネルを人が見てくれるという保証はどこにもない。それなのにそれを実現させてしまい、しかも人がそれを見る。これがウィンフリーの力なのだ。


OWNは2011年元旦正午からというキリのいい時刻に放送を開始した。最初は、これから編成される番組の紹介、チャンネル案内、過去の自分の番組の総集編や舞台裏の紹介みたいなもので編成され、徐々に新しい番組が投入されている。主だったものを挙げると:



•「クリスティーナズ・ビッグ・ボウル・オブ・ラヴ (Christina's Big Bowl of Love)」1/3/2011 (Mon) 15:30-16:00 (ソウル・フード・クッキング)

•「イナッフ・オールレディ・ウィズ・ピーター・ウォルシュ (Enough Already with Peter Walsh)」1/3/2011 (Mon) 17:00-18:00 (ホーダーに密着する)

•「イン・ザ・ベッドルーム・ウィズ・ドクター・ローラ・バーマン (In the Bedroom with Dr. Laura Berman)」1/3/2011 (Mon) 22:00-23:00 (カップル・カウンセリング)

•「ミラクル・デティクティヴ (Miracle Detective)」1/5/2011 (Wed) 22:00-23:00 (奇跡の真贋を見極める)

•「ユア・オウン・ショウ: オプラズ・サーチ・フォー・ザ・ネクスト・TV・スター (Your Own Show: Oprah's Search for the Next TV Star)」1/7/2011 (Fri) 21:00-22:00 (勝ち抜きTVパーソナリティ選出リアリティ)

•「ザ・ゲイル・キング・ショウ (The Gayle King Show)」1/10/2011 (Mon) 10:00-11:00 (女性向けトーク・ショウ)

•「ブレイキング・ダウン・ザ・バーズ (Breaking Down the Bars)」2/15/2011(Tue)21:00-22:00 (服役中の女囚に密着する)

•「アウア・アメリカ・ウィズ・リサ・リン (Our America with Lisa Ling)」2/15/2011(Tue)22:00-23:00 (アメリカの奇矯な人々)

•「サーチング・フォー‥‥ (Searching for...)」2/14/2011(Mon)21:00-22:00 (尋ね人探索)

•「アディクティド・トゥ・フード (Addicted to Food)」3/29/2011 (Tue) 22:00-23:00 (摂食障害の者たち)

•「キッドナップト・バイ・ザ・キッズ (Kidnapped by The Kids)」4/4/2011 (Mon) 21:00-22:00(子供が親を拉致して一緒に遊ばせる)

•「ザ・ジャッズ (The Judds)」4/10/2011 (Sun) 21:00-22:00 (ウィノナとナオミのジャッド母娘に密着する



私見ではこれらの番組群の中で、最も力を入れていると思ったのが「ユア・オウン・ショウ」、最もチャンネルの特色が出ていると思ったのが「ゲイル・キング・ショウ」だ。前者は、視聴者に自分がホストを担当する番組を企画させてピッチさせ、毎週勝ち抜きで篩いにかけ、最後まで残った者に自分の番組を持たせてあげるという勝ち抜きリアリティ・ショウだ。


素人に番組を任せてみるわけで、考えれば太っ腹と言える。いろんな企画が上がっていたが、勝ち抜きである以上、そこには当然競争がある。私が思わずにやりとしたのは、そこで参加者同士のいがみ合いや、罵り合いがどうしても起こってしまうことにある。


ウィンフリー、および番組としての「オプラ」の持ち味は、なんといってもそのポジティヴな姿勢にある。そこには足の引っ張り合いやネガティヴな要素はない。しかし「ユア・オウン・ショウ」のような勝ち抜きリアリティ・ショウになると、どうしても参加者はライヴァルの欠点をあげつらわざるを得ない。視聴者の立場から言うと、勝ち抜きリアリティはそういう参加者の生の感情の発露を見るところにこそ醍醐味がある。ウィンフリーとしては、そこでお互い正々堂々と公明正大に勝負に挑むことによるポジティヴな雰囲気を養成したかったのだと思うが、参加者の立場から言うと、そこまで建て前に固執してチャンスを棒に振ることなどできなかったということか。


因みに番組ホストは「クイア・ガイ・フォー・ザ・ストレート・ガイ (Queer Eye for the Straight Guy)」のカーソン・クレスリーと、シンジケーションのショウビズ・ニューズ「アクセス・ハリウッド (Access Hollywood)」のナンシー・オデルで、彼らだってできればオプラ色を崩さず、なるたけ否定的な意見を吐かずに番組を進めないといけないわけで、なかなか難しい重責と言える。


番組はこのほど第1シーズンを終了、勝ったのは一風変わったクッキング・ショウをピッチしたクリスティーナによる「クリスティーナズ・フィアレス・キッチン (Christina’s Fearless Kitchen)」と、電動の車椅子がないと移動できない身障者のザックによるトラヴェルもの「ローリン・アラウンド・ザ・ワールド・ウィズ・ザック・アナー (Rollin’ Around the World with Zach Anner)」で、結局最後はいかにもウィンフリーっぽい番組企画が選ばれた。


一方「ゲイル・キング・ショウ」は、ウィンフリーの盟友で、「オプラ」にもよく顔を出すゲイル・キングによるトーク・ショウだ。既に彼女自身同名のラジオ番組を持っており、番組はそれをTVに移植したものと言える。生放送であり、ラジオ番組のように途中で視聴者からの電話が入り、おしゃべりしたりする。その番組第1回は、ちょうどアリゾナで民主党議員のガブリエル・ギフォーズが撃たれた翌々日になってしまい、ほとんどその話題で1時間を費やしたため、番組プレミアという華やかさとは対極の重々しい雰囲気になってしまったのは残念なところ。


その後のエピソードももっぱらラジオ番組的な印象は拭えず、キングはほとんどの時間をカウチに座ってしゃべることに費やす。もちろんトーク・ショウだからそれこそがポイントであり、実際頭の回転も速いキングのしゃべりやインタヴュウの技術はなかなかのものではあるが、TVとしてはあまり動きがなくて多少退屈な感じがするのは否めない。視聴者はクルマを運転しながらラジオのように番組を聞いているわけではないのだ。


その他の番組では、今、注目されているホーダーに密着する「イナッフ・オールレディ・ウィズ・ピーター・ウォルシュ」とか、消息の知れない人間を探し出して対面させるWeの人気番組「ザ・ロケイター (The Locator)」を真似た「サーチング・フォー」、摂食障害を持つ者に密着する「アディクティド・トゥ・フード」等、今旬の話題を当然押さえている。


「アウア・アメリカ・ウィズ・リサ・リン」ホストのリサ・リンは、本人よりも北朝鮮に行って拿捕監禁されて世間を騒がせた、妹のローラ・リンの方が知られるようになってしまった。とはいえリサの方も「アウア・アメリカ」ではこちらはアメリカ内部だけだが、国内の奇人変人カルトの類いを紹介して、実はなかなか面白い。近づきにはなりたくないが、外から見てる分には興味深い変人は、アメリカには腐るほどいる。


OWN番組を概観しての印象を一言でいうと、ずばり「目利き」だ。さすが「オプラ」を何十年も視聴率1位の座に君臨させ続けるだけあって、視聴者をつかむツボはしっかり押さえているという感じがする。始まる前は、いくらウィンフリーが立ち上げるチャンネルとはいえ、すべてウィンフリー・カラーの番組で24/7揃えるのはさすがに無理がないかと思ったが、番組も成績も思った以上によくやれている。ウィンフリーの力は本当に侮れない。








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