ワン・ストレンジ・ロック (One Strange Rock) 

放送局: ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル 

放送日: 3/26/2018 (Mon) 22:00-23:00 

製作: ニュートピア 

製作総指揮: ダーレン・アロノフスキー、ジェイン・ルート 

ナレーション: ウィル・スミス 

  

内容: 独特の視点から見た地球。  


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One Strange Rock


ワン・ストレンジ・ロック  ★★1/2

ワン・ストレンジ・ロック、一個の奇妙な大きな岩、つまり地球のことだ。この言い回しを聞いたのは初めてではないので、たぶん英語ではわりと普通に使われる言い方なのだと思う。特に宇宙から地球を見た時、他の惑星と異なるということを強調するために用いられる場合が多い。 

  

実際「ワン・ストレンジ・ロック」は宇宙から見た地球というのがテーマであり、宇宙飛行士が番組中に何人も出てきてそれぞれの体験を語る。科学者や地質学者、航空カメラマン等、他にも何人もフィーチャーされて話を述べる者たちもいるが、基本は宇宙飛行士だ。 

  

この視点が、番組をユニークなものにしている。映像に宇宙や空中から見た地球をとらえるものが多く、結果として俯瞰的で美しく、かつダイナミックでSFチックな映像が多い。SF映画を見ているみたいなのだ。 

  

これは製作総指揮のダーレン・アロノフスキーの影響が大きいと思える。独特のヴィジュアルで知られるアロノフスキーというと、代表作は「ブラック・スワン (Black Swan)」だと思うが、「ファウンテン 永遠につづく愛

(The Fountain)」「ノア 約束の舟 (Noah)」、そして昨年の「マザー! (Mother!)」等、SF末世的なイメージで印象に残る作品が多い。特に「ワン・ストレンジ・ロック」は、ずばり「ファウンテン」と重なる。 

  

さらにホスト・ナレーション役のウィル・スミスの存在も大きい。ハリウッドの人間がドキュメンタリーでナレーションを担当するというのは結構あるが、だいたいナレーション・オンリーで、本人が前面にしゃしゃり出てあれこれ説明したりしない。セレブリティが出過ぎると、番組の印象を大きく変えてしまう危惧があるからだ。 

  

それなのにスミスは堂々と何度も登場しては、宇宙がどうの地球がこうのとべらべらと喋る。段々真面目なドキュメンタリーが「メン・イン・ブラック (Men in Black)」化して行く。まさかサングラスかけたりしないよな。 

  

ハリウッド・セレブがこの手のドキュメンタリーに関係しているものとしては、同じくナショナル・ジオグラフィック・チャンネルでモーガン・フリーマンが同様にホスト・ナレーターとして前面に出て来る「ザ・ストーリー・オブ・ゴッド・ウィズ・モーガン・フリーマン (The Story of God with Morgan Freeman)」がある。自分の名前がタイトルについているくらいだから積極的にフリーマンの番組であり、既に第3シーズンの放送が決まっている。こちらは「ワン・ストレンジ・ロック」ほど突飛な印象は受けないが、この番組の成功が「ワン・ストレンジ・ロック」へ道を拓いただろうことは大いに考えられる。 

  

先頃はジェイムズ・キャメロンがホストの「ジェイムズ・キャメロンズ・ストーリー・オブ・サイエンス・フィクション (James Cameron’s Story of Science Fiction)」もAMCで放送された。キャメロンがリドリー・スコットにインタヴュウしていた。「エイリアン (Alien)」1、2の監督顔合わせだ。科学番組というよりはSF番組だが、ナレーターの人選で番組の印象がわりと左右されるというのは、確かにある。 

  

「ワン・ストレンジ・ロック」はとにかくヴィジュアル重視という印象が最も強い。今まで見たことも聞いたこともないような辺境に赴いて、地球にこんな場所があるというヴィジュアルを見せる。特に、宇宙から見ているという俯瞰の視点が多く、ディスカバリー/BBCの「プラネット・アース(PlanetEarth)」ともまた異なる視点・取り組みだ。 

 

個人的に印象的だったのが第3話の「シールド (Shield)」で、冒頭、地球、ニューヨークから見た太陽、それも夕陽という光景から始まる。ニューヨークから夕陽というと、エンパイア・ステイト・ビルやワールド・トレード・センターの展望台から見た夕陽と思いそうだが、そうではない。 

  

毎年春と秋に、夕陽がちょうどマンハッタンを東西に貫くストリートの延長線上に沈んで行くという非常に絵になる光景が見られる。ずっと昔から見られた光景のはずだが、ここ数年一気にこのマンハッタンヘンジと呼ばれるシーンがニューズになるようになったのは、むろんインスタグラムの普及で、これを写真に撮ろうと多くの俄かカメラマンが群れを成してストリートに屯ろするようになったからだ。 

  

ある時、34丁目を渡ろうとして、信号が変わった途端、何百人もの人が一斉に路上に飛び出して西側を向いてスマートフォンをかざして写真を撮っているのに遭遇して驚いたことがある。火事かなんかかと思ってその方向を見ると、今まさにマンハッタンの高層ビルの合間を縫って、日が沈もうとしていた。 

  

番組はその群衆の中の一人に、主要登場人物の一人である宇宙飛行士のジェフ・ホフマンがいたという出だしで始まっていた。実は彼が宇宙から見た太陽は、このどれとも違っていたというもので、正直演出過多かなという印象を禁じ得ない。 とはいえさすがにヴィジュアルは美しく魅力的で、地球上にまだまだこんな前人未到的な自然が残っていたのかと感嘆する。どちらかというとフリンジ・サイエンス的だが、ま、アロノフスキーだし。  











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