放送局: ショウタイム

プレミア放送日: 8/6/2000 (Sun) 20:00-21:45

製作: CBSプロダクションズ、ワイルドライス・プロダクションズ、ショウタイム

製作総指揮: ジョエル・ライス

製作: ジョナサン・フレミング

監督: クリストファー・ミノール

脚本: シェリー・エヴァンス

撮影: マイケル・ストーリー

編集: ヘンク・ヴァンイーゲン

音楽: エリック・オールマン

美術: ジャック・マイケル・ブラデット

衣装: ジョジーナ・ヤーリ

出演: アン・ヘイシュ(メアリ・ジェイン・オマーリー)、サム・シェパード(ネルソン・グレイ大佐)、エリック・ストルツ(ウォーカー・ランドール)、ケイト・マクニール(レスリー・ネスビット)、ビル・マクドナルド(サム・ドラン)、ショーン・ベル(ティム・メイシー)


物語: ある夜、海軍女性士官オマーリーの自宅に何者かが侵入するが、逆にオマーリーによって射殺される。正当防衛が主張されるが、オマーリーが射殺したのが戦争英雄のグレイ大佐であったことから事件は別の様相を帯び始める。オマーリーが何か隠しているのではという憶測が乱れ飛び、しかも裁判が始まるとグレイとオマーリーが男女関係にあったこと等が明るみに出、痴話喧嘩のもつれからか、あるいはオマーリーが最初からグレイを殺す意志があったのではないかという点が検察側から追及される。オマーリーの弁護を担当するランドール大佐は、別れようとしたオマーリーをグレイが執拗に追い回していたことを知る。しかし戦争の英雄であるグレイをストーカーとして地におとしめたくない軍の同僚たちは、ことごとくオマーリーに不利な発言をし、オマーリーは窮地に立たされる‥‥


_______________________________________________________________


海軍内での痴情のもつれからの殺人事件という、実際に起こったスキャンダルを映像化。男ばかりの軍隊で不利な立場に立たされる女性士官、オマーリーに扮するのは、アン・ヘイシュ(私はこれまでヘッチと表記していたのだが、最近アメリカでもヘイシュという呼称が普通になってきたようなので、私もそうさせてもらう)、対する歳も離れた戦争英雄グレイにサム・シェパード、オマーリーの弁護を担当するランドールにエリック・シュトルツが扮している。監督は「第一容疑者」シリーズで評価されたクリストファー・ミノール。「第一容疑者」のヘレン・ミレンを用いて演出した「パッション・オフ・エイン・ランド (The Passion of Ayn Rand)」は、ミレンにエミー賞の主演女優賞を、共演のヘンリー・フォンダにゴールデン・グローブ賞の主演男優賞をもたらしている。


はっきり言って私は、最初この番組を見る気がしなかった。アメリカTV/映画界得意の裁判もので、もういい加減飽きてきたなあと思っていた上に、私はこの事件が結局どうなって、どういう決着がついたかを知っていたから、ほとんど食指が動かなかった。私のヒーローであるシェパードが出ていなかったら、この番組を見ることはなかったろう。それに久し振りにTVに出るヘイシュというのも興味あったし。


しかし、実際番組を見始めて驚いた。シェパード演じるグレイ大佐は、定年を間近に控えている戦争英雄なのだが、彼が完全に色恋に狂って腑抜けにされた人物として造型されている。ひえーっ、これがあの「ライト・スタッフ」のヒーローですか。夜中、親子ほども年の違う女の家に忍び込み、酔い潰れてしまうなんて。はっきり言って私はあんたのそういう姿は見たくなかった。脚本家も女性であることからして、たとえほとんどが事実を基に脚色しているとしても、完全に女性軍人ヘイシュを主人公としたフェミニズム作品であったようだ。そういえば、シェパードは昔、ジェシカ・ラングとの色恋沙汰で一時キャリアを誤ったことがあったな。そういう女難の傾向が本当にあるのかもしらん。この役を引き受けたのも、グレイがまるで他人に見えなかったのかも。


一方の主演のヘイシュは、現在着実にハリウッドに地位を築いているが、私にとって最もヘイシュが印象的だったのは、まだ無名時代にデミ・ムーア主演の「陪審員」で、あえなく殺されてしまった家政婦役である。あれは色気あった。それ以来、人気が上がっていく度に逆に私にとっては魅力がなくなっていった。ハリソン・フォードと共演した「シックス・デイズ・セブン・ナイツ」なんて、劇場で金出して見る気が全然しなかったから、TVに降りてきた時にちらっと見たのだが、きんきんとかまびすしいあの声に耐えられなくなって、途中でスウィッチを消してしまった。はっきり言って今は私にとってどうでもいい女優なのだが、ま、うまいことは認める。しかし、あの華奢な体型で花形海軍士官は、やはり無理がある。ユニフォーム姿が板についているシェパードに較べ、違和感は相当のものだ。


実は私がこの文章を書き始めた昨日、ヘイシュが恋人のエレン・デジェネレスと別れたとの電撃情報が耳に入ってきた。アメリカの芸能界で最も喧伝されたこのレズビアン・カップルの終結は、巷に結構波紋をもたらした。本人たちにとってもそうだったようで、二人がカップル解消を発表したその日、ヘイシュはカリフォルニアの田舎で、一人でふらふらとなっているところを保護され、救急車で病院に運ばれたと大々的に報道された。しかもその時ヘイシュは、私は神の使いであり、皆を宇宙船で天国へ連れていってあげるとかなんとか口走っていたらしい。アーメン。


結局私にとってこの番組を見ることは、シェパードが歳とったことを確認する作業になってしまった。寂しいなあ。実は2、3日前の深夜に、クラシック映画ばかりを編成するケーブル・チャンネルのTCMで、テレンス・マリックの「天国の日々」をやっていた。映像が絶品のこの映画は本当は劇場のスクリーン以外で見るのは邪道なのだが、これが何度目か、またついつい見てしまった。これに出てくるシェパードのあの渋さ。「ワン・キル」のシェパードだってそれなりのカリスマは出していたのだが、「天国の日々」の時の若き日のシェパード自身とは較ぶべくもない。この上はクリント・イーストウッドみたいにうまく歳とっていってくれることを祈る。


ところでこの番組、地上波ネットワークのCBSとペイTVのショウタイムの共同製作であり、ショウタイムで最初放送された後、しばらくしてCBSでも放送される。ショウタイムの親会社であるヴィアコムがCBSを買収すると発表したのはそれほど昔のことじゃないから、この番組製作が買収によるシナジー効果の現れだとは見えないのだが、本当のところはどうなんだろう。いずれにしてもこういう、チャンネルの枠を超えての番組の共同製作が今後増えることが予想される。


それはそれでいいんだが、頭ではわかっていてもなかなかしっくり来ないのが、これで老人ネットワークと常に陰口を叩かれているCBSと、アメリカで最も視聴者層の若い、ヴィアコム系列のMTVが姉妹チャンネルになったということである。この二つが同系列になるというのが、どうしても私の中でうまく治まらない。だって、この2チャンネルを見ている視聴者層というのは、まったく重ならないのだ。しかし、逆に言うと、だからこそこの買収には意味があったとも言える。これでヴィアコムはますますメディア・コングロマリットとしての地位を盤石なものにするわけだが、別にCBSを買収なんかしなくても、そのままで充分世界に通用する大会社だった。それでも上を見ると切りがないらしい。資本主義というものは果てしがない。



追記 (2003年1月):

たまたまこの作品が「恋と疑惑の果てに」という、ソープ・ファンというか、中年以上の女性ファン目当てのどうしようもなく情けない邦題になってNHKで放送されたことを知った。たとえ内容がどうであれ、「恋と‥‥」とか、「愛と‥‥」なんてタイトルがつくと、それだけで作品に対する興味を失ってしまう男性映画ファンもこの世には多いということを放送局や配給会社は知っていた方がいいんではないだろうか。私を含め、そういう映画ファンは、タイトルで失望して見ないということを表立って表明することはほとんどないため、それほど注目されるわけではないが、私は「恋と‥‥」という題に惹かれて見たいと思う女性と少なくとも同じくらいの数の男性が、「恋と‥‥」という題のためにこの作品を見ずに終わるだろうということを知っている。この邦題を聞いたサム・シェパードが苦笑いする顔が目に見えるようだ。






< previous                                    HOME

 

One Kill

恋と疑惑の果てに   ★★1/2

 
inserted by FC2 system