Once Upon a Time   ワンス・アポン・ア・タイム

放送局: ABC

プレミア放送日: 10/23/2011 (Sun) 20:00-21:00

製作: キトシス/ホロヴィッツ、ABCステュディオス

製作総指揮: エドワード・キトシス、アダム・ホロヴィッツ、スティーヴ・パールマン

出演: ジェニファー・モリソン (エマ・スワン)、ジニファー・グッドウィン (メアリ・マーガレット/スノウ・ホワイト (白雪姫))、ラナ・パリーラ (レジーナ/イヴル・クイーン)、ジャレッド・ギルモア (ヘンリー)、ジョシュ・ダラス (ジョン・ドー/プリンス・チャーミング)、ラファエル・スバージ (アーチー・ホッパー/ジミー・クリケット)、ロバート・カーライル (ミスター・ゴールド/ランプルスティルスキン)、ジェイミー・ドーナン (シェリフ・グレアム)


物語: 昔々あるところ。ファンタジーの世界でスノウ・ホワイトがプリンス・チャーミングとの間にできた子を出産しようとしていた。しかし生まれたばかりの女の子を狙って、魔法を使う王妃の軍勢がお城に攻め込んでくる‥‥

時は変わって現代。自分の今の生活に満足していないエマの元に幼い少年が姿を現す。ヘンリーと名乗るその少年は、実はエマがティーンエイジャーの頃、誤って身ごもっていしまい、養子に出したきりになっていた息子だった。ヘンリーは、エマが実は白雪姫の娘だという。捨てても置けず、ヘンリーを義母レジーナの元に届けるエマだったが、ヘンリーはレジーナに馴染もうとせず、エマが投宿したホテルは、なにかいわくがありそうだった‥‥


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Once Upon a Time


ワンス・アポン・ア・タイム   ★★★

いや、ヤバかった。さて、今回はどの番組について書こうかなと考えていて、ほとんどFXの「アメリカン・ホラー・ストーリー (American Horror Story)」で決まっていた。それをほとんどなんの気なしにググってみたら、いきなりずらりとヒットする。既に日本でも放送済みだった。


これまでにも日本でも放送済みの番組についても何度か書いているが、だいたいそれはアメリカでは最終回を迎えたりしてなんらかの節目を迎えた場合だったりする。日米同時放送開始だったら、なにもわざわざ私が手間暇かけて書くまでもない。他にも書きたい番組はいっぱいある。


しかし、いったい、これまでに完全にアメリカ資本のアメリカ製番組が、日米同時に放送を開始したということがあっただろうか。「アメリカン・ホラー・ストーリー」の場合、確かにそこそこ日本でも知名度のある俳優が出演しているが、だからといってディラン・マクダーモットやジェシカ・ラングが出ているから番組を見たいと考える視聴者は、それほど多くはないと思う。やはり日米同時放送を決心させた決め手は、ホラーというジャンルのせいか。昨年のAMCの「ザ・ウォーキング・デッド (The Walking Dead)」の成功も大きく与かって力になったに違いない。それにしても、ハリウッド大作映画だけでなく、TV番組も日米同時放送をする時代になったか。


というわけで「ワンス・アポン・ア・タイム」だ。実はやはり同時期に、こちらはNBCが同様のファンタジー系の「グリム (Grimm)」の放送を始めた。わざとシーズンの始まる9月ではなく、時期をずらして10月にグリム童話を下敷きとするファンタジーものを放送するというアイディアをABCとNBCの両方とも考えた理由は定かではないが、しかしぽつねんと目立ったおかげで、「グリム」も「ワンス・アポン・ア・タイム」もなかなか事前の注目度は高かった。


「グリム」は、(たぶん) グリム兄弟は、童話、ファンタジーとしてではなく、異形の者の侵略に対する警告として物語を書いたという設定で、かつて異形の者を見、牽制する力を持っていたが、今ではその力の使い方を忘れていたその子孫が、現代でまた異形の者たちと対峙するという話だ。面白い設定、悪くない出だしだったんだが、正直言って後が続かない。もうちょっと話を面白くできると思うんだが、単によくある普通のファンタジーものになってしまった。こういう話ならかつてのFOXの「ジ・X-ファイルズ (The X-Files)」がまだずっと面白かったし、今でも多少毛色は違うが「フリンジ (Fringe)」の方が上手だと思う。


一方、「ワンス・アポン・ア・タイム」は、これまた意表をつく設定で興味を惹いた。これまたグリム童話の「スノウ・ホワイト (白雪姫)」を下敷きにしており、実はこの話は異次元で起きた本当の話であり、その世界は現在と繋がっているという設定だ。めでたしめでたしで終わったはずのスノウ・ホワイト (白雪姫) とプリンス・チャーミング (王子) との間にめでたく女の子が授かるが、しかしイヴル・クイーン (悪い王妃) はその存在が自分の邪魔になるとして排除を画策する。


追っ手の刃を逃れてプリンスとスノウ・ホワイトが必死で隠した娘は、異次元の壁を乗り越え、実は現代社会で、妙齢の女性エマとして、自分の本当の素性を知らずに成長していた。唯一、その類い稀なる想像力 (妄想力?) で事実を把握していたのが、かつてエマが一時の過ちから産んだもののすぐに養子に出されたヘンリーで、彼は家出してエマの前に姿を現す。エマはヘンリーを養母の元に返すために、ヘンリーが今住む町を訪れるが、そこではなにか曰く説明しがたい出来事が待ち受けていた‥‥


今シーズンの特徴として、俳優が一人二役を演じる番組が目につくことをCWの「リンガー (Ringer)」の項でも書いたが、「ワンス・アポン・ア・タイム」もそうだ。主人公はスノウ・ホワイトというよりも娘のエマ、さらにその息子のヘンリーなのだが、スノウ・ホワイトを演じるジニファー・グッドウィン、プリンス・チャーミングのジョシュ・ダラス、王妃のラナ・パリーラのオリジナル・ストーリーの主要3人が、お伽話の世界と現代の両方の世界で二役を演じる。


グッドウィンは今春まで続いた一夫多妻を描くHBOの「ビッグ・ラヴ (Big Love)」で、ビル・パクストン演じる主人公の3番目の妻を演じていた。今回はスノウ・ホワイト -- 白雪姫だ。そのスノウ・ホワイトの現代の姿はメアリで、教師だがヴォランティアとして病院でも働いている。そこにはいつからそこにいるかしれない正体不明の男が昏睡状態のまま眠っており、実は彼こそがプリンス・チャーミングだった。


なるほど、グリム童話では眠りから目覚めないスノウ・ホワイトを目覚めさせたのはプリンスのキスだったが、どうやら現代ではそれは逆らしい。女性が男性を目覚めさせるのだ。また、イヴル・クイーンは現代では小さな町の女性町長であり、権力欲が強い。彼女こそがエマがかつて産んで養子に出したヘンリーの義母だった。


そして忘れてならないロバート・カーライルが、ランプルスティルスキン/ミスター・ゴールドとして彼もまた二役をこなしている。正直に言ってしまうと、このランプルスティルスキンというキャラクターは、私は全然記憶になかった。調べてみると、グリム童話の邦訳では主としてルンペルシュティルツヒェンという名で知られている小人のことで、妖怪というか、トリックスター的存在で、白雪姫と特に関係があるわけではない。


「シュレック・フォーエバー (Shrek Forever After)」ではランプルスティルスキンというキャラクター名で紹介されているため、たぶん今後はこの名前が定着するものと思われる。しかしカーライルがこういう役を演じるのは非常に頷ける。近年は特に「28週後 (28 Weeks Later)」を筆頭とする、作品をぶち壊す、というか、一人で掻き回すことを最大の得意とするカーライルがランプルスティルスキンか。絶妙のキャスティングと納得してしまう。


主人公のエマを演じるのがジェニファー・モリソンで、彼女が出てきた時、女房と顔を見合わせ、二人して彼女知ってるね、うん、知ってる、でもどこで見た顔か思い出せない、私も、と、二人して頭を悩ませていたのだが、結局思い出せなかった。FOXの「ハウス (House)」の女医役だったと思い出したのは、後で経歴を調べてからだ。「ハウス」の女医役ではオリジナル・キャストのモリソンではなく、後からレギュラーになったオリヴィア・ワイルドの方が印象に残る。しかし「ワンス・アポン・ア・タイム」では、しっかりとモリソンの顔が脳裏に焼き付けられているのだ。こちらの方が本人のキャラクターに合っているのだと思う。


エマの息子ヘンリーを演じているのは、昨シーズンのAMCの「マッド・メン (Mad Men)」で、ジョン・ハム演じる主人公ドン・ドレイパーの息子ボビーを演じたジャレッド・ギルモア。二役を演じているのはもう一人おり、実はラファエル・スパージが現代でアーチー・ホッパー、お伽噺世界でジミー・クリケットを演じている。というか現代はバッタ (ホッパー)、お伽噺のコオロギ (クリケット) という名前で、クリケットの方はほんとに虫のクリケットなのだ。これも一応二役と言えるか。


そうそう、今思い出したが、一人二役あるいはそれ以上といえば、HBOでクリス・ライリーが一人六役を演じるコメディ「アングリー・ボーイズ (Angry Boys)」という究極の一人数役ものが、年明けから始まる。ライリーは3年前にも「サマー・ハイツ・ハイ (Summer Heights High)」なる一人三役コメディに主演していたが、今回は一人六役だ。そのうち一人は東京に住む教育ママの役で、人種性別を超えて演じ分ける。すべて話が繋がっているわけではないから、一人数役を演じるといってもちょっと語弊がないわけではないが、一応これが複数キャラの演じ分けでは現時点では最大だろう。









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