放送局: フード・ネットワーク

プレミア放送日: 5/14/2002 (Tue) 22:00-22:30

製作: ア・フレッシュ・ワン・プロダクション、フード・ネットワーク、フリーマントルメディア・ノース・アメリカ

ホスト: ジェイミー・オリヴァー


内容: イギリスのセレブリティ・シェフ、ジェイミー・オリヴァーがホストを担当するクッキング・ショウ。


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フード・ネットワークは一日中「食」関係の番組をやっている専門ニッチ・チャンネルである。ニッチ・チャンネルには色々あるが、フード・ネットワークの場合、生活に密着していることもあってか、コアなファンが多い。私はファンというほどこのチャンネルを見ているわけではないが、それでもこのチャンネルの場合、一日中チャンネルを合わせっぱなしでもあまり気にならないこともあり、チャンネル・サーフしながらたまたまこのチャンネルに当たってしまうと、ついつい見てしまうことが多い。


料理番組というものはだいたいフォーマットが決まっている。ある決められた食材をどうやってうまい料理に仕上げるかということが番組の目的であるため、どの番組も構成が似たり寄ったりになってしまう。それでも料理番組って、ついつい見てしまう。どの番組でも使う食材はほとんど一緒なのに、シェフ/ホストによってまったく異なった料理ができ上がってくるのを見るのが面白いのだ。


その点でシェフというのは、同じ材料/用具を用いても、演出次第で異なったマジックをやっているように見せるマジシャンと似たようなものだという感じがする。あるいは、限りある金や時間、人材を使って、まったく異なる作品を作る映画監督とも似ているかもしれない。いずれにしても、単に料理のレシピを学ぶという実利的な面よりも、そういう、料理だろうが何だろうが、ある「もの」をゼロから作り上げていくのを見る楽しさこそが、料理番組の本当の面白さだという気がする。少なくとも私が料理番組を見る時は、そちらの方の重点が大きい。


さて、「オリヴァーズ・ツイスト」であるが、そうやってたまたまフード・ネットワークを見ていると、チャンネルが力を入れて番宣しているのがよくわかる。他の番組に較べて、目にする機会が圧倒的に多いのだ。フード・ネットワークがどんなにこの番組に期待しているかがわかる。実際、この番組のホスト兼担当シェフのジェイミー・オリヴァーは、今、最も有名な英国人シェフと言っていいだろう。少なくともアメリカにおいては、彼以外の英国人シェフの名前を挙げることのできる一般的アメリカ人は、多分ほとんどいないに違いない。かくいう私もその一人で、つまり、ジェイミー・オリヴァーは、英国人シェフというのはどういうものかという印象を一人で背負って立っていると言っても過言ではないくらいの、セレブリティ・シェフなのだ。


そのオリヴァーがホストを担当した料理番組「裸のシェフ (Naked Chef)」(BBC製作) は、2年前にアメリカでもフード・ネットワークが放送し、人気を博した。「裸のシェフ」は、飾りを取り払って、基本的なテクニックや食材を用いて、いかにおいしく、見映えがする料理を作るかに焦点を当てた番組で、オリヴァーの名前がアメリカにも浸透するのに貢献した。番組を放送したフード・ネットワークは、彼は商売になると判断、今度は製作にも携わって彼を起用した料理番組を企画した。それがこの「オリヴァーズ・ツイスト」だ。


「オリヴァーズ・ツイスト」はオリヴァーがロンドンの自宅にゲスト (たいていは友人だ) を呼んで、もてなしながら料理するというコンセプトの料理番組だ。オリヴァーが毎回、自宅に招くゲストを紹介し、何を作るかを決め、いつものようにスクーターに乗って買い出しをする様から、ゲストをキッチン・テーブルの前に座らせて、お喋りをしながら料理していく様をとらえる。2階のアパートという設定で、到来した客をインタフォンで確認して中に呼び入れる的な演出はしているけれども、スタジオ並みにライティングが施されたキッチンを見ると、いくらなんでもこれが本当にオリヴァーの自宅ということはないだろう。だいたい、ホーム・バーの上に「Bar」なんてネオン・サインを掲げているアパートになんか、私だったら絶対住みたくない。


私が見た回のオリヴァーの料理は、たまたまオリエンタル的な趣向の料理を集めた回で、オリヴァー、ゲスト共々、結構上手に箸を使って食事していた。現在ではイギリスのみならずアメリカでもそうだが、ジャパニーズ・レストランやチャイニーズ・レストランに行くと、給仕する方も迷わず割り箸を出してくる。それに対してナイフとフォークを要求する客は滅多にいない。既に欧米人でも箸くらい使えないと恥といった意識が定着しており、よほど田舎に住んでいるか偏った教育を受けている者でもない限り、若い人で箸を使えない者はまずいない。


この日オリヴァーが作った料理は、まず、春雨のサラダ。英語ではセロファン・ヌードル・サラダとなっていた。春雨に豚挽き肉やえび、ねぎ、にんにく、コリアンダー、ミント、生姜、オリーヴ・オイル、ピーナッツ、しょうゆ、ライム・ジュース等を絡ませるというもので、しょうゆをたらす時に、あの、日本人の目に馴染んだキッコーマンのしょうゆ差しがそのまま出てきて、それからたたーっとしょうゆをボウルの中に振り撒いていたのが、なんとなくおかしかった。料理は楽しく、手を抜けるところは抜くという主張通り、サラダをかき混ぜる時も、わざわざサラダ用のトングやサービス・フォーク/スプーンは使わず、箸を片手に一本ずつ持ち、それを春雨の中に突き刺してかき混ぜていた。


それは別にいいんだが、そのサラダをボウルごとゲストに出す時、 箸を二本深々とボウルに突き刺したまま出すのには絶句してしまった。おいおい、それじゃあ仏壇の供え物だぞ。日本人相手にそれやったら、客は一発で食欲なくしちまうぞ。いずれにしてもオリヴァーは結構日本通というか、日本の食文化に詳しいようで、番組で使用している包丁には日本の銘が入っているのが見てとれる。きっと日本に行った時に合羽橋に行って仕入れてきたんだろう。それによく日本語が書かれたTシャツを着ているのも目にする。


その次にオリヴァーが作ったのが、あんこうのバナナの葉包みで、市場に行ってバナナの葉を買い求めるオリヴァーに対し、こんなのをいったい何に使うんだという不審の目でオリヴァーを見る店員 (しかし置いてあるんなら四の五の言わずに売ってやれよ)。彼に向かって一生懸命、これで料理を包むんだ、グレイトなんだと説明するオリヴァー。しかし店員はあまり説得された様子には見えない。それもしょうがないという気がする。これまでに味わったことのない味というのは、想像するのが難しいのだ。この料理にもしょうゆを使っていたが、ポイントはコリアンダー (シアントロ) とココナツ・ミルクであるという感じがした。


ところでオリヴァーはこういう料理番組のホストにしては珍しく、エプロンをしない。私はジーンズ姿以外の彼を見たことがない。で、番組ではゲストを前にした大きなテーブルの上で作業を進めるのだが、食材を触っているのでもちろん手は汚れる。しかしテーブルの上にはシンクはなく、手は洗えない。そうすると、オリヴァーはそれがいかにも自然という感じで、ジーンズに手をなすりつけて拭いちゃったりするのだ。で、次の準備に進んでいくわけだが、私はなんとなくそれを見ながら、この男はもしかしたらトイレに立った後も手を洗わないタイプかもしれない、と思ったのであった。


さて、この日作った最後の料理、というか飲み物がマンゴー・ラッシー。実は私にとって、これが一番うまそうに見えた。春雨サラダは、まあ、だいたい味の想像がつくし、逆にあんこうのバナナの葉包みはあまり想像できない。マンゴー・ラッシーの場合はオリヴァーのオリジナルではなく、インドのほぼクラシックな飲み物であり、私も好きなので、インド・レストランに行くと必ずといっていいほど注文する。こういう料理番組を見て、味が明確に想像できる、あるいは知っている料理が一番うまそうに見えるというのは、想像力の貧困というものか。でも、マンゴー・ラッシー、うまいんだよ。


最後に気づいたことをもう一つ。オリヴァーは番組のホストであることもあり、黙って料理していたら番組がつまらなくなるし、説明の要があることもあり、のべつ幕なしに喋りながら料理する。その彼の十八番の形容詞が「ビューティフル」と「ラヴリー」で、あんこうだろうがなんだろうが、彼にとってはビューティフルなのだ。春雨つるつるもラヴリーなのだ。ビューティフルはまだいいが、ラヴリーは、なんとなく料理に使う形容詞ではないような気もするのだが、オリヴァーがのべつ幕なしに「ラヴリー」とか言いながら料理しているのをずっと見ていると、なんとはなしにもしかしたら「ラヴリー」かもしれないと思えてくる。


ラッシーなんて確かに「ラヴリー」と言えなくもない。あんこうが「ラヴリー」かは意見の分かれるところだろうと思うが、ま、たとえ作っている本人の自画自賛に過ぎなくても、やっぱりどうせなら「ラヴリー」な料理を食ってみたいよな、と見てる方がつい思ってしまうところが、この番組が成功している証拠のような気がする。少なくとも料理よりオリヴァーの俯いた顔ばかり映していて、こんなの、料理番組としては役に立たんといらいらさせられた「裸のシェフ」よりは、「オリヴァーズ・ツイスト」の方を私は断然推す。







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Oliver's Twist

ジェイミーのラブリー・ダイニング (オリヴァーズ・ツイスト)   ★★★

 
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