Now You See Me 2


グランド・イリュージョン 見破られたトリック  (2016年7月)

コン・ゲーム・ドラマの「グランド・イリュージョン (Now You See Me)」は、きびきびとしたテンポよい演出で結構楽しませてくれた。これ一作で完結しているという印象が強かったため、続編が作られるとは思ってなかった。そこに登場したのが、この「見破られたトリック」だ。


「オーシャンズ・イレブン (Ocean’s Eleven)」、「トウェルヴ (Twelve)」、みたいに例外的によくできた続編というのもないではないが、それだって「サーティーン (Thirteen)」はちと弱かったかなという気はしないでもなかった。実際問題として、こういう、特にコン・ゲームものは前作を上回るアイディアを出さないと観客が納得しないだろうから、単純にアクションものをシリーズ化するよりもっと難しいと思う。


「グランド・イリュージョン」を見てれば自明、というか「グランド・イリュージョン」を見ていることが前提なのでばらしてしまうが、本当の主人公で皆を筋書き通りに操ったのは、一見冴えない振り回され刑事のディランだった。「アベンジャー (The Avengers」シリーズで超人ハルクを演じているマーク・ラファロが、「バットマン」シリーズでバットマンを支えたモーガン・フリーマンとマイケル・ケインを相手取って戦いを挑み、手玉にとる。一方のフリーマンとケイン、特にフリーマンはITを含め科学技術には精通しているはずで、彼を出し抜くのは簡単ではなかろう。珍しくも野蛮な力が優れた頭脳を圧倒したという滅多にない例が、「グランド・イリュージョン」であり、だからこそその意外性に私たちは快哉を送った。


これに対しケインは汚名を挽回すべく今回梃入れを図るが、連れてきたのがなんと、ハリー・ポッターを演じたダニエル・ラドクリフだ。あっちの世界の稀代の魔術師まで迎え入れて、リヴェンジを図る。かなり執念深い性格だったようだ。確かにラドクリフはマジックを使って人を煙に巻きそうだ。


そのため今回は、ハルク vs バットマン vs ハリー・ポッターという超豪華の配役陣となった。単純に見ると、力ではハルク、技ではバットマンが優勢、しかし裏技ありのハリー・ポッターも当然侮れない。しかも今回はバットマンを支えた一人がハリーと実は血縁関係にあった。やはり最後においしいところを持っていくのはケイン/ラドクリフのペアかという気は大いにする。


と展開を大いに期待させるのだが、作品がガラ映画として華々しく機能したかというと必ずしもそうとも見えないところが、今回のちょっと弱いところと思える。


例えばフォー・ホースメンの面々が目が覚めたら意外そこは中国のマカオだったという展開は、見ながらたぶんこれはxxの中にxxが仕込まれてあったんだろうと思ってたら案の定その通りだった。前回のつかみマジックが、カモが目を開けると意外そこはフランスの銀行の金庫の中だったというトリックに較べると、いかにも小粒ですぐネタが割れる。


そして極めつけがクライマックスで、これもたぶんこれこれこういった仕掛けがあるっぽいなあと思いながら見ていたらやはりその通りで、仮りにもハリー・ポッターがこんな底の割れたトリックに引っかかるかと、憤りすら覚える。しかもその一部始終が中継されていたという展開は強引過ぎて説得力がなく、なんだかなあという印象を禁じ得ない。


思うに、ハリー・ポッターのマジックはあっちの世界のものであって、こちらの世界ではうまく機能しなかったのだろうと思う。あるいは、成長して男の子から男になってしまったハリーには、もうマジックを使う力は残っていなかったのかもしれない。


他方、表の主人公のジェシ・アイゼンバーグも今回ほとんど活躍しなかったように見えるのは、彼の役名のダニエルという名を持つ本当のダニエルがいたことも大きいんじゃないか。結果として「見破られたトリック」は、ただただ大掛かりな外見のガラ映画という作品になってしまった。それはそれで悪くはないと思うが、だったら、もっとこうけれんを出すとかなんとかできなかったかなと思ってしまうのだ。


ラドクリフは、「見破られたトリック」公開とほぼ同時期に、死体となって活躍する「スイス・アーミー・マン (Swiss Army Man)」も公開された。正直言って私は「見破られたトリック」よりも「スイス・アーミー・マン」の方に惹かれていたのだが、より拡大公開で時間調整のしやすい「見破られたトリック」につい足を運んでしまった。「スイス・アーミー・マン」を見て帰りに買い物するには、最初の回の上映を見るしかなく、実はそれに間に合わせるには寝坊してしまったのだ。











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ディラン (マーク・ラファロ) は、一世一代の博打を成功させてからも、一見うだつの上がらない刑事という外見を維持しながら警察で働いていた。そしてついにフォー・ホースメンに次の指令が下る。それはケイス (ベン・ラム) が経営するIT企業の発表会をジャックするというものだったが、逆に彼らの行動は先を読まれており、ディランの真の姿まで暴露されてしまう。フォー・ホースメンはマカオまで連れて行かれ、そこで元チェイスのパートナーのウォルター (ダニエル・ラドクリフ) と会う。ウォルターはチェイスが非常に危険なチップを開発していることを告げ、フォー・ホースメンにそのチップを盗めるか打診する‥‥


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