Narc

ナーク  (2003年1月)

犯罪ものの映画は、流行に関係なく必ず定期的に製作され、上映される。犯罪とは非常に人間的なものであり、ドラマにもなりやすく、しかもアクションとしても売れるから、これは当然と言える。一昨年の「メメント」、昨年の「ナイン・クイーンズ」のように、わりと金をかけないインディ系や外国の作品が口コミでサプライズ・ヒットする確率が最も高いのも、この種の犯罪ドラマである。


その中でも、罪を取り締まる側にいる警官や刑事の腐敗を描く、いわゆるグッド・コップ/バッド・コップものは、ほとんど定番とも言えるジャンルを形成している。最近ではこのジャンルは、TVでやたらと編成されている刑事ドラマにお株をとられた感があるが、しかしそれでも一昨年は「トレーニング・デイ」があったし、この「ナーク」のように忘れた頃にやって来て、やはり口コミで噂が広がったりする作品もある。


ニック・テリス刑事 (ジェイソン・パトリック) はドラッグ・ディーラーを追跡中に小さな女の子を巻き添えで射殺してしまう。18か月後、謹慎がとけて復職したニックは、刑事が殺された事件の調査を命じられる。ニックは死んだ刑事のパートナーだったヘンリー・オーク刑事 (レイ・リオッタ) と組まされるが、オークは激しやすい性質があり、何を考えているかわからないところがあった。ニックは事件に関してオークの言動に疑惑を感じるようになる。二人はじわじわと犯人へと捜査網を狭めていくが、同時にニックのオークに対する疑惑も増していくのだった‥‥


私はこの種の作品には目がない口で、わりと定期的にこういう作品を見たいと思っている。今回特に話題になっていたのが、主演の一人、レイ・リオッタで、「ハンニバル」で俳優生命を捨てたかと思えるような役に挑戦して、その後の「ジョンQ」でもタイプキャストでどうでもいいような役をやっていたリオッタが、ここでは自ら製作も担当している。もう一方のジェイソン・パトリックも「スピード2」以来鳴かず飛ばずだったが、そのキャリアの狭間に落ち込んだ二人の中堅俳優が起死回生を図り、しかも結構誉められている。


実際、多分二人共この辺で一発勝負に出ないとやばいと本気で思っていたのではないだろうか、「ナーク」では二人共これまでの印象とは大きく異なるものとなっている。リオッタはわりといつでもにたにたしているような印象があるし、パトリックも「スピード2」では真面目でないというか、余裕で演技していたような感じがあった。ところがここでは二人共ぎりぎりのところでせっぱつまったような印象を与えるものとなっており、そうそう、こういうインディ系の刑事ものでは、こういう身体を張ったロウ・キーな演技こそ相応しいと思ってしまう。


演出はこれが長編2作目となるジョー・カーナハンで、アクションと、特にすべての謎が明らかにされるクライマックス辺りの演出は、ぐいぐい引き込んで離さない。とはいえ気になる点がないかといえばそんなこともない。二人を別にすれば、特に最初の方でわりとしっかりと描かれていたニックの妻オードリー (クリスタ・ブリッジス) が、後半すっぱりと忘れ去られたのは、それはないでしょうと思ってしまった。あれだけ夫婦の関係を描き込んでおいて、ニックが家庭でも落ち着く場所がないことを示した途端、もう用無しか。オードリー可哀想。あと、冒頭のやり過ぎの手持ち撮影のジャンプ・カットと、途中で入るスプリット・スクリーンの効果はいかほどなものかと思う。特にスプリット・スクリーンの方は、FOXの「24」の影響だろうが、まったくうるさいだけで、もう一度あれをやるなら立って出ようかと本気で思った。


最近のこの種のドラマでは、ドラッグ・ディーラーをラップ・アーティストがやるのはほとんど定番になっている。「トレーニング・デイ」のスヌープ・ドッグ、「チョコレート (monster's Ball)」のパフ・ダディらに次いで、今回それをやるのはバスタ・ライムズ。どうして黒人ラッパーってドラッグ・ディーラー役がしっくりくるんだろう。これが白人ラッパーなら、「8マイル」のエミネムのように青春ドラマの主役になるんだろうけど。







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